2013年01月14日

「Dignity」についての序章

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いくつかのとても好きな古い映画があります。1952年に公開された「Singing in the Rain(雨に唄えば)」もそうです。

嬉しいことに、昨秋、全日空国際線の機内上映プログラムにも入っていて、行ったり来たりするたびにいつも楽しむことができました。

最初のシーンはハリウッドのチャイニーズシアターです。クラシックな車から降りてレッドカーペットを歩くスターたちを見るために、大勢の人たちが待ち構え、インタビュアーたちが機会を狙います。

「ベーコンエッグと同じで、世界中で人気があっても当然」という大スター、ダンとリナが登場するや、ギャラリーは総立ちで拍手を送ります。一歩でも近づこうと押し合いになり、実物を見て興奮のあまり失神する女性もでます。

インタビュアーがマイクを向けてたずねます。

「若い人たちへの刺激になるような成功物語を聞かせてください。」

ジーン・ケリー扮するダンが艶やかな笑顔で答えます。

「今でも僕はモットーを守っているんです。
 Dignity, always dignity!
自分を決しておとしめないこと。」

印象的な場面です。

「Dignity」という言葉は、「Discipline」と並んで、私が大切にしている言葉です。けれどもそれを適切な日本語の単語に置き換えることはむずかしいのです。辞書に見られるような「尊厳」や「気品」では、そのニュアンスを完全には伝えきれないように思います。「Dignity」とは、ある種の毅然とした心の持ち方ではないかと思うのです。

そんなことも書き残しておきたいことのひとつです。
あまり長くなってもいけませんので、今日はイントロだけにして、続きは明日にいたします。咄嗟に口をついて出た我が言葉、友の言葉、そしてホイットニー・ヒューストンの歌などから、「Dignity」について考えてみるつもりです。

天気予報通りに雪になって、午前中に降り出した大きな花びらのような雪が、ふわふわと地面を覆い始め、お昼前にはもう白い世界となりました。予定もすべて中止になって、雪だけがしんしんと降り続きました。
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By 池澤ショーエンバウム直美


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1月14日(月):おまけについてきた二人分ミニおせち
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 22:30| Comment(0) | その他メッセージ

2013年01月13日

Short Short Spain 19

プラド美術館に続く道
出逢ったマグパイ(magpie)
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By 池澤ショーエンバウム直美
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:05| Comment(0) | スペインライフ

二つの言葉 二つの文化

まず最初に、
これはスペインの国旗です。
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そしてこちらはカタルーニャ州の州旗です。
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時は昨年11月も末、所はスペイン、バレンシア。
私たちが満員の客席の中で待っていたのは、シルヴィア・ペレス・クルスという若い女性歌手のコンサートの開幕でした。その時、流れてきた館内放送の響きを今でもよく覚えています。それは意味がわからないだけに、優しい波に乗っているような、ふわふわした心地よさで包んでくれるものでした。

そこでこんな経験をしました。

セニョラス セニョレス

という「Ladies & Gentlemen」に当たる呼びかけに続くメッセージが終わって、一息入れたかと思うや、、、、

セニョレス セニョース

同じようでいてどこかが違います。その後に続く諸々の注意事項らしきものも、最初に聞いたものとはどことなく違う気がします。

これがカタルーニャ語というものでした。国としての公用語は「標準スペイン語」と呼ばれるものですが、スペインには、カタルーニャ語、ガリシア語、バスク語という公用語があります。カタルーニャ州の南に隣接するバレンシア州でも、二つの言葉が併用されているのでしょう。

スペイン第二の都市バルセロナを都とするカタルーニャ州は、独自の文化や歴史、言語を背景に発展してきました。それゆえに愛国心ならぬ愛州心というものも中途半端ではないようで、いくたびかスペインからの分離、独立の動きが持ち上がってきたことも知りました。町を歩けばそこここで、スペインの国旗ではなく、カタルーニャの州旗を掲げているバルコニーを見ます。
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折しも、州議会選挙が行われた11月25日に私たちはバルセロナにいたのですが、駅の構内には「独立」を目ざしての大きなポスターがたくさん貼られていました。口や目に絆創膏が貼られているのは、反対派による悪戯でしょうか。
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選挙の結果は独立派の勝利となりましたが、住民投票の実施については微妙なところのようです。

さてさて、先日、「Fifty Shades of Grey」というメガヒット小説のスペイン語版のことを書きましたが、写真を見ていたら、今まで見過ごしていたあることに気づきました。

まずこちらは、マドリッドの本屋さんです。
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次にこちらは、バルセロナの本屋さんです。
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表紙の体裁は同じ、書かれているアルファベットもよく似ていますが、どこか違うと思いません?

マドリッドの本屋さんに並んでいたのはスペイン語訳で
バルセロナの本屋さんに並んだいたのはカタルーニャ語訳でした。
同じスペイン、新幹線なら2時間45分で着いてしまう距離です。

By 池澤ショーエンバウム直美


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1月12日(土):ムサカの相方は全部適当なトルコサラダ
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 12:55| Comment(2) | スペインライフ

2013年01月12日

Short Short Spain 18

ローマ時代の壁を相手にひとりで一杯
何ていう贅沢!
(バルセロナ)
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By 池澤ショーエンバウム直美
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:08| Comment(0) | スペインライフ

2013年01月10日

自分のための時間に入る

ついこの間新年を迎えたばかりと思っていたら、あらあらもう10日もたってしまったなんて、、、、これまででしたら、いったい私、何をしていたのかしら、あれもできてない、これもできてない、とばかりに小さな焦りを感じたり、怠けてた?などと自問自答をしながら反省をしたりするのが常でしたけれど、なんだか何かが変わったような気がします。大切なことの優先順位が変わってきたのかもしれません。

考えようによれば、何かができなかった分、ちゃんとほかの何かができていたわけですし、その「ほかの何か」の方がだんだん心地よくなってきたのなら、それを素直に楽しむべきでしょう。

2013年という年は、私にとってひとつの区切りの年になるような気がします。
占いにはあまり頼りませんけれど、ただひとつ、この人の、悪いことをも良きことへと結びつけるみごとな表現力に惹かれて、ついつい見てしまうものがあります。それが、石井ゆかりさんの星占いサイトなのですが、そこに書かれた「2013年うお座の空模様」の冒頭にこんなことが書かれていました。

「誰かのために、あるいはみんなが集まる『場』のために、精力的に活動を続けた後で、こんどは自分のための時間に入る。」

「自分のための時間に入る」、、、それは何も自分ひとりで過ごす時間ということではなく、その時々の自分の価値観、優先順位にきちんと気づいて、それに正直に従うということなのだろうと思います。たいせつな人たちと一緒に過ごすこととか、本当にやりたいことをすることなども含まれるでしょう。今はまだ恥ずかしくて言えませんが、そんな「自分のための時間」のために、2つの大きな決断をしました。

年末の29日にいただいた百合が、ひとつ、またひとつと大きな花弁を広げる影で、まだ7つも蕾が残っているのを見つけました。毎朝ジョウロで水をあげていますが、驚くほどたくさん注ぎ足さねばなりません。
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一昨日、諏訪から「未来へのあこがれ」という花言葉を持つアルストロメリアがたくさん届きました。こちらも花瓶の中の水が一日でずいぶん少なくなります。
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暮れに夫が植えた2本の椿の苗の1本が、この寒さの中で、今朝ピンクの花を咲かせました。
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人も花も、
みんな一緒に呼吸をして、
みんな一緒に生きています。
そんなことを感じるのもまた、「自分のための時間」なのかもしれません。

        
By 池澤ショーエンバウム直美


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1月10日(木):黄身ひとつでこうも違う?@スパナコピタ
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 16:40| Comment(0) | 日記

2013年01月08日

日本でも社会現象になる?〜フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ

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一昨日、日曜日の朝日新聞の読書ページで目にしたのはこんな記事。

売れてる本   
■フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ
 E. L. ジェイムズ<著>
マミーポルノに日本の壁


昨年春にアメリカで大ブレイクを起こしたこの本については、9月にこのブログでも書かせていただきました。(http://blog.platies.co.jp/article/58467341.html

「4千万部を超えるメガヒットだとか、ハリー・ポッターシリーズ全7冊の売上額を抜いたとか、映画化が着々進行中とか、この本は発売後もう何か月もたつというのに、まだまだホットな話題の渦中にあります。」

「遅かれ早かれ日本語訳も出ることでしょう。その時にはいったいどんな名前になるのか楽しみです。」

などと言っていたら、11月2日には早川書房から翻訳が出版されて、1月6日には新聞で「売れてる本」として紹介されることになりました。しかも、書名はそのまま「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」です。「売れてる本」ではありながら、精神科医の斎藤環さんは、

「果たして本作は、日本でも社会現象となるだろうか。結論から言えば、それは考えにくい。」

として、その理由を、主婦層に圧倒的な人気を呼んで社会現象とまでなった英米と比べて、この手の分野における女性向け市場が日本では「はるかに成熟し、充実している」からだとしています。

さてさて今後どのような展開を見せるものやら、、、

ちなみに「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」は、「フィフティ・シェイズ・ダーク」と「フィフティ・シェイズ・フリード」に続く「THE FIFTY SHADES TRILOGY」という三部作の第一作目です。

ところで、先日のスペインでも、あちこちでこの本に出会いました。
たとえば、これは新幹線が発着するマドリッドの駅構内の本屋さん。
題名は、そのままずばりのスペイン語、「Cincuenta Sombras de Grey」です。
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バルセロナに着いて、目抜き通りの本屋さんに入ったら、ここでもまた華々しく陳列されていました。
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「昨年来、英語圏で『ハリー・ポッター』や『ダ・ヴィンチ・コード』をしのぐ勢いで売れている”マミーポルノ“」(朝日新聞)は、翻訳というプロセスを経て、いまや軽々と英語圏を飛び越えてしまったようです。

そうそう、このバルセロナの本屋さんの入り口を入って左、いやがおうにも目につく場所にこんな本がありました。質感と言い、色合いといい、まるで一時代前の雑誌の写真のような半裸の日本女性が大きく表紙を飾ります。書名は「CINE EROTICO A LA JAPONESA〜日本のエロチックな映画」。
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パラパラとページをめくってみれば、まさにこの日本語通りの写真が満載です。とは言え、面白半分の書物ではなく、どうやらきちんとした真面目な研究書のようなのです。「Cincuenta Sombras de Grey」になった「Fifty Shades of Grey」との出会いは十分に予想していたことでしたが、まさかバルセロナで「A LA JAPONESA」(日本女性)に出会うとは、、、、、、
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By 池澤ショーエンバウム直美

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1月7日(月):まるで友のようなパウンドケーキ

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 22:26| Comment(0) | 本、映画、コンサートなど

2013年01月06日

私の役割 その1〜共に年を重ねる中で

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昨年はそれぞれに思いもかけないアクシデントがあって、語っていた近未来のさまざまなことを一度はあきらめました。けれども、それは意外なことに、思っていたほどに辛いことではなく、そういうものだと一旦覚悟をつけてさえしまえば、担うべき役割として受け入れることができました。いくら不運を嘆いたところで、怪我をする前の自分に戻ることはできませんし、病気になる前の自分に戻ることもできないのですから。

東京の病院で、そしてワシントンの病院で、検査から検査への移動に夫の座った車椅子を押しながら、私は何年も前のあることを思い出していました。

出会ってしまって、年甲斐もなく恋などしてしまって、自分が進むべき道を迷い悩んでいた時のことです。アメリカ人のご主人と何十年もの結婚生活を営んできた同い年の友人に正直に迷いを打ち明けました。その裏には、「大丈夫よ」とばかりに肩をポンと押してくれるだろうという期待があったのかもしれません。

ところが彼女が間髪を入れずにこう言ったのです。

「あなた、年を考えなさいよ。結婚をするということは幸せばかりではない。どちらかが明日病気になって介護が必要になるかもしれないリスクも併せ持っているのよ。あなたできるの?車椅子を押したり、おしめを交換したり。」

予想を裏切るシビアな意見でしたけれど、自分でも驚くぐらいに咄嗟に口をついて出たのがこんな言葉でした。

「わたし、他の誰かにそれをやらせたくない。私が車椅子を押して、私がおしめを交換したい。」

すると、彼女が静かに微笑んで言いました。もしかしたら大学の先生の彼女は、私に試験を与えていたのかもしれません。

「じゃ、さっさと結婚することね。」

あの時思わず口から出た思いは、今でもちっとも変わりません。むしろ共に過ごす日々を重ねれば重ねるほど、それが誇りと共に担うべき「私の役割」だと感じるようになりました。

幸い大事には至らず、残りの2012年の計画を予定通りに進めることができたことをありがたく思いながら、2013年初めての朝にさりげなく夫にたずねてみました。

「私の車椅子を押してくれる?」
「Why not! I will take you wherever you want to go.」

今朝、数えてみたら百合が20輪も開いていました。
漂う香りの中で、まだ11も蕾が残っています。

By 池澤ショーエンバウム直美


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1月5日(土):ふうふう わいわい がやがやの新年お鍋

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 12:55| Comment(0) | パートナーシップ

2013年01月04日

三が日も明けて

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三が日も明けて、お仕事に戻るという方もいらっしゃることでしょう。
電車も今日からは平日ダイアですね。

まだまだスペインについての書き残しがたくさんありましたし
もし明日から書くことができなくなったとしたら
今のうちにやはりこれだけは書いておきたい
という年末の思いもたくさんありましたけれど
勢い、あわただしくなって果たせませんでした。

三が日は家族一緒に過ごす時間がいとおしくて
PCはなるべくさわらないようにしました。
年初の思いもたくさんありましたけれど
これもまた、そんな思いのひとつに繋がる方向でした。

そんな
書けなかったたくさんの思いを
少しずつ書き残していきたいと思っています。

たとえば
私の羅針盤について
私の役割について
覚悟について
ディグニティーとディシプリンという2つの言葉について
そして2013年の歩き方について。

今ここで思うのは
2012年という年は、決して最悪ではなかったことへの感謝です。

骨折した時には
まさか字を書いたり、料理をしたりという
私の日常生活の中での喜びが
遠い夢、もしかしたらもう叶わぬ夢にすら思えましたけれど
今ではまだ多少の支障はあるものの
ほとんどのことができるようになりました。
ずっしりと重くなった孫息子を抱き上げることだってできます。

夫の急病の時には
すでに計画されていたほとんど全てをあきらめる覚悟まで
ふたりでしましたけれど
そのおおかたは中止もせずに実現することができました。

たいせつな人たちに舞いかかったトラブルに
たいそう心を痛めはしましたけれど
幸いそのどれもが大事にはいたらずに
ここまで一緒に歩いてくることができました。

最悪!
とでも呟こうものなら
本当に最悪になるかもしれません。

でも、
最悪ではない!
と感謝をするならば
最悪ではなくなるかもしれません。

ところで年末の29日、
とんだアクシデントがありました。
携帯電話をポケットに入れたままエプロンを洗濯してしまったのです。
おかしな音に気付いてすぐに取り出しましたが
全く使えなくなっていました。
急いで地元のソフトバンクまで走りながら
「最悪ではない!」と
最悪ではない理由をたくさん考えて感謝をしました。
結局、昨年7月のデータまでは残っていました。
最悪ではありませんでした。

同じ29日の朝に届いた百合が
6日間の間にひとつ、またひとつと、11も蕾を開きました。
明るい光に溢れた三が日でした。
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By 池澤ショーエンバウム直美

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1月3日(木):今年も賑やかに変形おせちで
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 07:59| Comment(0) | その他メッセージ

2013年01月01日

あけましておめでとうございます。

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あけまして
おめでとうございます。

2013年の夜明けが
皆様のもとに
たくさんの希望の光を
届けてくれますように。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

By 池澤ショーエンバウム直美
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 10:35| Comment(2) | その他メッセージ

2012年12月30日

Short Short Spain 17

カタルーニャ州タラゴナ
古代ローマ時代の壁画
今にも飛び出しそう、現代に。
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By 池澤ショーエンバウム直美
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 22:50| Comment(2) | スペインライフ

2012年12月28日

トンコちゃんへのラブレター

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としこさんは、トコちゃんとも、トンコちゃんとも呼ばれています。私が大学時代にひょんなことから出会って以来の、たいせつなたいせつな友人です。大学生の私にはある夢があって、すでに社会人だったとんこちゃんにはある目標があって、たまたま同じ専門学校の第一期生となりました。姉御肌のとんこちゃんは、いつでも私の頼りがいあるお姉さんでした。

なぜか一目会った時から意気投合して、私たちは随分一緒にいろいろな時を過ごすようになりました。そのうち私がギリシャに暮らすようになり、トンコちゃんがスペインに暮らすようになりました。

今回のスペインで、何年ぶりかで再会できたことは本当に嬉しいことでした。トンコちゃんは私たちが夜遅くマドリッドに着いた翌日にはもうホテルまで来てくれて、以来、できる限りの時間を一緒に過ごしました。隅々まできちんと整理されたトンコちゃんのお宅にもお邪魔しました。「何を持っていったらいい?」とたずねたら、「お漬物とお煎餅!」と言うので、馬鹿正直にも私はこれでもかとばかりに、たくさんの種類を鞄にギュウギュウ詰めて飛行機に乗りました。

私たちはマドリッドで一緒にジャズライブにも行きましたし、食事もたくさんしました。夫とトンコちゃんはスペイン語で話しながらすっかり仲良くなりました。

ある時、まるで娘を心配する母のような気持ちでトンコちゃんの暮らしぶりを聞きました。

「9時半に起きるでしょう? 白いアスパラのピューレとオレンジかミカンを食べて紅茶を飲むの。3種類のイギリスの紅茶のブレンドよ。コレステロールにいいというから、クルミを割って3〜4個食べるの。そしてね、トースターで5種類のパンのうちの1つを焼くのよ。焼けたら半分はオリーブオイル、あとの半分はジャムかマーマレードか蜂蜜で食べるの。」

という朝ごはんの様子に始まるその後の一日は、本人いわく「平凡でしょう?」でしたけれど、とんでもない、「ああ、なんて素敵な生活なんだろう。なんて幸せなんだろう。」と思わせて、私を心底安心させてくれたのです。

私たちがグラナダから車でマドリッドまで移った最後の夜も、トンコちゃんはバスとタクシーを乗り継いで空港のホテルまで来てくれました。どんなにたくさん話しても話し足りなくて、後ろ髪を引かれながら「じゃあまたね。」と別れてトンコちゃんがタクシーに乗るのを見届けた後で、「日本には帰るつもりのないトンコちゃんと次はいつどこで会えるのだろうか。」と思って私はしばらく泣きました。

トンコちゃんはあの時代とちっとも変わっていませんでした。人の悪口など昔も今もただの一度も口にしたことがありません。なぜならば自分の暮らし、自分の生き方にきちんと満足しているからです。

トンコちゃんが40年以上も前に言った言葉を今でも覚えています。

「私、素敵なおばあさんになりたいの。」

そして、トンコちゃんも、私が言った言葉を今でも覚えていてくれました。本人の私が全く忘れていたというのに、その言葉が彼女をスペインへと向かわせるきっかけになったというのです。

「心配しないで大丈夫。人が住んでいる所ならば誰でも住めるに決まってる。」

アルハンブラで特別なペンダントを7つ買いました。赤を2つ、黒を3つ、青を2つです。
大切な人たちにさしあげたかったからでした。それはそれは美しい14世紀の美術品のコピーです。それを最初に贈ったのは、マドリッドのエアポートホテルに来てくれたトンコちゃんでした。トンコちゃんはすぐに胸元に黒いペンダントをつけてくれました。とてもよく似合いました。

昨日、6個目のペンダントが手元から離れていって、今日、私は、最後にひとつ残った青いペンダントを身に付けました。トンコちゃんとおそろいです。

By 池澤ショーエンバウム直美


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12月28日(金):お正月にも合いそうなアップルポークロール
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 20:34| Comment(2) | 友人

2012年12月27日

また来たいと思います!

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どちらかと言えば、父と母は私たち姉妹を随分といろいろな所へ連れて行ってくれ方だと思います。遊園地にも、水族館にも、できてすぐの東京タワーにも、海水浴にも、温泉にも。母はきびきびとした器用な人でしたし、父はおっとりとした優しい人でした。「家族旅行」はいつだってわくわくと心躍るものでした。

高校時代には、仲良し8人組で旅行のまねごとなどもしましたし、大学に入ってからは今だに親交が続く友人たちと大きなリュックを背負ってユースホステルの旅などもしましたけれど、本当の意味で旅を始めたのは18の終わりの頃でした。

まだ大した恋などしたこともないくせに、「人に恋をするように土地に恋をする」ことを知ってしまったのです。それからはもう熱病にかかったかのようにひとつの地を思い、そこに「行く」のではなく、「帰る日」をひたすら夢見ていました。

その後、思いは形になり、ひとりが二人になり、二人がいつの間にやら四人になって、気づいて見れば私の恋は「家族旅行」という形になっていました。去る時には必ずこう言って、むせかえるような熱帯の花の香りの中で涙ぐみました。

「また来ますからね。」

所が変われど、ついこの間までは、何の抵抗もなく口にしていたこの言葉。
けれども、ふと気づいてみたら、最近はなんだかためらいがあるのです。

スペイン最後の滞在地グラナダを発つ前に、生後2週間のベビーから80近くのおばあちゃままで、2家族11人が私たちのホテルまで別れを惜しみにきてくれました。たがいを思いやる暖かさの中で心地よい時間が過ぎていった後で、誰かが言いました。

「また来てくださいね。」
「次はもっとゆっくりしてくださいね。」
「子供たちの成長も見てくださいね。」

これまでだったら、なんのためらいもなく

「ええ、また来ますからね。」

と言えたのに、口をついて出たのはこんな言葉でした。

「ええ、また来たいと思います。」

長い人生の旅の中での、ある意味正直な
ある意味そこはかとない寂しさです。

By 池澤ショーエンバウム直美

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12月27日(木):リンゴとトマトとセロリ〜ふうっと笑顔の不思議なスープ
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 22:02| Comment(0) | エイジング

Short Short Spain 16

ガウディが半生を費やしたサグラダ・ファミリア聖堂
2026年完成を目指して現在もなお継続中
中に入るためには根気が必要
上を眺めるだけなら根気は不要   (バルセロナにて)
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By 池澤ショーエンバウム直美
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 13:50| Comment(0) | スペインライフ

2012年12月26日

もしも一年中がクリスマスだったら

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(グラナダのクリスマス、アルハンブラの庭)

昨日のクリスマスの朝、最初の電話が鳴りました。

「グランマぁ、サンタさんがきたんだよ!
 自転車持ってきてくれたんだよ!
 サンタさん、ケーキも食べてくれたんだよ!」

孫息子が嬉しくてたまらない様子で話します。
朝起きたら自転車があって、しかも寝る前にお皿に載せておいたケーキがなくなっていたのですから、たしかに嬉しいことでしょう。

祖父母たち全員で結託してサンタさんになろうと決めたのはもう随分前。補助なし自転車に乗れるようになって以来、ずっとほしがっていた自転車を贈ることになりました。祖父母サンタからの自転車は、大きな段ボールごと、絶対に見つからないベランダの隅に隠されて出番を待っていたのです。

早速初乗りに出かけたという知らせに、ジジババたちの間にニコニコメールが飛び交いました。

無垢な心は、周りにいる人たちをも無垢にします。
悪意など知らない心は、大人たちの心をも洗い清めてくれます。
誰しもみんながそんな力を持っていたはずなのに、どうしていつの間にか素敵な力をなくしてしまったのでしょう。
そして、たがいに傷つけ合ったり、いがみあったり、憎しみばかりを育てたりするのでしょうか。

大好きな友が7才のクリスマスの思い出を話してくれました。

おばあ様の様態が悪くなり、ご両親が急ぎ駆けつけることとなりました。
風邪をひいて熱を出していた友は、クリスマスにひとりでお留守番をすることになりました。ご近所のおばさんが時折様子を見に来てくれました。

ご両親は帰ることができなくなって、友はイブの夜をひとりで眠ることになりました。
でも、おばあ様の無事を祈りながら寂しさを我慢していました。

クリスマスの朝、枕元にはずっとほしかったお人形がありました。
「おとうさん、おかあさんはいなかったけれど、サンタさんは来てくれたんだ!」
と嬉しくて、何度も何度もお人形を抱きしめたと言います。

だいぶ大きくなってから友は、サンタさんが実はご両親がお頼みしたご近所のおばさんだったことを知りました。

お誕生日もクリスマスもお正月も優しさが似合う時。
もしも一年中がクリスマスだったら、世界が少しは変わるのでしょうか。

今日26日は「Boxing Day」と呼ばれる日。
カナダもイギリスもギリシャも祭日です。
イタリアでも「Santo Stefano」という祭日でした。
アメリカは祭日ではありませんけれど、「Boxing Day Sale」で買い物客が賑わいます。

2012年もあと6日。
昨夜、今年最後の仕事を終えて、
大掃除、年賀状書き、そして家族たちとの優しい時間が始まりました。

By 池澤ショーエンバウム直美


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12月26日(水):お皿に惚れたクリスマスの銀座
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 13:49| Comment(0) | その他メッセージ

2012年12月25日

Short Short Spain 15

バルセロナのクリスマスマーケット
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By 池澤ショーエンバウム直美
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 21:39| Comment(0) | スペインライフ