2013年02月04日

立春の良き日に

001 - コピー.JPG003 - コピー.JPG006 - コピー.JPG

立春という言葉にぴったりの一日が始まりました。週末の土曜日にいきなり暖かくなって、羽織っていたコートが重くなりました。Tシャツ姿も見られる中で、一緒に歩いていた方が言いました。「またすぐに寒波が戻るそうですよ。」

それなのに、昨日も今日も昼日中は嬉しいほどに暖かです。

昨日、長い間仕事をしていた大学のキャンパスを歩きました。
四季折々の自然に恵まれたこの美しいキャンパスには、たくさんの思い出がありすぎます。
広報の仕事をしていた時代、キャンパスツアーの時期ともなれば、受験生たちと一緒に毎日のように広いキャンパスを歩きましたし、海外からのお客様のご案内もしばしばありました。

何を聞かれてもいいように、歴史を学び、建物の由来を調べ、草木や花についてまで覚えましたから、この小道を抜けた先には何があって、あの森の中にはどんな花が咲いていて、あそこでは昔こんなことがあって、、、、と、今でもすぐにガイドができるぐらいに頭に入っています。映画やテレビの撮影場所を選ぶのも仕事のひとつでした。

そんな、いわば公けの思い出に加えて、あそこにもここにも、至る所にたくさんの私だけの思い出がありすぎます。天にも昇るような幸せな気持ちでここを歩いたとか、ここであの方に出会ったとか、ここで誰にも見られないように泣いたとか、、、、

結婚式が行われるチャペルに行くのに、あえて遠回りをして、梅林を抜けました。
梅が咲き始めると、あたり一帯がほのかな香りに包まれて、その香りの中を歩く時、「あ、もうじき入学試験だな。」と思ったものです。16回も繰り返された毎年の思いは、年ごとに少しずつ違って、梅の花の下には16の思いがありました。

今にして思えば、それらすべてをひっくるめて、かけがえのない年月でした。

学生たちの姿も見られない立春前の静かな日曜日の梅林で、澄んだ青空に向かって開きかけた蕾を見つけました。

春がやってこようとしています。
立春と一緒に、新しい一年が始まろうとしています。

By 池澤ショーエンバウム直美


――――――――――――
グローバルキッチンメニュー
http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
2月4日(月): バレンシアのホテルで寿司デリバリー
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 14:17| Comment(0) | マイワーク

2012年08月21日

HAIR-RAISING そして 逆髪

paranorman-full-scream-ahead.jpg005.JPG004.JPG001.JPG
17日に封切りになって、今ちょっと話題になっているのが、「ParaNorman」というアニメ映画です。アニメと言っても、1コマ1コマが、人形を動かすことによって作られている、いわゆるストップモーションと呼ばれるもの。なんでも、キャラクターどころか、街の隅々までもが手で作られ、手で動かされているというのですから、いったいどれほどのマンパワーと時間の成果なのでしょう。

ストーリーは、幽霊と話すことのできる11歳の少年ノーマンが、100年前の呪いから町を守るというものです。この子の風貌がとてもユニークなのです。新聞記事では、「HAIR-RAISING」と紹介されていましたけれど、正に髪が天に向かって逆立っているのです。

そんな少年のことを考えながら眠りに就いたせいでしょうか。朝起きたら髪の毛が寝癖ですさまじいことになっていました。けれども、居間では夜中の間にもっとすさまじいことが起きていたのです。ヒマワリをさした大事な花瓶が木端微塵に割れて、床の上に放り出された花のまわりに、水たまりができ、あちこちにキラキラと光るガラスの破片が飛んでいました。朝日の中でキラキラと光るガラスはとても美しいのですが、そんな悠長なことを言っている場合ではありません。

身支度を整えるのもそこそこに、何度も何度も床を拭いて、何度も何度も絨毯に掃除機をかけ、また拭いて、ガラスのかけらを丁寧に片付けていきました。頭が重いヒマワリや紫陽花の花は、時としてこうしたアクシデントを招きます。それでも、この2つの花を飾りたくなるのですから困ったものです。

這いつくばって床を掃除していると、一足先に起きて、それなのにヒマワリ転倒事件には気付きもしなかった家人がやって来て、日本語で言いました。

「タイヘンデスネ。サカガミデスネ。」

何が大変なのかと思ったら、ヒマワリ事件のみならず、どうやら私の寝起きの「HAIR-RAISING」だったようです(笑)。

「サカガミ」なんていう言葉、いったいどこで覚えたのでしょう。
と、つらつら思い返せば、そうです、あれでした。4月に東京で一緒に参加したお能の講座です。これは、元々は銀座時代に社会人のために企画したいくつもの講座の中のひとつでした。2年半前にその場所が閉鎖されてからも、嬉しいことにいくつかの講座は、場所を変えて連綿と継続されています。

このお能の講座もそのひとつです。今では、都心の教会の会議室に20人を越す有志が集まって、京都から出てきてくださる湯浅先生を囲んで勉強を続けています。講座のタイトルも当初のものと変わらず「能と聖書の響き合い」です。能と聖書という、一見まったく異質の物語を対話させ響き合わせることがこの講座の狙いです。

中でも4月の会はとりわけスペシャルなものとなりました。観世流能役者でテアトル・ノウを主催する味方玄さんをゲストに、「蝉丸」と「鵺」を取り上げたのです。

夫は、行き当たりばったりの私と違って、しっかりと事前勉強をして臨みました。その結果、蝉丸の姉で、天に向かって逆立つ髪を持って生まれた悲劇の女性、逆髪についてもその時すでに学んでいたのです。もちろん「SAKAGAMI」が何を意味するかについても。

以来困ったことに、私は、「SAKAGAMIですねえ。」などとからかわれる羽目になってしまいました。けれども、これからはきっと言い返せそうです、「あなたもPARA NORMANですねえ。」と(笑)。

4月のスペシャルレクチャーでは、味方さんの手によって、仲間のひとりが私たちの目の前で、みるみるうちに鵺へと変身しました。その様子をご覧いただきます。心の持ち方ひとつで、世の中にはまだまだ面白いことがたくさんあります。

P4190547 - コピー.JPGP4190549 - コピー.JPGP4190553 - コピー.JPGP4190554.JPGP4190556 - コピー.JPGP4190565 - コピー.JPGP4190561 - コピー.JPGP4190567.JPG
By 池澤ショーエンバウム直美
――――――――
グローバルキッチンメニュー
http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
8月20日(月): 3つの緑に魅せられて@Del Rayの宵の明星
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 06:02| Comment(0) | マイワーク

2011年11月27日

謎解きパズルの後の風景〜村上陽一郎先生のお話の後に

RIMG13975.JPGRIMG13977.JPGRIMG13980.JPGRIMG13981.JPGRIMG13978.JPGRIMG13987.JPG 
 昨日、今日と二日続きでものすごい贅沢をしています。昨日は小さなノートに9ページ。ロイヤルホストでフライドポテトをつまみながら、雄弁と多弁について、古代ギリシャから現代史までの家庭教師ならぬファミレス講義です。教師はわが大親友にして尊敬する元国際基督教大学(ICU)学長の大口先生。

 これについてはまたあらためて話します。独り占めするにはあまりにもったいない、血湧き肉踊るお話でした。

 そして今日は、横浜共立学園での村上陽一郎先生のご講演。コーディネーターとしての務めを忘れて、すっかり「知の喜び」に酔ってしまいました。ごぞんじの方も多いことと思いますが、村上先生は東大とICUの名誉教授であり、今は東洋英和女学院大学の学長をつとめておいでです。加えて言えば、いつお会いしても見惚れてしまう素敵な方です。

 今、一番嬉しいのはこうした「知的興奮」であり、「知的感動」です。新しいことを知ること、すでに知っていたこと同士が結びつくこと、その思いもかけぬ繋がりを発見すること、、、それらは珠玉の喜びであり、私にとってはいくつもの宝石以上に価値あるものです。知識の断片が繋がることを、私は「チリンギング」(知の連環)と勝手に名づけては楽しんでいます。(http://blog.platies.co.jp/archives/20100619-1.html

 「科学・技術と社会」と題する村上陽一郎先生の講演は、科学と技術の違いについてから始まりました。それらは似ていたり、重なる所はあっても違うもの。だから科学技術ではなく科学・技術だとおっしゃいます。

 道具の話では、道具を使うのは人間だけではない、鳥でさえ道具を使って生きていると。ダーウィンがガラパゴス島で発見した「つまようじフィンチ」という鳥は、小さな小枝を嘴でくわえて、木の皮と幹の間に差し込みます。すると幹の中から小さな虫が出てくる、フィンチはそれをついばむという図式です。

 ワシントンの家の書庫には、「子どもの頃は鳥類学者になりたかった」と言う夫が集めた鳥類図鑑がたくさんあります。この夏、なぜか私はひとりで書庫に入って、よく図鑑を眺めていました。そこでフィンチ(Finch)の名前を知りましたが、ダーウィンにも、ガラパゴスにも気づきませんでした。それなのに、なぜか全く別の理由から、「そうだ、ガラパゴスに行こう!」などと考えていたのですから不思議です。

 先生が言います。「哲学=フィロゾフィーとは知を愛するという意味です。」
 ここで初めて気づきました、「あっ、そうか、そうだったんだ!」。なんで今まで気づかなかったのかが不思議なぐらいです。だって、ギリシャ語でフィロとは友人や友愛のことですし、ソフィアとは知恵のことなんですから。

 いったん気づけば思考は発展していきます。9月に行ったフィラデルフィアは、フィロ+アデルフィではないですか!アデルフィはギリシャ語で兄弟ですから、フィラデルフィアとは兄弟を愛すること。そう言えば、誰かが言っていました。「フィラデルフィアは兄弟愛の町です。」と。

 こんな風にひとつの気づきがどんどんと広がっていくのは、まるで謎解きパズルのような面白さです。

 技術と科学の違いに始まって、科学の特徴、科学の変質、国家と科学、政治課題としての科学、科学の新しい社会的意義へと、先生の話は進みます。最後に投げかけた専門家の資質についての言葉はずしりと重く響きます。

「専門家と非専門家の間の橋渡しをする人材が社会の中で育たなければならない。そうしたコミュニケーション能力を持った人たちが育つように、社会リテラシーと科学リテラシーの2つのチャンネルを高等教育で作らねばなりません。」

 講演も、花束贈呈も、サイン会も、記念撮影もすべて終了し、ほっと見あげた窓の向こうの風景の、何という広がり!新しい何かを知った後の景色は、いつだって少しばかり違って見えます。

―――――――――――――
今週のグローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
11月22日(火):ホワイトハウスの殺風景チキンパテ
11月23日(水):殺風景チキンパテの変身
11月25日(金):最近はやりの朝御飯



posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 01:47| Comment(0) | マイワーク

2011年11月25日

障害という文化 手話という言語

RIMG13966.JPGRIMG13968.JPG 
 公開シンポジウム「ことばのバリアフリーを目ざして」が開催されたのは先月末、日本社会事業大学でのことでした。斉藤くるみ先生による30分の基調報告の後に、3人のパネリストによるパネルディスカッションが行われたのですが、日本大学の渡部淳先生と国際基督教大学の槻舘尚武先生の隣にちょこんと座っていたのがなぜかこの私でした。

 そして、このシンポジウムのテープ起こし原稿の校正締め切りが今日だったのです。時間にしてたった1時間半が、紙になればA4でぎっしり28ページです。出かける前に終わらせようと早朝から集中して読み込んでいて、2つのことを大発見。

 まず悪い方の発見から言えば、まあまあ自分自身の言葉の何と、、、、。
この「、、、、」の部分には、拙いとか、論理性の欠如とか、表現がくどいとか、、、色々なものが入ります(泣)。話している時には全く気づかない自分の話し癖が、テープで起こされるとこうも如実に露見してしまうのですから残酷なものです。何たって話し言葉は書き言葉と違って、言ってしまったが最後、もはや訂正はできません。

 そんな私にひきかえ、斉藤先生以下、3人の先生方はさすが日ごろ大学で講義をなさっているだけあって、話し言葉も整然としています。

 次に良い方の大発見。

 斉藤くるみ先生の基調講演を活字で読ませていただき、またしても心を打たれました。「またしても」と言うのは、そもそもこのお仕事を引き受けようと思ったきっかけが、この大学の「日本語でも英語でもない手話で学ぶ教養がここにある」という姿勢と、「手話は弱者のための言語ではない。障害はひとつの文化であり、手話というのはその文化の中の言語だから、世界にたくさん存在する少数言語のひとつに過ぎない。」という先生の考え方に大変感銘を受けたからなのです。

 ちなみにこのプロジェクトは文科省の助成によるものです。シンポジウムの中で先生が語りました。

「障害というものが、一般の方より何か欠けていて、一般の人に近づけるように支援する、あるいは、それを補ってあげるといいう考え方ではなく、障害を文化と見る考え方がイギリスで生まれた障害学です。」

「本学では、外国語科目として『日本手話』を置きました。それは、日本で最大の数を持つマイノリティーということで日本手話を位置づけること、それから日本手話者の権利を守ること、日本手話の言語性を認めるという考え方でした。担当するのは、日本手話を母語とするろう者の先生=ネイティブスピーカーです。」

 障害を文化とし、手話をマイノリティーの言語とし、手話によって会話をするろう者の先生をネイティブスピーカーと呼ぶ、、、、

 そういうことをごく普通に行っている所があるのです。そんな場所で仕事をさせていただけたことを誇りに思います。

 暗くなった帰り道、街灯に照らされた銀杏並木の何と美しかったこと!
 夜桜が美しいなら、夜銀杏だって美しい!

By 池澤ショーエンバウム直美



―――――――――――――
今週のグローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
11月22日(火):ホワイトハウスの殺風景チキンパテ
11月23日(水):殺風景チキンパテの変身
11月25日(金):最近はやりの朝御飯
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:56| Comment(6) | マイワーク

2011年11月16日

「ジュニアソムリエコース」って?

RIMG13665.JPGP1050960.JPGP1050962.JPG P1050958.JPG
 12日に点灯式が行われて3千個ものランプが灯されたミキモトのクリスマスツリーが、今年もまた銀座を照らし始めました。今年で34本目の樅の木は、まるで何事もなかったかのように、これまでのたくさんの年と同様、道行く人々を染め、しばしその足取りを緩めさせます。

 昨夕、乗っていた銀座線が銀座で止まってしまったために、慣れ親しんだ道を京橋まで歩きました。おかげでミキモトのツリーを見ることができたわけですから、こういうのを「塞翁が馬」とでも言うのでしょうか

 向かう先は「日本オリーブオイルソムリエ協会」、目的は、「ジュニアソムリエコース」第一回目の講義です。

 オリーブやオリーブオイルについては、これまでも何度もおしゃべりをしてきましたし、私がソムリエになろうと思った理由ついてもお話ししてきました。けれども、「ジュニアソムリエコース」とは何なのか、については書いたことがなかったと思います。

 これは、オリーブオイルソムリエを目指す人たちの入門コースです。と、同時に「ソムリエほどにはプロフェッショナルにならなくても、オリーブオイルについて勉強をしたい。」という一般の方にも最適なコースです。全6回の講義はそれぞれにテーマがあります。

第一回:オリーブオイルの起源と歴史〜神話と文明
第二回:オリーブオイルの規格と風味〜テイスティング技術の基礎
第三回:オリーブオイルを作る工程
第四回:世界のプレミアムオイルの数々
第五回:おいしくて体に良いオリーブオイル料理
第六回:アンチエイジング/心臓病予防などの健康効果

 講義の後では毎回3種類以上のオイルのテイスティングをし、テイスティング技術の基礎を身につけます。

 ソムリエになるためには、ジュニアソムリエコースで基礎を学んだ後、「ソムリエコース」に進んでかなり専門的な勉強を続けなければなりません。栽培学もあれば、品種についての勉強、最新の栄養学や食品衛生学、オイルの製造法なども含めて全10回。かなりたたきこまれます。もちろんテイスティング技法もより専門的なものになります。こうした勉強を全て修了し、筆記試験に合格をすれば「オリーブオイルソムリエ」として認定されることになります。ちなみに私は第一期生のソムリエです。

 昨晩の講義「オリーブオイルの起源と歴史〜神話と文明」には、NHKの撮影が入りました。講義も撮影も無事終了し、片付けをしながらクルーの方々が言いました。

「いやあ、皆さん楽しそうでしたねえ。」

 ええ、そうなんです。古代から現代まで、オリーブオイルを視点にして眺めた世界史はワクワクと面白く、旧約聖書やギリシャ神話のエピソードには浪漫が膨らみます。パピルス文書も出てくれば、アリストテレスもマホメットも出てきます。

 講義が終わった後のインタビューで、「オリーブオイルの魅力は何ですか?」と聞かれ、答えたことは、「もちろん健康効果もありますが、浪漫とストーリーを併せ持っていることでしょうか。」

 咄嗟の答えでしたが、あながち外れてはいないはずです。オリーブオイルは、一つの食品素材としては異例とも言える歴史を担っているのですから。

 放映日が近づきましたらまたお知らせいたしますが、番組名はNHK「あさイチ」です。

 ところで、この「ジュニアソムリエコース」が、11月26日(土)・27日(日)の土日短期集中講座として、初めて名古屋で開講されます。定員までまだもう少し空きがあるとのこと、名古屋方面にお住まいの方、オリーブオイルの世界へ旅立ってはみませんか?
http://www.oliveoil.or.jp/content/portfolio/jsom20111126

―――――――――――――
今週のグローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
11月14日(月):色は地味でも心はフルカラー@娘の夕食
11月15日(火):クイックアスパラガスキッシュ@ホワイトハウス
11月16日(水):こんなに簡単でいいのでしょうか〜ズッキーニのスープ@ホワイトハウス
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:59| Comment(0) | マイワーク

2011年10月25日

良い一日 良い仕事〜中央区民カレッジ

RIMG13058.JPGRIMG13065.JPG 
 講義も講演も司会も、同じように人前で何かを伝える仕事のはずなのに、その規模に関わらず、終わった後に鼻歌の一つも歌いたくなるぐらいにいい気分になる時と、逆にこれと言ったわけもなく、何だか後味の悪い時もあります。もちろん我が身の至らなさに頭を垂れる時だって多々あります。

 今日の中央区民カレッジは、まさに鼻歌でした。60歳以上の中央区在住の方を対象としたこのコースはシニアコース1年生の必修講座です。10人の講師が週変わりで、それぞれの専門分野での講義をします。歴史もあれば文化もあります。からだや心の問題、シニアと呼ばれる年齢層の人たちがこれから向かい合っていかねばならない様々な課題も含まれています。

 たとえば第一回目は、元NHKチーフアナウンサーの田辺光宏さんが「三浦按針と日本橋」について語りましたし、先週は老年心理学がご専門の井上勝也教授が「認知症の予防」についてレクチャーをしました。来週は歌舞伎座舞台社長の金田栄一さんが「歌舞伎のいろは 大向こうさんとの対談」についてお話をなさいます。途中で新東京丸による「東京湾めぐり」などという課外授業も入ります。私も受講生になりたいぐらいに充実した内容です。

 私の担当は今日の第7回目。テーマは「地中海型しなやか健康ライフ」です。ゆっくりお風呂につかりながら、「どうしてだろう?」と鼻歌の理由を考えてみました。

 まずあげられるのは、余裕を持って臨めたことではないかと思います。なぜならこれは長年の経験を存分に生かせる分野です。加えてオリーブオイルソムリエとして新たに身につけた知識もありますし、昨秋のイタリア暮らしでの貴重な取材もあります。つまり、「これは私のオリジナル」という自信が、余裕に繋がりました。

 次に、残りの3分の1の時間で皆さんに包丁を握ってもらい、2品の簡単な料理を作ってもらったことです。これによって受講生同士の間に連帯感と対話が生まれました。そして私自身も皆さんの間をまわりながら、そんな連帯感と対話の仲間に入ることができました。

 もう一つ忘れてならないのは、中央区の方々、そして私の片腕、アシスタントのカズコさんとの素晴らしいチームワークがあったことです。

 これらのことが、私自身を含め、その場にいた人すべてに心地よい笑顔をもたらしました。その裏にはもちろん、一緒に作って一緒に食べるというシンプルな『幸せの法則』があったこともないがしろにはできません。

 良い一日、良い仕事でした。
 ありがとう。

――――――――――――――――――
今週のグローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
10月23日(日):秋はやっぱり外テラス@ワシントン
10月24日(月):やっぱりこれが一番?娘の料理@TOKYO
10月25日(火):デラックス家庭科調理室@TOKYO
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:59| Comment(2) | マイワーク

2011年10月16日

教えることは学ぶこと〜頭がオリーブ

RIMG3093.JPGRIMG3114.JPGRIMG3113.JPG
 陳腐な言い回しですけれど、教えることは学ぶこと、いつも本当にそう思います。
 もう何度もやったことだから、と、気軽な気持ちで臨んでしまえば、表にこそ出しはしませんが、内心ではドキドキとすることになります。逆に、初心に戻ってきちんと復習してから臨んだ時には、余裕しゃくしゃく、新しいネタなどを付け加えてはいい気分になります。

 昨日、日本オリーブオイルソムリエ協会ジュニアソムリエコースの第一回目の講座を受け持ちました。好きこそ物の上手なれ、で、私が得意とする分野はこの第一回目「オリーブオイルの起源と神話、歴史との関連」です。ギリシャ神話に登場するオリーブに関する様々な物語を話したくてウズウズとしながら、時計と睨めっこで講義を進めます。

 それでも途中でやはりドキドキしました。古代ギリシャやローマ文明についてはある程度は知っているものの、アッシリアだの、バビロニアだの、フェニキアだのになると、もしも質問でもされたならきちんと答える自信がありません。次回の講義に臨む時には、もう少し勉強をしなければと反省しました。教えることは、やはり、一番効き目のある「学びモティベーション」です。

 今日はオリーブオイルソムリエとして、これまでこのブログではあまり触れてこなかったことを手短かにお話しします。

 できることならどうか、オリーブオイルを摂取してください。ついこの間の6月15日にも、フランスのボルドー大学のチームが、オリーブオイルの脳卒中予防効果について発表したばかりです。オリーブオイルと脳卒中の関係を追跡調査したところ、オリーブオイルを日常的に摂取しているグループは、脳卒中のリスクが41%も低いことがわかりました。

 それだけではありません。これまでも様々な研究機関で、オリーブオイルの効能が確認されてきました。

 その発端とも言うべきは、1950年代に行われた、ミネソタ大学アンセル・キース博士が率いる7カ国調査でした。これは、過去10年から25年にわたって、発病と死亡率、そしてそこに住む人々の食生活の関係を調査したものです。

 その結果、驚くべき事実が明らかにされました。ギリシャにおける冠動脈疾患の死亡率は、何とアメリカの10分の1以下だったのです。キース博士自身も晩年の30年間はアメリカを離れ、南イタリアに暮しました。そこで自らオリーブオイルを基本に据えた地中海型食事法を実践し、7年前の11月に100歳の大往生を遂げました。

 その後も、世界中のいろいろなところで、オリーブオイルの効能が発表され続けています。昨年の4月には、コロンビア大学の研究チームが、地中海型食事を取りいれている人は、アルツハイマーになる危険性が40%も少なくなる、という研究成果を正式に発表しました。

 まだまだあります。2009年10月にはスペインのナバラ大学が、オリーブイオイルが鬱病の予防に効果があることを明らかにしました。

 そして、大詰めとも言える朗報が昨年11月にもたらされたのです。ナイロビで開催されていたユネスコの無形文化遺産選定会議で、地中海型食事(Mediterranean Diet)が無形文化遺産として正式に認定されました。

 これは、イタリア、ギリシャ、スペイン、モロッコの4カ国によって共同提議をされていたものでした。たまたま私たちの親友、ツーリオ博士が、イタリア代表としてこの会議に出席していましたので、たぶん私は真夜中の国際電話で、一番先にこの知らせを聞いた日本人の一人だったはずです。その後、決定に至るまでの裏話などもたくさん聞くことができました。とてもここでは書ききれません。

 最後に、昨年のクリスマスに、友人のオリーブ園で、オリーブの最後の収獲に立ち会った時の写真をご紹介します。南イタリアのプーリアです。木を揺らし、ネットで受けて収獲されたオリーブの実は、24時間以内に搾油されます。

 昨日の講義のおかげで、私の頭がかなりオリーブになっています(笑)。
RIMG3120.JPGRIMG3125.JPGRIMG3108.JPGRIMG3122.JPGRIMG3132.JPGRIMG3117.JPGRIMG3123.JPGRIMG3135.JPGRIMG3133.JPG

―――――――――――――――――――
今週のグローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
10月16日(日):軍配はナポリタンにあり
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 11:00| Comment(2) | マイワーク

2011年07月30日

忙しいなんて言わない


RIMG11044.JPGRIMG11046.JPGRIMG11053.JPGRIMG11073.JPG「忙しそうね」などと言われれば、まずは「いえ、全然そんなことありませんよ。」と笑って返すのが常。これには3つの理由があります。ひとつは、「忙しいこと=良いこと」につながる日本文化。つまり一種の良き社交辞令のようなものですから。「ええ、本当にもうめちゃくちゃ忙しくて」などと返せば、おおかたの場合は言った相手もちょっと引いてしまいます。

2つ目は、こちらもだんだんと変わってきて、文字通り「忙しい」生活が性に合わなくなってきたこと。忙しいことは全然嬉しいことではありません。究極の憧れは、読んで、書いて、ぼやっとニコニコの、晴耕雨読生活です。

最後は、たとえ本当に忙しかったとしても、私の忙しさなんてたかが知れているということ。たとえば2人の娘たち、それぞれの生活を考えたって、「よくもまあ」と驚くぐらいに色々なことをこなしながら、あっけらかんとして愚痴ひとつこぼしません。「若いからよ。エネルギーが違うのよ。」などと言う人たちもいますけれど、それにしたって、たとえ若かろうが、彼女たちを知る身にとっては、これしきのことで「忙しい」などと言ったら、バチのひとつも当たろうというものです。

とは言え、ここだけの秘密のつぶやき。今日はちょっと忙しかったかな。いえ、「忙しかった」ではなく「疲れた」かな(笑)。

それを羅列するのも野暮ですけれど、朝8時前に出たと言うのになぜかいつもの道が大渋滞、ワークショップが始まるという10時に間に合わなかったらどうしようと、かなり気をもみながらハンドルを握っていました。実はこういうことがけっこう疲れるのですよね。

帰ってすぐに、今度は急いで着替えてから、待っていた夫を乗せて、ある素晴らしいプログラムの修了式とそれに続くレセプション。

そのどちらも、たくさんの感動があって、いい形で気持ちが揺らいだことも疲れの原因かもしれません。

あろうことか、テレビを見ている夫の横で、ソファに寝そべったまま寝入ってしまいました。こういう時に、絶対に起こさないのが我がパートナーの優しいところ、いえ冷たいところ?気づけばもう深夜。連れ合いはすでに深い眠りの最中。

ガバッと起きて、かなり焦りながらの久しぶりの深夜パソコンです。
開け放した窓から聞こえるのは、木々から落ちる雨の雫の音。冷房など全く必要のない快適な涼しさです。まるで眠るのが惜しいぐらいに。

両方のプログラムについては、書きたいことがたくさんありますけれど後日に譲って、今はただ昼夜それぞれに一つずつ感動言葉を。

昼間のワークショップには2人の車椅子の学生が参加をしてくれました。その一人、鮮やかな緑色のTシャツを着た爽やかな顔(かんばせ)の青年の言葉。子どもの頃から重病を患っている青年です。

「人生のうちでつまらなかったことなど一度もなかった。」

そして、1ヶ月の間、寝食を供にして学びを成し遂げた社会人学生たちの修了式の最後に、二つのスクリーンに投影された言葉。

「The Best is Yet to Come.」 (最善のことはまだまだこれから)

おやすみなさい。今日も一日ありがとう。


しばらくはこのバナーを置かせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。何せ人手不足です。司会も私が勤めさせていただきます。
charityconcert_banner.jpg

――――――――――――――――――――――
今週のグローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
7月30日(土)予告:こんな冷やし中華っていかが?
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 01:44| Comment(0) | マイワーク

2011年07月24日

素敵なシンフォニー〜13カ国の料理撮影終了!

 RIMG10890.JPGRIMG10893.JPGRIMG10895.JPGRIMG10896.JPGRIMG10899.JPGRIMG10900.JPGRIMG10904.JPGRIMG10912.JPGRIMG10909.JPGRIMG10925.JPGRIMG10929.JPG
自称も他称もアナログ人間です。かなり時代遅れです。この間も娘に驚かれてしまいました。「ママ、随分長いことパソコンやっているはずだけど、こんなことも知らなかったなんだぁ!」

ですからもちろん携帯だってごく普通のもの。先日やっと新しいのに買い換えましたけれど、「あのお、楽々フォンとかいうのがあるそうですが、どんなのですか?」と聞いたら、お店のお姉さんにきっぱり言われました。

「それはまだお客様には早すぎると思います。ふつうに電話をしたり受けたり、メールを受発信できますよね。」
「は、はい。そのくらいは。」

というわけで、ふつうのゴールドのものを買いました。もちろん世界中のどこにいても使えることだけは基本条件です。ですからまだまだ皆様お持ちのI-phoneとか、smart phoneには縁遠く、時にはリアルタイムの実況中継ブログのひとつもかっこうよく書いてみたいと思うのですが、それもできません。
 
というわけで今日もまた事後報告。

朝の9時に大きな機材をかかえてカメラマンさんがやってきました。そして、次々に到着する女性陣4名。以来私は、階段を上ったり下りたり、家中あちこちの引き出しを探ってみたり、ちょっと添える花がほしければ急ぎ車を走らせたり、カリフラワーが足りないとなれば買いに走ったり、キッチン組に「ナオミさ〜ん!」と呼ばれれば飛んで行き、「こんな感じでどうですかねえ。」とカメラマンに呼ばれればまた飛んで行き、「あの、ナオミさん、このクロス皺が目立つんですが」とコーディネーターに言われればやおらアイロンがけに転じ、、、、、まあまあ忙しい一日でした。それでもなんだか修学旅行の大騒ぎの後のように心浮き立つ疲れです。

今日、あるプロジェクトのための撮影を終えました。一日で13カ国の料理を作りました。と言っても、私は手ぬぐいを首に巻いてあちこち走っているだけで、キッチンでせっせと料理を作ってくれるのは勝手知ったる手際よい二人組。できたものからどんどんと、コーディネーターさんがお皿を選び、布を選び、小物を選びます。それをカメラマンさんがパチリパチリ。撮った写真はすぐにパソコンの画面で確認されて、「お皿をもう少し右側に」とか、「花はいらないんじゃない?」とか大親分さんが言いながら、また何枚も撮り続けます。

素晴らしいチームワークでした。この仲間たちだからこそできたことです。いつだって思います。結局一番楽をしているのは私。いつの時代も、よき仲間たちに支えられ、ありがたい、ありがたいと思いながら、何となく指揮棒を振っているうちに素敵な室内楽あるいはシンフォニーが奏でられます。

それにしても目下のわが家は、床に散乱した物たちと、山のように残ってしまった13カ国料理。今日は一日中、地下の書斎に逼塞していた夫に、今しがたおずおずと言ってきました。

「ごめんなさい。このゴチャゴチャ、明日全部片付けます。今日はとても疲れてしまったの。お夕飯はこのテーブルに乗っているものを食べましょうね。13カ国よ。おいしいわよ。」(笑)

この面白楽しいユニークなプロジェクトは、たぶん秋には形になるはずです。あとは私が頑張ればの話ですが(笑)。気心知れた仲間たちとの仕事は、いつだって、どんなに疲れようと、心が沸き立ちます。嬉しいものです。その反面、どうも気持ちが合わない相手とは1時間でもつらいもの(笑)。

By 池澤ショーエンバウム直美
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 21:01| Comment(0) | マイワーク

2011年05月22日

こんな小さな場所から?

RIMG9802.JPGRIMG9799.JPG
 薫風という言葉がぴたりと当てはまるような、美しい5月の土曜日でした。昨年早々から関わっていた仕事が、今日、撮影を終了し、ひとつの大きな山を越えました。あとは7月のワークショップと10月のシンポジウムを残すのみ。一人ではとうていできることではありませんでした。途中、意見の衝突があったり、価値観の相克にとまどったりしながらも、とにかくここまで来ることができたのは、ひとえに一緒に携わってきた相棒のおかげです。不在の多い私に合わせた無理なスケジュールで、随分と迷惑をかけてしまいました。

 「やるべきことはやった。しばらくこの件は忘れよう。」と、久しぶりに閉館間際のプールに飛び込みました。

 不器用で面倒くさがりやの私が、唯一継続している運動は泳ぐことだけです。それも、海やお洒落なプールではなく、長い間慣れ親しんだごく普通のプールで黙々と泳ぐこと。もしかしたらそれが、心身の健康の鍵だったのかもしれません。

 春のワシントンでビジターでも泳げる室内プールを見つけるのは難しく、ようやく探し当てた所も、車がなくては行かれません。国際免許の更新もできずに急遽飛び立ってしまった私にはどうすることもできませんでした。

 そんな運動不足が腕から指先までの痺れの原因であるなどという短絡的なことは言えませんが〜そう言えたらどんなに気が楽になるでしょうが〜不調の原因は、解消の道を絶たれた心身のストレスもあったのかもしれません。

 いつもの楽観癖から、「大丈夫、きっと泳げば直るさ。」と日本に帰ってきましたが、翌朝飛び込んだ病院で、お医者様から言われてしまいました。

「まあ、大丈夫だとは思いますが、万一ということもありますからMRIの結果がわかるまでは運動は控えてください。水泳? あ、いけません。もし何でもないことが判明したら、それからはむしろドンドンと泳いでください。」

 日々たまるストレスを水に流すこともできず、検査の結果が届くのを怖さ半分で待ち侘びた昨日、先生が目の前に広げたのは、何枚もの「私の脳」の写真でした。ご心配をおかけした皆様にきちんと御報告すれば、私の脳は年相応に劣化(笑)はしていても、とりたてて心配することはないとのことでした。
 
 つまり、「泳いでいいですよ。」というお墨付きが出たわけです。とは言え、チリチリした痺れが消えたわけではありません。もうしばらく、ビタミンB1・6・12を飲み続けて様子を見ることになりました。これに加えて今日から早速始めたのが、自己流水泳療法と言うわけです。

 それにしても、自分の頭の中の写真はちょっとした衝撃でした。

「えっ、こんな小さな場所で笑ったり、泣いたり、クヨクヨ考えたりしているの?」と、思えば、なんだか一生懸命働いている小さな私の頭が健気に思えてきますし、

「えっ、こんな小さな場所からだって、思いは世界へも、宇宙へも広がっていくの?」と気づけば、なんだか物凄いものをからだのてっぺんに持っているように思えてきます。

 仕事をなし終えた開放感と久しぶりの運動で、いい感じの眠気に包まれています。この何日かの不眠の後では、何と言う健全な心地よさでしょう。

------------------------------------------------------------------------
今週のグローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
5月16日(月):コキの鳴く夜
5月17日(火):なつかしのカリビアンスパイス
5月18日(水):ペンタゴンで禅?
5月19日(木):私のお気楽ランチ
5月20日(金):アメリカの首都ど真ん中の青空市場
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 00:31| Comment(0) | マイワーク

2011年05月20日

響き合いが泉のように 

 RIMG9710.JPGRIMG9704.JPGRIMG9709.JPGRIMG9705.JPG
 銀座の真ん中、教分館書店のビルの6階のオフィスに、湯浅裕子先生がふらりと入って来られたのは、たぶん2006年の今頃のことではなかったかと思います。当時私はここに開設されたばかりの「恵泉銀座センター」が取り組むべき、社会人のための教育の企画と運営を担っていました。

 毎日同じ時間にオフィスにいるわけでもないのに、そこに先生が入っていらした時に、たまたま私がいたのです。お座りいただき、四方山話をし始めてすぐに、この方との出会いが何か特別なものであるような気持ちにとらわれました。不思議な感覚でした。

 そしてすぐにある決断をしました。今にして思えば随分無謀なことでしたが、私は自分の直感を信じました。何かひとつ新しいことが広がるというのは、往々にしてそんな無謀さからです。

 私は先生に9月から始まる講座で教えていただきたいことを伝え、先生は京都にお住みになっているにもかかわらず、二つ返事でご快諾をくださいました。

 以来、湯浅先生は毎月第三木曜日の午後には、一度もお休みなさることもなく、新幹線で上京してくださいました。十分な謝礼をお払いすることもできないのに、いやな顔ひとつせず3年以上もの間、私たちに知の喜び、考える楽しさと、多くの気づきを与え続けてくださいました。

 2009年末にこのオフィスを閉じねばならなくなった時に、何とか別の形で継続できないかという願いから、私はあちこちと画策に駆けまわりました。その結果、いくつかの講座を引き受けてくださる所が見つかり、別のいくつかの講座は受講生自らが自主的に運営をするという形で継続されることとなりました。

 それから早いもので2年半がたとうとしています。「能ドラマと聖書の響き合い」という湯浅先生の講座は、開催場所を秋葉原に移し、成城の私の家に移し、また秋葉原へと戻り、そして今月からは赤坂の霊南坂教会での開講となりました。

 さわやかな陽気に恵まれて、溜池山王の駅から桜坂を登っていけば、青葉が美しく薫ります。アークヒルズやアメリカ大使館があるこの一帯は、新旧が美しく調和している場所です。

 先生は昔とちっとも変わらずに京都から来てくださるのに、私はと言えば欠席の多い劣等生です。

 今日も2ヶ月ぶりに出かけてみれば、まあ、何とした事でしょうか、知っている顔のほかに新しい人たちの顔も見えて、数えてみれば20名。銀座の時代は数名だったものが、いつの間にやらこんなに大きな輪になっているのです。

 お一人お一人に目を移せば、懐かしい思い出と共に、人と人との連鎖が面白いように繋がっていることがわかります。全く別の機会に、たまたま知り合いになった方々が輪の中にいます。その方々がまたどなたかをお連れになっています。その隣りに私のグローバルキッチンの仲間たちがすわっています。

 今日のテーマは、「昇天と羽衣」。
「優れた文化の底流には、共通する魂が流れている。だから異文化同士の魂は必ず響き合える。」という信念を持つ先生が、今日も初めにこうおっしゃいました。

「いいところ同士を統合ではなく、響き合わせましょう。」

 響き合いは響き合いを呼び、その響きが泉のように新たな響きを湧きおこした今日、同じく京都からいらしてくださった観世流の舞い手の中島政子さんが、まさに羽衣をまとった天女のように舞ってくださいました。

 全てはたったひとつの偶然の出会いからでした。

〔ご報告:からだが小さいせい?薬慣れしていなかったせい?
 ともかく効き過ぎました。目覚ましを鳴らした3時間後にやっと目覚めました。
 起きてもまだ眠くて、午後までずっとボケ頭。もう懲りました。今夜からはたとえ眠れなかろうが、睡眠CDだけにします(笑)。〕
------------------------------------------------------------------------
今週のグローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
5月16日(月):コキの鳴く夜
5月17日(火):なつかしのカリビアンスパイス
5月18日(水):ペンタゴンで禅?
5月19日(木):私のお気楽ランチ
5月20日(金)予定:アメリカの首都ど真ん中の青空市場

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 00:30| Comment(0) | マイワーク

2011年03月09日

まさかの自宅能〜味方玄さんを迎えて

RIMG3303.JPGRIMG3308.JPGRIMG3297.JPGRIMG3321.JPG 
 そう、あれは確か4年半前のこと。私が仕事をしていた銀座のオフィスにフラリと入ってきた二人連れがいらっしゃいました。今思えば、ちょっとしたインスピレーションを感じたのかもしれません。仕事の手を休め、椅子をお勧めし、お茶をお出しして、話が始まりました。銀座のそのビルにお立ち寄りになったお二人は、本当にたまたまフラリと入ってきてくださったのです。

 それが、能と聖書の共鳴を国内や海外で発表しながら異文化交流を続けている湯浅裕子先生と、カメラマンの風間久和さんだったのです。

 京都からいらした湯浅先生は、偶然にも私が16年もの間仕事をしていた国際基督教大学(ICU)の初代学長、湯浅八郎先生の義理の娘さんでした。そして、ご自身もICUの卒業生でいらっしゃいました。

 共通の知人たちも数多く、話は驚くほどのスピードで展開し、初めてお会いしたその方に、私は無謀にもその何ヶ月後かに開講する講座の講師をお願いしてしまったのです。そして、先生の方も無謀にもその場でご快諾くださり、以来この場を閉じるまでの3年と4ヶ月、京都から銀座まで定期的に通ってくださったのです。

 「能ドラマと聖書の響き合い」と言うユニークな講座は、時に能役者の方を、時に舞い手の方をゲストに豊かな果実を実らせてくれました。私自身も生徒の一人でした。

 人間国宝、片山幽雪さんの高弟で、観世流を背負う若手のホープ、能役者の味方玄さんとお会いしたのも、湯浅先生の講座の中でのことでした。全てを見通してふんわりと相手を包み込むような湯浅先生に一目惚れをしたように、私は立ち姿ばかりか座り姿も凛とした味方さんに一目惚れをしました。

 それがこんなことになるなんて、いったいどうして予測ができたでしょう。

 事務局の菅沼さんからメールをいただいたのは、昨年の秋、私がミラノで暮している時でした。

「味方さんをお迎えして湯浅先生の講座を開催したいのですが、適当な場所が見つかりません。池澤さんのお宅を使わせていただくことはできないでしょうか。」

 昨年夏にわが家で開催した「ギリシャ神話と夏の星座」にいらっしゃった菅沼さんは、この家をすでによくご存知でした。それでいて選んでくださったことを嬉しく思いながら、また、尊敬する湯浅先生と憧れの味方さんのお二人をお迎えできるとあって、私は二つ返事で、「どうぞお使いください。」と返事をミラノから出しました。まさか、それがどんどんと膨らんで、いくつもの輪が触れ合って、32名もの方々をお迎えすることになるとも思わずに。

 味方さんは昨日も颯爽と羽織袴でおいでになりました。そして、聞き手の心を完全に掌握して、時にユーモアを交えながら、4月に上演なさる「野宮」を通して能についてのお話をしてくださいました。「野宮」は、源氏物語の六条御息所の、切ない魂の物語です。

 その節々をお謡いになり、立ち上がり、まるで能舞台の上にいるように、扇と共に動かれて、私たち全員を魅了しました。私の居間が、手を伸ばせば触れることができる能舞台となりました。こんな贅沢なことがあっていいものでしょうか。

 風のようにやってきた味方さんが、また風のようにお去りになった後も、その残り香がいつまでも漂っていました。

 全ては湯浅先生との偶然の出会いから始まったことです。そして昨日のカメラマンはあの時の、ナショナルジオグラフィクのカメラマンをしていた風間さんでした。実に4年半ぶりの再会でした。そして輪が広がったお客様の中には、憲法学の権威、総合人間学会の名誉会長、小林直樹先生の姿もありました。

 湯浅先生と小林先生の、怒りと赦しについての即興の対話なども混じり、まさに「響き合い」のひと時でした。味方さんのお話から感じ入ったことなどは、また、機をあらためてお伝えできたらと思います。人生の素晴らしいワンダーであり、ギフトでした。
----------------------------------------------------------------------------
グローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
3月9日(水):ニュージーランドの巨大ウナギ
3月10日(木)予告:鰻はやっぱりこうでなきゃ
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:59| Comment(0) | マイワーク

2011年01月22日

土壇場力で迎える明日

 RIMG3941.JPGRIMG3938.JPGRIMG3942.JPG
 月に一度、いえ、最近では二月おきになることも多くなってしまったのですが、てんてこ舞いになる日があります。その様たるや文字通りすさまじい「てんてこ舞い」です。それが「グローバルキッチン」初回の前日です。

 階段を上ったり下りたりして、仕事部屋からキッチンへ、キッチンからリビングへとバタバタ数え切れないほどの移動を繰り返し、掃除をし、せっせと資料を作り、次から次へと人数分の印刷をし、長いリストを片手に買い物に駆け回り、テーブルを作ります。イメージに合った花が見つからなければ花屋の梯子をします。

 要するに、いかに土壇場まで何にもしてないかということ。とは言え、名誉のために弁明すれば、頭の中ではちゃんと考えているのです。これは何もグローバルキッチンに限ったことではありません。わかっちゃいるけど止められない「土壇場集中型」なのです。

 ここが私とパートナーとの一番の違いです。彼は早々と準備をし、「えっ、そんなにのんびりしていて大丈夫なの?」と、私を心配させるぐらいに「先に片付けちゃえ型」なのです。そんな余裕のある姿を見るたびに、ひたすら我が身を反省するのですけれど、こればかりは持って生まれた性癖とでもいうのでしょうか、なかなか路線変更をすることができません。「いよいよ間に合わなかったら眠る時間を削ればいいだけの話」などと思うところが、まさに困った天然性能天気。

 その裏には、「いつだって土壇場力でちゃんとできてきたではないの。」と言う経験則があってのことなのですけれど、これは冷静に考えればかなりリスキーです。今日だって、一気に進めるために他の予定を入れずに、丸一日を土壇場力発揮のために空けておいたのですが、もし予定外の急用でも起こってしまったらいったいどうなってしまったというのでしょう。

 今月のテーマは「地中海ダイエットとアンチエージング」。いずれまた別の機会にお話しますけれど、実はこれ、とてもタイムリーなトピックなのです。何たって、「地中海ダイエット」は、昨年11月半ばにナイロビで開催されたユネスコの会議で、「無形文化遺産」に登録されたばかりなのですから。

 そんな華やかなことになるとも知らず、長年関心を持っていましたので、手元にはたくさんの関連書籍があります。今回はこれらをかなり読み込みました。加えてイタリア生活の間に資料を集め、インタビューをしてきました。偶然にも、親友のトゥーリオが、この件でのイタリア政府代表だったこともあって、貴重な裏話もたくさん聞けました。というわけで、今回作った配布資料はいつもの3倍。明日から始まる1月の「グローバルキッチン」はかなり面白くなりそうです。

 何箇所もまわって、ぬかりなくリスト通りに買い物をしてきたはずなのに、やっぱりドジをしてしまいました。パンとコーヒー用のクリームを買い忘れてしまったのです。もう一度出るには遅すぎる時間です。そんなところにアシスタントのカズコさんから「大丈夫ですかあ?何か買い足す物でもあります?」

 長年の付き合いのカズコさん、さすがに私の至らぬ所をよくわかっています。早速、明朝、こちらに来てもらう途中で、忘れ物の買い足しを頼みました。

 ワインのセレクションを安心して任せているアケミさんからは、「夜遅くなりますけれど、今日お持ちになったワインの説明書きを郵便受けに入れておきますからね。」

 ありました、ありました。封筒に入って、きちんと人数分作ってくれた説明書きが、、、

 こんなに出たり入ったりになると、期間限定東京暮らしは、公私共々色々なことがいっぺんに詰め込まれて、かなり忙しい日々となります。そんな中で「グローバルキッチン」の継続について思い悩むこともありましたが、カズコさんやアケミさんを始めたくさんの仲間たちに助けられてここまで育ってきたことを思えば、これはもう私だけのものではありません。みんなのものです。ありがたいことにいつだって満員御礼のこの広場を、一緒に育てていかねばなりません。

 ようやくあらかたの準備が整いました。深夜の暗闇の中でテーブルがひっそりとお客様を待っています。頑張ります!
――――――――――――――――――――――――――
グローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku (土日閉店)
1月21日(金):楽しいですね、香り付きオリーブオイル
1月20日(木):マイブレックファーストメモリー 2

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:59| Comment(0) | マイワーク

2011年01月20日

秘すれば花 でも待ちきれなくて、、、

 RIMG3911.JPGRIMG3912.JPG
 3年以上も前のこと、某新聞社のウェブサイトで団塊世代の人達向けのコラムを持っていたことがあります。不定期に書いていましたが、確か最後の回はNo.65でした。このNo.33(2007年10月)にも、実は昨日登場した宿場の拓ちゃんが出てきます。

 タイトルは「男女の品格〜秘すれば花」

 遠過ぎず近すぎず、最適な距離感を保つ、口数少ない「いい男たち」の品格について書いたものなのですけれど、そこに登場している3人の男たちの一人が拓ちゃんでした。となれば、「あとの二人は?」ということになりますけれど、一人は事あるごとに駆け込んでいる歯医者の永山先生、そしてもうお一方が、能役者の味方玄(みかたしずか)さんでした。

 味方さんは、人間国宝、片山幽雪さんの高弟で、観世流を背負う若手のホープ。数々の賞を受賞なさり、「テアトル・ノウ」を主宰する方です。縁あって、銀座で開催していた講座に来ていただいたのが2007年6月のことでした。

 羽織・袴のすっくとした涼やかな立ち姿で、聞き手との絶妙な距離感を保ちつつ、多くを語らぬながらも心に響く言葉をたくさん残して、薫風のように去って行かれました。品格のある方でした。今でも深く印象に残っているのはこんな言葉です。

「世阿弥も『風姿花伝』の中で言っています。『秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず。』人の心を魅了するには全てを見せてはいけないのです。ほんの少しにしてあとは相手の想像力に訴えなければなりません。」

 これこそが味方玄という能役者の姿勢でした。そんな姿勢にすっかり魅了された私は、またいつかお会いしたい、そしてもっともっと話を聞いてみたいと思うようになりました。けれども、それはまさに心のうちに秘めたる思い、誰に語ったこともありません。

 それが何としたことでしょう。冬のミラノでびっくりするようなメールをもらったのです。

「味方玄さんが上京なさるのに合わせて、舞台と客席ではない場所で、味方さんと向き合い、話を聞きながら、日本文化の本質を肌で感じる試みを企画したいのですが、適当な場所が見つかりません。ナオミさんの家をお借りできないでしょうか。」

 その後、東京との間で何通ものメールが交わされ、日程の再調整がなされ、湯浅裕子先生の「能と聖書の響き合い」のグループと、私の「グローバルキッチン」のグループを1つの輪にして、味方さんを囲むという形になりました。ギュウギュウ詰めのラッシュアワー状態を厭わなければ、30名ぐらいなら行けるはずです。

 「能と聖書の響き合い」は、「異文化同士の魂の響き合いを探る」というのが目的です。そして私の「グローバルキッチン」も、「思い込みや偏見や狭量による境を取り払う」ことを目指しています。私の家でこの二つの輪が重なって、大きな輪になり、その真ん中で味方玄さんが、能楽を語り、ひと節を謡ってくださるなんて、そんな響き合いはあまりに荒唐無稽で、想像だにできないことでした。こんな風に秘めたる思いが形になるなんて、本当に不思議なめぐり合わせです。

 本当はこの情報、今週末から開催されるグローバルキッチンで皆様にお伝えするまでは黙っているつもりでした。けれども何だかソワソワ。秘すれば花、わかってはいても待ちきれなくて、、、、
――――――――――――――――――――――――――
グローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
1月21日(金)予告:楽しいですね、香り付きオリーブオイル
1月20日(木):マイブレックファーストメモリー 2

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:59| Comment(0) | マイワーク

2010年11月27日

問い続けることに意味がある

 RIMG2105.JPGRIMG2108.JPG
 1月に最初の企画案が俎上に上り、2月初めに講演候補者が決まり、すぐに交渉を開始して、2月の半ばには確定し、以来今日に至るまで、いったいどれだけの数のメールのやりとりがあったでことでしょうか。

 美しく晴れ渡った11月最後の土曜日、丘の上の長い伝統を誇る美しい学園で、長い間準備を進めてきた講演会が開催されました。私の役割は、講演の企画から開催までのコーディネーターです。今回のミラノからの帰国は、これに合わせて立てられました。

 動く先生にお会いしたのは何年ぶりのことでしょう。その活躍はよく知ってはいても、そしてその著書を出るたびに読み、幾多のメールを交わしてはいても、テレビをほとんど見ない私にとって、最近の先生のお姿はいつだって静止した写真でしかありませんでした。

 同じ職場にいたあの頃だって十分に素敵でしたけれど、久しぶりにお目にかかった先生は、年という衣を重ねて、匂い立つような、圧倒的な存在感に包まれていました。

 公私ともに、素晴らしい方々にお会いする機会に恵まれてはいますけれど、まるで最高のワインに酔うように、会った後でこんなにも長く馥郁とした余韻を漂わせるなんて、そうそうあることではありません。

 13時に始まった「新・君たちはどう生きるか」という姜尚中(かんさんじゅん)先生の講演は、優に500名を超すご父母の方々を集めました。ちなみに先生は私と同じ年の生まれです。

 「60になって思うこと。若い人たちはいったいこれからどうなるのか。
 人はどの親から生まれるかを選ぶことも、どの時代、どの国や社会に生まれるかを選ぶこともできない。それでも人はこの世の中に下り立つ。

 明日は間違いなく今日よりはよいはず。
 今日は明らかに昨日よりはよかった。
 そういう時代を通ってきた僕と君とは年齢もちがう、時代もちがう。
 けれども君の悩んでいる姿は昔の僕と同じ。

 そんな思いを残していきたい。
 2年ぐらいをかけて、残る思いを七転八倒してでも書こうと思っている。

 何のために生きるのか。
 答はない。けれども、問いそのものが無意味かと言えば決してそうではない。
 問い続けることに意味がある。
 答はなくとも、問い続けることを止めないこと。それが大事。
 悩み、問い続けることが生きていることの証だから。」

 これは姜先生の言葉のごく一部です。

 講演後のサイン会で、著書を手にした長蛇の列の人たちの1人1人に言葉をかけ、サインをし、固い握手をする先生の姿を見ながら考えていました。「人はあらかじめ役割を定められて、頭上に輝き、人々の足元を照らす『スター=星』になるのだろうか。」

 全てが終わって、並んで歩きながら、小さな声でささやきました。

「先生、私もご一緒に還暦になりました。残したい思いもたくさんあります。
そして、相変わらず答のないことを問い続けていますよ。」

 いい仕事でした。
-----------------------------------------------------------------
グローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 土日閉店
11月26日(金):クリスマスにいかが?手作りレバーパテ
11月25日(木):野菜画廊
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:58| Comment(0) | マイワーク

2010年11月20日

自然体の呼吸法で

 RIMG1900.JPGRIMG1898.JPGRIMG1935.JPGRIMG1940.JPGRIMG1928.JPGRIMG1896.JPG
 ミラノに戻る前に、明日から3回、グローバルキッチンを開催します。もちろんメニューは秋のミラノから持ち帰った、前菜からデザートまでの7品。

 何でもそうですけれど、何て言ったって初回の前が一番大変です。土壇場まで試作を繰り返すものもあったりして、レシピを書くのも一苦労です。プリンターはガタゴトと膨大な資料を印刷し続け、あちこちと駆け巡っては、車の中が買い物袋で一杯になります。1回10人分の食材というのはなかなか迫力があります。大掃除だってしなくてはなりません。

 これさえ乗り越えれば、一通りのマニュアルができて、2回目、3回目はずっと楽になります。

 いつもながらのそんなドタバタを何とか乗り切ることができるのは、「お助け部隊」のおかげです。

 「こんな国のこんな料理に合うワインを、このぐらいの予算でお願い」とさえ言えば、地元の店のワインのプロにして、友人のアケミさんが的確に赤白のワインを選んでくれます。

 「こんな色合いで、こんな感じの花を」とか、「今回は枝物、実のついた物で」とでも言えば、やはり地元の花屋の友のタカハシさんが、市場に行って、イメージにピッタリの物を選んできてくれます。

 当日には、いつだって朝早くカズコさんが来てくれて、せっせと手際よく材料を並べたり、資料を綴じたり、私が気がつかなかった部分のお掃除までしてくれます。

 不器用で、大雑把な私は、いつも「ありがとう、ありがとう」と呟きながら、お返しに、私にしかできないことを一生懸命頑張るようにしています。何もかも1人で背負い込んで息切れをするのではなく、自分の駄目なところは素直に認め、頼るところは素直に頼り、助けてもらえるところは素直に助けてもらう、、、、そんな自然体の呼吸法が少しずつ身についてきました。

 テーブルセッティングが終わりました。花もいけ終わりました。
 まあるいお月様が美しく輝く静かな夜が更けていきます。
-----------------------------------------------------------------
グローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 土日閉店
11月19日(金):それにしてもチーズって高すぎません?
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:58| Comment(0) | マイワーク

2010年11月19日

一袋の温泉の素

RIMG1908.JPGRIMG1855.JPG 
 一昨日の朝日新聞の第二面に、特大サイズでデカデカと横書きされた4つの漢字「大卒漂流」。
 来春卒業予定の大学生の就職内定率が、10月1日の時点で過去最低の57.6%まで落ち込んで、就職活動が再び「氷河期」に突入した、と言うのです。

 そして今夜のNHK番組、「特報首都圏」も、「大学生就職内定率 過去最低 いま何が必要なのか?」と題して、来春の卒業を前に、いまだに就職活動中の学生たちの現状が紹介されました。

 実はテレビはあっても、ほとんど見ません。けれども、今日は、机にしっかりと、「19時30分NHK」と書いたポストイットを貼りました。そして、今か今かと待ちながら、ソワソワとしながら、5分前にはビール缶を握り締めて、テレビの前に陣取りました。

 なぜならもちろん、これは長年大学で学生たちの就職支援を行ってきたわが身には、人ごとではすませられぬ由々しき関心と問題意識があるからです。加えて、番組予定ページにこう書かれていたからです。

 ゲスト出演予定:小島貴子さん(立教大学大学院ビジネスデザイン研究科准教授)

 敬愛する貴子さんが出演する番組ならば、なおさら見逃すわけにはまいりません。
 いまだ半数の学生が未内定だという埼玉県のある私大の様子が映し出され、求人倍率が1.28倍という数字でありながらもこうした背景には、学生たちの大手志向と、企業側の厳選採用があるという説明がなされました。

 インタビュアーの質問に貴子さんが答えます。

「学生は早く内定がほしいという精神的焦りがある。企業はいい学生がほしい、と言いながらも、『ではいい学生とは?』という具体的な中味が伝わっていない。」と。

 まだまだ続く珠玉の言葉に、私は缶ビールを片手に、ひたすら「そうだ、そうだ!」とエールを送り続けていたのでした(笑)。失敗経験がない学生にとっては、就活で初めての挫折を経験し、まるで社会全体から否定されたようになってしまう、と言うのは、私もこれまで数多く見てきたケースです。

 そして、貴子さんが言うように、就職試験と言うのは点数化をされないだけに、どこが悪かったのかが自分ではなかなかわからないのです。私が今年、ガイダンスをしてきた学生たちも、最終面接で、社長から「君のような人材が入社してくれると嬉しいねえ。」とまで言われ、喜んで内定通知を待っていたら、結果は不採用。何を信じていいかわからない、と、一時はかなり重症の大人不信に陥りました。

 私自身、大学生を取り巻く今の就職環境が決して望ましいものとは思いません。本来は勉強をするための大学で、早くから就職活動に取り組まなければならない状況は、明らかに間違っています。就職活動、略してシューカツの早期化、長期化への警鐘は、私が大学の就職室長をしていた7年も前にすでに鳴らされていました。

 ただ、そんな中でも、もし救いがあるとすれば、苦労は必ず力として蓄えられていくことです。

 番組の中でも、卒業寸前に、ある福祉施設に内定して働き始めた女子が、こんな言葉を語っていました。

 「落ち続けたことが自分を鍛えてくれました。いろいろ吸収できる時、生まれ変わる時だったと思います。」

 貴子さんが最後に語った、「知ってほしい3つの点」も、まさにその通りです。

@ 学生にとっては、知らない企業を受けることが不安である。
A 情報と事実と真実は違う。活動をしていくにつれていろいろな事実に出会う。
情報だけを鵜呑みにして真実を捉えないと、せっかく入社しても早期離職に結びつく。
B 若者は「きっかけ」で伸びる。何で落ちたかわからない採用試験では、それがない。

 ところで、今週初めに私がガイダンスをしたのは、せっかく希望の会社に内定をしながら、単位不足で卒業を1年延期しなければならなくなった男子学生でした。当然のことながら内定はキャンセル、就職活動も再び1から出直しです。

 私が話を聴いていくうちに、心がほぐされたのか、それまで強気そうに見えた彼が、突然泣き始めました。そして、こんなことを言ったのです。

 「もう1年、学費の工面をさせることを思うと、親に申し訳なくてたまらない。」と。

 ひとしきり泣いた後で、こう言いました。「自分はこの経験を無駄にはしません。自分の甘さも弱さもよくわかりました。もう一度、しっかりと、もっとしっかりと、シューカツに取り組んでみます。」

 そして、ガイダンスが終わったあとに、私にある物を差し出しました。

 「帯状疱疹について調べてみました。からだを温めるといいそうです。
 これ、お風呂に入れてください。とっても温まります。」

 温泉の素でした。たった一袋の温泉の素でしたけれど、本当に嬉しくて、その晩、私はいつもの2倍もゆっくりとお風呂で温まったのでした。そして思いました。

 「大丈夫、この子は大丈夫。挫折を力に変えて、きっと真実をとらえることができるだろう。」と。
-----------------------------------------------------------------
グローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 土日閉店
11月19日(金):それにしてもチーズって高すぎません?
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:59| Comment(0) | マイワーク

2010年11月14日

きちんと 「いつか」 に向かい合わねば、、、

 RIMG1843.JPGRIMG1844.JPGRIMG1815.JPGRIMG1820.JPG
 今日から東京での仕事が始まりました。午前はオリーブオイルのテイスティングセミナー、そして午後は1月に開講する 「グローバル人材塾」 のための 「海外就職説明会」。

 「グローバル人材塾」 は、私がミラノでノホホンとしている間に、若い人たちが本当に良く頑張ってくれて、写真のような素敵なフライヤーと、とてもわかりやすく書かれた案内書まで作っていてくれました。本日の説明会と体験講座の準備も万端。顧問の私は、ただ行って、初めにちょっと講演をして、あとはもうただただ感心しながら事の成り行きを見ているだけという楽なお役目。あ、もちろん参加者の方々からのご相談はいくつかお受けしましたけれど。

 講演に続く2つの彼らの講義は、なかなかのもの。
 その後、休憩をはさんで、小グループに分かれてのコミュニケーションと英語ディスカッションの体験講座も、傍観していて実に面白いものでした。

 参加した皆さんは、留学から帰ったばかりの方もいれば、後進国でIT技術の指導をしたいという方や、今の会社に満足できずにいる方々や、とにかく香港で働きたい方、恋人のいるロンドンでの仕事に就きたい方など、本当に様々。けれども、この会場に足を運んで来たということ自体が、もうボーダーのない世界へのパスポートを持っているということです。

 私自身もたくさん学ばせてもらいました。

 田村さつきさんの「コミュニケーション体験講座」では、右か左か利き手があるように、心にも利き心があること、そして曖昧な情報の中に置かれた時には、無意識のうちに利き手ならぬ利き心が出ることを教えられました。そして、私は、五感を通じて観察した情報や事実に焦点を置くタイプだと言う事もわかりました。

 若松千枝加さんの「海外就職の基礎知識」では、思わずドキッとする言葉を聞いてしまいました。人には、「今年行きます。」 あるいは 「来年○月頃に行きます。」 と言う人と、「いつか行きます。」 と言う人がいるということ。後者の人たちの大半は、5年立っても同じ事を言っていると言います。

「『いつか』とずっと思い続けているぐらいならやめた方がいい。どうせ行かないんですから。」

 と、爽やかなぐらいにスパッと言い放つ、私よりもずっと若い若松さんの言葉に、「は、はい。おおせの通りです。」とばかりに、心中「いつか」と思い続けていることのある私は、下を向き赤面したのでした。

 そうなんですよね。思い続けているばかりの 「いつか」 はスルリと逃げていきます。
そんな 「いつか」 は、結局は面倒くさくてやりたくないのか、本当は自信がないだけ。
要するに逃げているだけです、たぶん。

やっぱり今度こそ、きちんと私の 「いつか」 に向かい合い、具体的に動き始めなければ、、、
目を覚まさせてもらった日曜日となりました。
-----------------------------------------------------------------
グローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku (土日閉店)
11月15日(月)予告:11月のグローバルキッチンは
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:58| Comment(0) | マイワーク

2010年10月12日

漬物石というお役目

RIMG0495.JPGRIMG0499.JPGRIMG0497.JPG
 大台を越えてからというもの、にわかに増えてきたものがあります。「顧問」 だの、「理事」 だのというお役目を依頼されることです。これはきっと、体重が増えてきたからに違いありません。

 いえ、本当の体重は、食いしん坊の飲み助にもかかわらず、幸いなことに、ここ30年、1キロの増減もないのですが、年齢という体重ばかりは年々と増え続けています。そんな体重増がお役に立つならと、立て続けに2つの依頼をお受けすることにしました。要するに、あれ、あれです、ほら、文鎮、あるいは重し、漬物石(笑)。若い人たちばかりでは、少々、重さが足りないこともあるでしょう?

 漬物石になるためには、もちろん自分なりにルールを設けています。

 それが次世代の若い人たちの夢を叶える活動であること。
 それが営利目的ではないこと。
 それが日本の、あるいは世界のどこかの国の人たちを励ます力になること。
 それが漬物石として少しはお役に立てそうな場であること。

 両者とも、来年早々にはフルに活動を開始することでしょう。目下、若い皆さんが本当に一生懸命頑張っています。ホームページも着々と進められています。時が満ちたら、きちんとこの場でもご紹介させていただきたいと思います。

 そんな折にちょっとフライングですが、できるだけたくさんの皆様に関心を持っていただくお手伝いも漬物石のお役目と、11月に開催される準備ガイダンスのお知らせをさせていただきます。

http://www.asia-internship.net/トップページ/香港就職説明会のお知らせ/

 境がないこと、垣根がないこと、思い込みがないこと、偏見がないこと、、、、、
 そんな「ないことづくし」がグローバル。
 壁の向こうに行くのではなく、壁のないフラットな世界を自由に行き来する力がグローバル。
 
 ミラノでの仕事の打ち合わせに都心へ出かける途中、こんなに素敵な秋を見つけました。先日来の雨に打たれた金木犀が地面を覆い、コスモスが秋風に揺れ、青いサルビアが優しい光を受けています。美しい季節になりました。
 
―――――――――――――――――――――――――
グローバルキッチンお品書き 
http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
10月13日(火)予告:東海岸風マンハッタンクラムチャウダー
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:59| Comment(0) | マイワーク

2010年09月09日

だから女って

P9090581.JPGP9090585.JPG
 朝ブログで 「バタバタしてます。」 と書いたまま、本当にバタバタと一日が過ぎていきました。

 いきなり気温が下がってしのぎやすくなったとは言え、小さな台所に女が9人も入り込んで、バナーを4つもフル稼働させていれば、局所的に猛暑が舞い戻ります。

 女をたった3つ並べただけでも 「かしましい」 のですから、9つも並べたら、そのパワーたるや、その3倍です。もともとが好奇心旺盛で、暑かろうが寒かろうが楽しんじゃいましょ!と言う面々が集まってくるのですから、作って食べるだけですむはずもありません。身の周りの話題から、大きな世界のことにまで、井戸端トークは休む間もありません。共感したり、心揺さぶられたり、笑ったり、しんみりしたり、新しいことを知ったり学んだりしながら、日の移ろいと共に月に一度の時間を過ごします。

 そんな時、決まって誰かが呟きます。
「昼間からおいしいワインなんて飲んじゃって、こんな贅沢な時間過ごしちゃっていいのかしら?」

 そんな女たちが、また、日が暮れる頃には一人また一人と、それぞれに迷いや悩みをかかえる日常の中に戻っていきます。
 
 受験生の母になり、就職活動中の子の母になり、ソムリエの口頭試問を前に猛勉強中の身となり、病気の家族の世話をする者となり、忙しさに身を引き締める仕事人になります。

 一番最後に残ったサツキさんは、塾通いの男の子2人のお母さんにして、ご自分の会社を経営する企業人。二人で並んでビール缶をあけながら、新しくスタートさせる彼女のプロジェクトの概要を聞きました。年季を積んでいる分だけ、若い彼女の力になれる部分もありそうです。

 それまで、キリリとしてビジョンを語っていた彼女が、帰り際に残り物の鰯のパスタや、パプリカのトマト煮や、パンをつめこんだ袋を持たせると、フンワリとしたお母さんの顔になりました。

「助かります!息子たちの夕飯にします!」
 
 そして急ぎ足で立ち去って行きました。

 だから女って素敵なんです。 
 
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:58| Comment(0) | マイワーク

バタバタしてます。

 
 昨日の久方ぶりの雨が、涼しさを運んできたというのに、早朝から汗をかきながら、階段を上ったり下りたりしています。

 もうすぐ皆さんをお迎えするのに、まだ準備が整っていません。
 あわててまた台所に戻ります。

 バタバタの理由はこれです。
 失礼します。また、夜に。

http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 10:40| Comment(0) | マイワーク

2010年07月15日

何が嬉しいかって、、、、、

P7156557.JPGP7156558.JPGP7156565.JPG
南イタリアから帰ってからの3週間、この蒸し暑さの中で、よく遊び、よく学び、そして、実によく働いたものです。

今日、東京で、7月最後の仕事を終えました。
一連の、「グローバルキッチン夏のスペシャルメニュー」、本日の最終回は、「ベジタブルカービング第二回」。小さなカービングナイフ1本で、野菜を切ったり彫ったりしながら、食卓を飾る花を作るタイの伝統工芸です。

もちろんこの不器用な私が先生であるわけがありません。
大学生から70代までそろった生徒さんのうち、私は紛れもなく、一番もたついた劣等生です。
それでも一生懸命やりました。
そして、何とか人参の葉っぱも、大根の花もできるようになりました。一緒に同じものを作るという、まるで小学校の工作のような楽しい時間でした。

機械にさわらなければ、機械のことはわかりません。
物に触れなければ、物のことはわかりません。
そして、人と接しなければ、人のことはわかりません。

私の仕事は長年、人を相手にするものでした。もちろん今だってそうです。
毎年毎年、数え切れないぐらいたくさんの人たちに会っていれば、おのずと身につくある種の感覚があります。アンテナに引っかかってくる何かがあります。

その感覚を頼りに、随分、無謀なこともしてきました。けれども、おおかたの場合は勘が当たりました。たとえば、銀座で毎年数多くの講座の企画をしていた昨年までの4年間には、素晴らしい講師をたくさん発掘できました。

たとえば、こんな具合です。
ある講座の生徒さんの中に、何だかアンテナに引っかかる人がいたとします。
その方と話しているうちに、ますます、「もしかしたらこの方は」
 と言うある種の感覚が働きます。
そんな風にして、生徒さんから講師になった方々がたくさんいらっしゃいます。

「赤毛のアン」 の受講生が 「交渉術」 を教えるようになったり、「銀座学」 の生徒さんが 「マーケティング」 の先生になったり、「英国貴族の実情」 に来ていた方が 「紅茶」 の先生になったり、、、、、
おおかたの場合、皆様、素晴らしい才能を開花させてくれました。

今日の講師に迎えたのも、そんな感覚に響いた方です。初めは、「私が人にものを教えるなんて」 とためらっていたのが、いざ開講が決まってみれば、機会を捉えては教える経験を積み、自分でも何度も何度も練習をし、押しも押されもせぬ素晴らしい講師姿を見せてくれました。

初心者の人参組6名と、二回目の大根組3名のグループの間を行ったり来たりしながら、堂々と、満足度120%の時間を私たちに与えてくれたのです。

「私がものを教えるなんて」 とためらっていた頃とは、まるで別人のように凛として美しい姿に、ナイフを持つ手を止めて、しばし見惚れていました。

教えることによって、大きく成長した彼女をまのあたりに見ながら、つくづく思いました。
「私のアンテナ、まだまだ錆付いていないかも!」と。

何が嬉しいかって、こんな風に、誰かを表舞台に立たせて、その輝きを見ることです。

私の大根は、同級生の中でも一番格好悪く仕上がりましたけれど、とても幸せなひと時となりました。
--------------------------------------------------
グローバルキッチンお品書き
http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku
7月15日(木):男の料理〜想像力と創造力と遊び心
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:59| Comment(0) | マイワーク

2010年07月10日

ギリシャ神話と天の川〜私たちの浪漫遊泳

P7106428.JPGP7106430.JPGP7106448.JPGP7106451.JPGP7106453.JPGP7106460.JPG 
 ふーっ、、、、
 終わりました。ついさっきまで家中がどこもかしこもあんなに賑やかだったのに、今は物音ひとつ聞こえません。

「ギリシャ神話と天の川〜夏空のロマン」は、年齢も性別も関係なく、25名のお客様がお見えになりました。飛び入り参加で、ギリシャ人のお客様もいらしゃったりして、私たちの浪漫遊泳が始まりました。

 天井に次々に星座を写しながら、石本先生のお話を聞くうちに、まだ夏の明るさに華やいでいた下界は次第次第に落ち着いた闇に包まれ始め、居間の電気を全て消してしまえば、もう私たちに見えるのは、夏の美しい夜空だけです。

 オムニバスのように紡ぎだされるエピソード、、、、
 小熊座と大熊座、カシオペア座、さそり座、、、、、
 冥界の王ハーデスとペルセポネ、髪の毛が蛇になってしまったメデューサ、そしてゼウス、ヘラ、アポロン、アルテミスと言ったオリンポスの神々、、、、

 涙あり笑いありの展開に、本当ならば一番熱心な生徒として、特等席に座って天井を見上げながら先生のお話を聞きたかったのに、そこは裏方の悲しさ。皆様に喜んでいただくためには、そんな贅沢は許されません。お飲み物をお配りし、暗い台所でせっせと料理の仕上げをし、それでも聞き逃すまい、見逃すまい、と門前の小僧をしていました。

 25名のお客様はもちろん皆、私の大切な知り合いです。絵を描くことができればさだめしこんな感じになるでしょうか。私が真中にいて、それぞれの皆様が別々に直線で繋がっている25の頂点を持つ25角形です。中には頂点同士がすでに繋がっていて、直線が引けるところもあります。

 正直、楽なことではありません。夜6時半の開演のためには、昨日のうちに買出しをし、今日は早朝から掃除やら、料理やら、音楽の選択やら、ちょうど良い時間にうまく冷えたビールが届くように手配をしたり、講師をお迎えに行ったり、、、、、、友の助けがなければ到底できることではありませんでした。

 でも、25の頂点の間にたくさんの線が引けて、皆さんが終了予定の時間を過ぎてもちっともお帰りになろうとせず、あちこちでいくつもの小さな輪ができて、その小さな輪が華やいで、もう一つの小さな輪と繋がって、最後の最後に残った輪が引き潮のように退けて行くのを見た時に、やっぱりやって良かったと思うのです。

 そんな時、頂点と頂点を繋げることのできた「触媒の喜び」に浸ります。

 ほっと一息ついて、たくさん取り寄せてしまったギリシャワインを静かに飲んでいたら、もうこんなメールが届きました。

 「次回はいつですか?」

 私の浪漫遊泳にお付き合いくださったたくさんの皆様、今日は本当にありがとうございました。素敵な夜でした。
 
 長い人生、一生懸命歩んできて、ようやくこんな贅沢ができるようになりました。

By 池澤ショーエンバウム直美
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:59| Comment(0) | マイワーク

2010年07月06日

1泊2日の仕事合宿

IMG_0001.JPGP7066364.JPG
 仕事合宿とは実は名ばかり? 一日目の夜はひたすらおしゃべり。
 外のレストランに食べに行っている間もおしゃべり。
 帰ってきてからもずっとおしゃべり。

 朝御飯を食べたあたりから、「これじゃあいかん」 とばかりにネジが巻かれて、かなり集中して取り組み始めました。ここらへんから、我々の顔もだいぶ引き締まってきたはずです。2台のコンピュータを並べて、丁々発止の掛け合いをしながら、一人はネットで情報を集め、本をさぐり、一人は打ち込みをしながら、遅いお昼御飯のために台所に立つ頃には、まずまずの形のドラフトができました。

 大きな声では言えません。かと言って文字に書くわけにもいかないのですが、ある大学の学生たちの、ある能力を測るために、先生方が使うあるツールを作っています。「ある」ばかりで、何がなんだかわかりゃしませんね(笑)。今日の第一次ドラフトをもう少し練って、大学側とすり合わせをし、さらに手直しをしたものが、秋の学期に試験的に使われます。

 今の時代、離れた場所にいても、メールのやり取りだけで仕事を進めることもできるようになりました。けれども、どちらかと言えばかなりアナログ的な我々は、やっぱり物理的に至近距離で一気にやってしまう方がずっと効率よく進められるのです。しかも、こっちの方がずっと楽しいのです。

 ということで、何だかんだと言っては 「お泊り合宿」 となってしまいます。いったんここまで来れば、あとはもう会わなくたってメールのやり取りで大丈夫。

 この仕事、一人でかかえていたらかなりのストレスになっていたでしょうが、こうして積年の気心知れた者同士で一緒にやれば、それぞれの得意分野を持ち寄って、短い時間に楽しく進められるばかりか、「うんうん、なるほど、そういう視点があったか」 と、勉強にもなります。 

 前日にはとりすましていたテーブルが、どこから見たって同じ物とは思えないほどに、書類で散らかりましたけれど、一部屋にたくさん並べられた布団の上で、先生に見つからないように夜更けまでおしゃべりをしていたあの頃のように、今回も心浮き立つ 「仕事合宿」 となりました。

 どうせやらなければいけないことならば、楽しんでしまえる仕掛けを作ることです。
--------------------------------
グローバルキッチンお品書き
http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku
7月6日(火):TOFU Quick & Easy8 〜豚ヒレ肉のブルサン風味
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:29| Comment(0) | マイワーク

2010年07月03日

ミニミニ ピグマリオンの喜び

P7036241.JPGP7036263.JPGP7036273.JPGP7036283.JPG 
 夜になってから降り始めた雨が、まだ降り続いています。 
 昼間の太陽も大好きですけれど、雨音を聞きながら過ごす夜も好きです。

 もともと人の出入りが多かった私の東京の居場所が、今年になってからますます人の集まる広場になってきました。南イタリアから戻ってたった1週間半しかたっていないのに、数えてみればもう50名近いお客様をお迎えしました。

 7月最初の土曜日の今日、ちょっと面白い試みをしてみました。初めて外から講師を招いてセミナーを開いてみたのです。プロデュースした私も、生徒の一人になりました。

 午前と午後の2回にわたって開かれたセミナーは、「自分で作る八宝茶」。

 八宝茶ってお聞きになったことがあるでしょうか。
 八は文字通りの8ではなく、「たくさん」 を意味する言葉だそう。

 八宝茶とは、たくさんの素敵なものからブレンドするお茶、しかも自分が気に入ったものを選んで、自分なりの分量で作る 「My only tea」 です。

 先生がお持ちになったのは17種類。竜眼やら、白きくらげ、蓮の実、クコ、ミント、シナモン、サンザシ、杏、生姜、干し葡萄、ナツメ、、、、、、ひときわ色鮮やかなのは、濃いピンクのクローバーのような千日紅の花と、ピンクのバラの蕾、深紅のハイビスカス、黄貢菊(オウケンギク)と呼ばれる黄色い小菊の花々です。

 その一つ一つに様々な効能があります。
 私たちはそんなお話を興味深く聞いて、一つ一つの香りと味と色を確かめた後で、自分が好きなものを好きなだけ入れて、自分だけのお茶を作りました。

 最初に氷砂糖と白茶を5グラム、それから好きなものを10グラム、そんな基本ルールはありますけれど、何をどう選んで、いくつの種類を組み合わせて、それぞれの分量をどうするかは全くの自由です。十人十色とはよく言ったもので、同じお茶ができることはありません。

 解放された五感は、心身を伸びやかにします。みんなの顔に穏やかな微笑みが表れ、誰からともなく呟きます。「何て贅沢なひと時でしょう。」

 昨年の秋、ご一緒に仕事をさせていただいたシャネルのリシャール・コラス社長がおっしゃいました。

「ココ・シャネルはピグマリオンでした。私に引き継がれた使命も 『ピグマリオン』 であることです。」

 ピグマリオンとは、ギリシャ神話に登場するキプロスの王です。自ら彫った彫像に命を吹き込み、現実の人間にしました。ロンドンの下町の貧しい花売り娘であったイライザを貴婦人にしたてあげた「マイフェアレディー」の原作は、バーナード・ショーの 「ピグマリオン」 という戯曲です。

 年を重ねて思うことは、「ピグマリオン」 などとはおこがましいながら、若い世代の才能を見出し、励まし、表舞台に上らせる仕掛け人であり、プロデューサーであることの喜びです。

 今日の講師はまだ30代、堂々と素晴らしい講義をして、湯の中で開く八宝茶のように、才能を開花させてくれました。

 まだまだ続きます。7月前半の私は、嬉しいことに 「ミニミニ ピグマリオン」 です。

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:58| Comment(0) | マイワーク

2010年07月01日

その時がきたらやっぱり?

P3030598.JPG1P4020060.JPG1Ozlt.JPGP4300220.JPG 
 銀座で知り会って、おたがい何となく惹かれ合って、、、、
 などと言うと、まるで 「銀座の恋の物語」のイントロのようですが(笑)。

 そんなリエコさんとは半年ほどの短い間でしたけれど、同じ夢を見ながら、一緒に仕事をしていたことがあります。長身でショートヘアのリエコさんは、まるで宝塚の男役のように颯爽としていて、大股で歩くのが似合うのに、ひとたび着慣れた着物を身にまとえば、艶やかで品の良い色気がにじみ出て、いつだって周りの人たちの目を惹き付けました。

 初めての出会いは、私が企画した講座に一受講生として参加してくれた時でした。長年の経験から、「この人はただものではない」 という勘が働くようになった私のアンテナに、リエコさんはまんまとひっかかりました。

 その後、今度は彼女を講師に迎えて、「銀座のおさんぽで感性をみがく」 という講座を何度か開講してもらいました。着物姿でインカムをつけた講師の後をぞろぞろと歩く集団の姿は、これまた、いつだって周りの人たちの目を釘付けにしました。

 「楽しいこと、やってみましょうよ。」 という私よりも大分若い彼女の言葉に乗せられて(笑)、今から思えば、私たちは随分面白いことをしたものです。一度は切り捨てられる運命にあった桜の枝を山形から運んで、銀座の町を桜で飾りました。「面白いこと」 の周りにはいつの間にやら、たくさんの人が集まり、昨年の3月には 「銀桜まつり」 まで開催してしまったのです。

 「18日から5日間、東京・銀座で 『銀桜まつり』 を開催する。ソメイヨシノの剪定枝で 『宝童稲荷』 と 『ル・カフェ・ドトール銀座 銀座4丁目本店』 にディスプレーを施すほか、銀座4丁目の約50店舗で剪定枝を飾ってもらう。宝童稲荷には約300本を飾り、参拝してくれた人には桜をプレゼントする。ル・カフェ・ドトール銀座では約1200本を使用する。剪定枝は4分咲きほどの状態で生ける予定で、見ごろは20日から22日ごろまで」(山形新聞)

 口先だけの人は山ほどいますけれど、実行力のある人、そして人を乗せてその気にさせてしまう人はそうそういるものではありません。気付けば私も、山形の剪定農家まで行き、銀座で桜の大枝をかついでいました(笑)。

 けれども、私たちは時間の限られた人生で本当に自分らしい仕事をするために、今ではそれぞれの道を歩んでいます。リエコさんはリエコさんらしく、彼女でなくてはできない仕事を、そして私も、今の自分が無理なくできる自分らしい仕事を。

 それでも、今日のように再び出会えば、昔の悪い癖が出て、アイディアが湯水のように湧き出ます。私の家にちょっと預かり物を取りに来たのが2時、冷たいお茶を飲んで、手作りのケーキを食べてコーヒーを2杯飲んで、「冷たいシャンパン開けちゃおうか」 と言う私の言葉に、初めて時計を見たリエコさんが叫びました。「あら、もう4時半!」 

 2011年、銀座でまた面白いお祭があるかもしれません。今はまだ卵の状態ですけれど、彼女なら雛をかえして、鶏にしてしまうかもしれません。

 「ナオミさん、その時が来たらまた力を貸してほしいの。」

 私は 「もちろん!」 と答えながらも、頭のどこかでは、もう桜の枝をかつぐ体力も気力もないことがわかっています。けれども、もしその時が来たら、やっぱりできる形で一枚加わってしまうかもしれません。そしてまた思うのでしょう、「あ、やられた、また乗せられた。」(笑)

 それが彼女のすごいところです。
----------------------------------------------
グローバルキッチンお品書き
http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku
7月1日(木):TOFU Quick & Easy5 〜TOFUカレー
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:57| Comment(0) | マイワーク

2010年06月29日

「良い仕事」4つの条件

P6296171.JPGP6296178.JPGRs[ ` P6296186.JPGP6296180.JPG
 良い仕事をさせていただきました。「良い仕事」 だったと思えるのは、いつも次の全てが叶った時です。

 まず第一に、きちんと準備して、充分に力を発揮できたと思う時
 第二に、皆様に喜んでいただけた時
 第三に、それがとても自分らしい仕事だった時

 中央区民カレッジシニアコース1年生の総合学習は、中央区が60歳以上のシニア世代のために開催している生涯学習です。私が担当したのは、全10回の7回目。毎週の授業でそろそろ疲れてきてもおかしくない頃なのに、平均年齢69歳の66人の 「学生」 たちは実に元気で、実に輝く目をしていました。知識欲も旺盛で、素晴らしい質問が飛び交います。

 今期のコースの幕開けは、私も銀座時代に大変お世話になった岡本哲史先生の 「まちが語る、銀座の歴史と現在」、続いてジャーナリスト、猪狩章さんの 「激動の昭和時代をふりかえり、これからの生き方を考える。」

 その後もさまざまな分野から講師がリレー形式で担当する、まさに総合学習です。私の担当テーマは、「はじめようアンチエイジング〜生活にオリーブオイルを」。

 次回は、映画監督の田中康義さんが 「映画に見る中央区今昔」 をお話しになりますし、最終回は、落語家の橘家蔵之助さんが 「笑いは健康の源」 と題する講演で閉めてくださいます。受講資格が60歳以上なら、私だって資格あり(笑)。次回はぜひ生徒になりたいと思うぐらい、面白そうな講義が勢ぞろい。

 つくづく思いました。何かを知りたい、何かを学びたい、という人たちは概してお若い!

 終わってからもたくさんの皆さんがご挨拶や質問に来てくださいましたが、話していてもとてもお年には見えない方々ばかりでした。やはり知的好奇心こそがアンチエイジングの源でしょうか。

 ありがたいことに、たくさんの嬉しい感想をお寄せいただきましたが、中でもとりわけ嬉しかったのは、

 「オリーブオイルについても大変良い勉強になりましたが、私たちと同じ世代の女性があんな風に世界を飛び回って元気に生き生きとしていることを知ったことが、ものすごく励みになりました。まだまだ楽しいことがたくさんできそうだなあ、と、これからの人生が何だか楽しみに思えてきました。」

 という、ある女性が書かれたものでした。これこそ、オリーブオイルソムリエ&キャリアカウンセラーという珍しい組み合わせの私に与えられた喜びです。

 最後に、講演中にせっせと試食2品を器に盛り分けてくださった、中央区のフジオカさん、マエダさん、アシスタントのカズコさん、ありがとうございました。いつだって、どこだって、素敵なチームワークのおかげで 「良い仕事」 をさせていただけます。

 となると、冒頭の 「良い仕事」 の条件にもう一つ、付け加える必要がありそうですね。
 
 第四に、素敵なチームワークがあること。

 と。

 明日はグローバルキッチン6月の会の最終日。このところ寝不足続きですが、それでも疲れを感じないのは 「4つの条件」 のおかげでしょう。

----------------------------------------------
グローバルキッチンお品書き
http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku
29日(火):TOFU Quick & Easy 〜TOFUのガスパチョ

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:57| Comment(0) | マイワーク

2010年06月02日

資格を持つことの意味

P6024834.JPGP6024835.JPG
 ついこの間までは、毎日のようにガラガラとキャリーバッグを引きずっては都心に出かけていたものでした。早朝のこともあれば、昼近いことも、時には夕方からガラガラと出かけることもありました。

 ご近所の方に会えば、「あら、またご旅行ですか。」 などと言われ、それが夜ならば、「いえ、仕事でちょっと銀座まで」 などと答えては、何やら怪訝な顔をされ、、、、、

 バッグの中にはたくさんの書類と本と、新聞とコンピューター。どこの駅にも必ずしもエスカレーターやエレベーターがあるわけではありません。天下の銀座だって、私が使っていたA9出口は階段だけ。4年の間に随分腕力がつきました。

 そんな日々から開放されて、もうガラガラと引きずられることもなくなった私のキャリーバッグが今日、久しぶりに出動しました。

 オリーブオイルソムリエ ジュニアコースの担当日だったからです。私が教えるのは、第一回目の 「オリーブオイルの起源と歴史〜神話と文明」。初めてのことでもありませんし、このあたりはいわば私の得意分野。悠々と構えていたのですが、、、、、

 復習をしているうちに、付け足したい点や、切り口を変えたい点、削除したい箇所などが次々と出てきました。今まではちっとも気にならなかったことに、妙にひっかかって、文献をあさったり、インターネットで調べ始めたり、あるいは今までどうして見落としていたのだろうという部分に行き当たったり、曖昧なままで誤魔化していた部分が浮上してきたりで、思いのほか準備に時間がかかってしまいました。

 しかも、今度は、「これも話したい、これも見せたい」 などと言う欲がたくさん出てきてしまって、資料が手持ちの鞄には入りきらなくなってしまいました。となれば、昔のようにキャリーバッグを引きずる以外にはありません。

 いい勉強になりました。緊張しながら、もう一度復習をすることで、忘れかけていた知識が蘇ります。新たな知識や、新たな視点も加わります。そんな緊張の根底にあるのは、「資格を持っている以上は恥ずかしいことはできない」 と言うある種の倫理観であり正義感です。

 学生たちからよく聞かれることは、「何かの資格があると就活に有利でしょうか?」
 再就職の大人たちからよく聞かれることも、「今からでも何かの資格を取ったほうがよいでしょうか?」

 その度に思います。資格を取るということは、目的でもゴールでもなく、そこから何をどうするかのスタート地点に過ぎないこと。そして、資格を持つというのは、継続学習の覚悟がなければいけないこと。そんな意味でも、今日のガラガラ外出は、襟を正すための絶好の機会となりました。
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:58| Comment(0) | マイワーク

2010年05月30日

大人の道楽

P5304792.JPGP5304789.JPG
 5月最後の日曜日、今月のグローバルキッチンが終わりました。
 皆さんが洗い物まで済ませてくれて、また何にもなくなった台所に、夜がしんしんと更けていきます。

 移動を繰り返す日々の中で、今私にできることを始めて5ヶ月、人が人を呼び、漣が広がっていきます。そして私はまた、明日から始まる私の新しい季節の中で、次の移動に向けて準備を始めます。
そんなリズムが、やっとからだに馴染み始めました。

 夏の初めには、いくつかの楽しい目論見があります。
 その一つが、「ギリシャ神話と天の川〜夏空のロマン」というものです。
 男たちにも、子供たちにも扉を開いて、週末の夜に遠い世界で遊びます。

 今夜、ナビゲーターのイシモト先生が、プロジェクターをかついでやってきました。

「お部屋に星空ができたらいいなあ」 という私の戯言を真に受けて、試行錯誤を繰り返すために。

 戯言は本当になり、白い壁いっぱいに夏の星座が広がりました。

 企画人も、講師も、スタッフも、
 集まってくれるたくさんのお客さまたちも、
 選りすぐりのギリシャワインを届けてくれる人たちも、
 料理人も、
 みんなが一緒になって、その日のためにワイワイと動き始めました。

 素敵な「大人の道楽」です。
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 11:59| Comment(0) | マイワーク

2010年05月29日

芋づるしていく喜び

P5284709.JPGP5284712.JPGP5284716.JPGP5284714.JPGP5284724.JPG 
 「静」 の昨日とは打って変わって、今日は早朝から深夜まで 「動」 の一日でした。
 当然ながら今は眠気と戦っています。それでも、決して重い疲れではなく、心地良い疲れです。
 
 グローバルキッチン2回目の今日も、笑い声のよく似合う素晴らしい天気となりました。
 8名のお客様のために、8つの包丁をそろえ、8つのまな板をそろえ、8品の料理別に材料を用意するところから一日が始まります。

 初めて会った方々も、一緒に包丁を握れば、せまいキッチンに心が通い、まるで女学校の同窓会のような華やぎの中で、おしゃべりの花が咲きます。カウンターごしにそんな風景を見ていると、「女って何て素敵かしら」 と思います。

 最後のお客様を見送り、急いで駆けつけた先は、一駅となりの行きつけの居酒屋です。
 大学で仕事をしていた時代に恵まれたたくさんの交友の中でも、とりわけ強い絆で結ばれている友が、夫人と一緒に待っている場所です。

 楽しい時間にはいつだって、時計を見たくはありません。
 ちょっと知的で、ちょっとノスタルジックな会話はどうしてこんなに心地よいのでしょうか。気付いてみたら何と5時間も同じ場所に座っていました。

 たくさんの話題が飛び交った中でも、今、ちょっとばかり飲みすぎた頭の中でグルグルと渦をまいているのが、彼の言った 「芋づるしていく喜び」 という言葉でした。

 掘っていって、お芋が見つかった時の喜び。
 それまで関連もなかったものが、繋がっていく、そんな繋がりのワクワクする面白さ。
 結局はそんな発見が一番面白いのではないか、という彼の言葉に触発されて、私たちは夜がふけるのも忘れて、「芋づるしていく喜び」 について語り合いました。

 リベラルアーツというのはまさにそんなことではないだろうか、という結論にまで行き着いたのも、また、「芋づるしていく喜び」 です。

 昼間の 「グローバルキッチン」 でもたくさんの繋がりができました。それまで出会ったこともない人たちが、共通の体験を通して繋がっていく様を見ることも、また私の 「芋づるしていく喜び」 です。

 それにしても、さすがに疲れました。
 良い夢とともに、ぐっすりと眠れそうです。
 おやすみなさい。

----------------------------------------------
グローバルキッチンお品書き
http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku
27日(木):ウィーンの食卓1〜ザウワークラウトのキャラメル煮
28日(金):ウィーンの食卓2〜ソーセージのクネーデル
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 01:47| Comment(0) | マイワーク

2010年05月26日

スミレの花の砂糖漬け

1P3200320.JPG1P5274696.JPG1P5274694.JPG1P5274695.JPG 今から170年近く前のクリスマスイブのこと、南ドイツのババリアで、一人の女の子が生まれました。自然に囲まれた湖畔の宮殿で、兄弟姉妹たちとのびのびと育った少女の名は、エリーザベト。「Sisi(シシ)」 と言う愛称で呼ばれる丸顔の愛らしい娘でした。

 シシが15歳になった頃、隣国オーストリアでは、若い皇帝が花嫁を探していました。その第一候補にあがったのが、シシの姉、ゾフィーでした。裏には、バイエルン王国から皇后を迎えることで、両国の関係を深めようという、大人たちの策略がありました。

 ところが、花嫁候補に会いに行った皇帝は、ゾフィーの妹、たかだか15才の天真爛漫な少女、シシの魔法に一目でとらわれてしまうのです。そして出会った2日後には、婚約をすることとなりました。

 9ヶ月後の4月20日、シシは故郷ババリアを後に、ダニューブ川を船でウィーンへと下りました。船は3日後にウィーンへ到着し、翌日の夕方7時には、1万5千本もの蝋燭の光が揺れる大聖堂で、若き皇帝と、さらに若い皇后の盛大な結婚式がとりおこなわれました。

 堅苦しい宮廷生活は、シシにとってはまるで牢獄でした。
 
 目覚めてみれば、私がいるのは暗い牢獄の中
 両手を鎖に繋がれて、もはや逃れる道もない
 ただ憧れだけが、日ごとに強まり私を苦しめる
 自由よ、私を見捨ててどこへ消え去ったのか


 その後のシシの人生をたどる時、私たちはその深い孤独と、それゆえにこそ、狂信的なほどに自身に向かい合う彼女の姿に心打たれます。

 長女ソフィーは2歳で病死し、ハプスブルク家の跡継ぎ、長男のルドルフは、31歳で自らの命を絶ちます。

 写真や肖像画から見られるように、シシの美貌はきわだっていました。当時のヨーロッパで最も美しい女性の一人とされ、自らもそれを充分に自覚してからは、日常生活の大半の時間はその美貌を守るために費やされました。心に開いた深く暗い穴を埋めるには、そうするしかなかったのでしょう。

 173センチ、45キロ、ウエスト50センチという体型と、踝まで伸びる豊かな髪を保つために、シシはあらゆる努力を惜しみませんでした。暑さ、寒さにかかわらず、たとえどんなに悪天候であろうとも、毎日数時間も早足で散歩をし、日に3回も体重計に乗り、断食をし、いくつもの独特のダイエットで我が身をさいなみます。たとえば、生の仔牛肉や苺の美顔パック、オリーブオイル浴、塩入りの卵白ジュース、、、、まっすぐな姿勢を保つためには、枕は一切使いませんでした。

 その美貌に衰えが見られ始めると、さらに運動を強化し、過酷な絶食療法を続けました。けれども、当然のことながら、これらは逆に働いて、シシの外出の必需品は、顔を隠すための扇子とヴェールと日傘になってしまったのです。

 悲しみを紛らわせるために、シシはしばしば長い旅に出るようになります。そんな避難場所のひとつが、イオニア海に浮かぶギリシャのコルフ島でした。

 一作年の春に私はシシのコルフ島の別荘、「アキレイオン」 を訪れました。彼女が愛したギリシャ神話の英雄、アキレスにちなんだ館です。海を見下ろす人里離れた高台の屋敷は、訪れる人とてまばらに、シシ自らがデザインしたその洗練された風情をいまなお漂わせています。それは洗練さと同時に、凍りつくように孤独な風情でもありました。

 けれどもシシはこの美しい地にすら安住することができませんでした。

 地球の上をただひとり、私はひたすら放浪する
 快楽や人生に背を向けたのも、すでに遠い昔のこと
 心を分かち合う道連れはひとりもなく
 相通ずる魂とも、ついにめぐり合うことはなかった


 1898年、シシは友人を訪ねるために保養先のモントルーからジュネーブに向かいます。そこで、イタリアのアナーキストの手によって暗殺されます。シシの亡骸はウィーンに運ばれ、カプツィーナ墓地に安置されました。エリーザベト、61歳の時のことです。

 その悲劇的な最期によってシシは不滅の人となりました。「シシ伝説」 は今もなおウィーンの町のあちこちで語り継がれています。

 后妃エリーザベト、シシが愛したものはスミレの花の砂糖漬けでした。今でも、当時と同じ製法で作られたものが、「ゲルストナー」 と 「デーメル」 の2つのカフェで手に入ります。

 今日のグローバルキッチンでは、そんなエリーザベトの生涯を皆さんとたどりながら、お食事の後に、先月 「デーメル」 で買ってきた 「スミレの花の砂糖漬け」 を口に含みました。砂糖がとけ出す頃に、えもいわれぬ香が広がります。

 江國 香織さんの詩集、「すみれの花の砂糖づけ」の最初の詩はこんな三行で始まっています。 

「すみれの花の砂糖づけをたべると
 わたしはたちまち少女にもどる
 だれのものでもなかったあたし」

 シシも同じ思いで、この美しいお菓子を一粒ずつ口に運んでいたのでしょうか。

----------------------------------------------
グローバルキッチンお品書き
http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku
26日(水):本日開店!「ウィーンの食卓」
25日(木):ウィーンの食卓1〜ザウワークラウトのキャラメル煮
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:59| Comment(0) | マイワーク

2010年05月25日

揺ら揺らと歩き続けて

P5254631.JPGP5254633.JPGP5254636.JPGP5254640.JPG 
 今週はお料理週間。明日から一日おきに3回、「グローバルキッチン」 という集まり=広場を開催します。初日の前はいつもてんやわんや。今日も朝から、何度となく出たり入ったりしては準備に大忙しでした。

 食材を揃えたり、テーブルコーディネイトをしたり、花をいけたり、もちろん大掃除も。
 そんな 「動」 の仕事と平行して、レシピを書いたり、本を読んで調べたり、テーマ関連の資料を作ったりという 「静」 の作業があります。

 5月のテーマは、「ウィーンの食卓〜后妃エリーザベトの物語」 です。
 先月のウィーン滞在が、火山灰騒動のせいで予定よりも長くなった分、しっかり食べ、しっかりレシピを集めてきました。まさに塞翁が馬。

 人様の前でしゃべるからには、いいかげんなことはできません。
 今回もハプスブルク家やエリーザベトについて書かれた本を読みながら、物語を組み立てていきました。

 初めは、めんどうくさかったのが、気付いてみればけっこう夢中になっていて、今まで知らなかったことを随分と学びました。いつも思うことですが、教えるということは、実は学ぶこと。
1月から始めたこの会のおかげで、私の世界も少しずつ広がっています

 とはいえ、直前はいつだって不安です。
 おずおずと始めた1月から、2月、3月、4月と、次第に流れも掴みどころもわかり始め、終わった後には達成感と満足感を得られるようにもなりました。

 けれども、だからこそ不安なのです。
「今度もうまくいくだろうか。いえ、そうとは限らない。先回はたまたまうまくいっただけ。」
 そんなマイナス思考にとらわれて不安がますます増すかと思えば、

「大丈夫。この前あれだけうまくできたのだから、今度だってできるはず。」
という成功体験をなぞりながらのプラス思考に救われる、そんな揺らぎの中にいます。

 まあ、やるしかありません。
 自信や慢心で突っ走るよりは、こうして揺ら揺ら揺れながら歩いていくほうが、案外良い所に行き着いたりするものです。

 揺らぎながらもやっぱり思います。
 失敗体験をなぞるよりは成功体験の思い出を!
 つらい思い出を引っ張り出すよりは、幸せな思い出を!

 そうして私はまた揺ら揺らと歩き続けます。

----------------------------------------------
グローバルキッチンお品書き
http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku
24日(月):初夏の週末〜土曜日の昼はバーベキュー!
25日(火):初夏の週末〜日曜日の朝は、、、(涙)
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:59| Comment(0) | マイワーク

2010年05月24日

放牧の距離感

P5184547.JPGP5184546.JPG
「こんばんは。遅くに失礼いたします。
今日■■の内定を頂きました。どうかな?と思うところはありますが、働ける会社があることは幸せですよね。人事の方にはこれまでの面接を省みて、コミュニケーション能力が高いと言われたそうです。いろいろご心配をおかけいたしました。ありがとうございました。ほっとしました。取り急ぎご報告まで。」

 先日、深夜にこんなメールが届きました。
 就職活動中の学生からではありません。そのお母様からです。

 その翌日、今度はその娘さんから、やはり深夜にメールが届きました。出だしの一行がよく似ています。

「夜分遅くにすいません。母からお聞きのこととは思いますが、■■から内定をいただきました。
6次まで面接があり、なかなかハードな部分もありましたし、5月半ばでとても焦り、精神的に辛い中、内定を得ることができ安心感が一気にこみ上げてきました。
就活と真剣に向き合いはじめてから8ヶ月、行き詰まった時はもちろんのこと、精神的につらい時も励ましていただき、本当にありがとうございました。ここまで来ることができたのも回りの方々に恵まれたおかげ。辛かったけれども良い就活ができたと感謝しています。」

 学生の就職に関わる仕事をしていると、往々にして、保護者の方々と話す機会があります。このお嬢さんの就職ガイダンスを頼まれたのも、お母様からでした。遠く地方の都市から突然電話があり、「娘を東京に行かせますので会ってやってくれますか。」 などと、父親が言ってくることもあります。

 親であれば子供の将来が気になるのは当然のことです。東京都内のある私立大学で、3年生の保護者を対象に就職説明会を開催したら、学生対象に行った説明会よりも、ご父母の参加者の方が多かった、などという話だってあるぐらいです。

 大雑把に言って、親にも2つのタイプがあるように思います。一つは、橋渡しだけをしてあとは子供に任せるタイプ。そしてもう一つは、逐一子供の状況を把握していたいタイプ。あるいは自分の価値観を子供に押し付けるタイプ。

 極端な例をあげれば、「うちの子はA社が第一志望なのですが、一部上場の会社の方がいいに決まっています。先生からB社を受けるように説得してください。」 などと言ってくる親御さんもいらっしゃいます。

 さらに大雑把を承知で言えば、実は、良い就職活動ができ、良い着地ができるのは、おおかたの場合、前者のケースです。就職活動に限らず、親子の間で大切なのは、適度な間の取り方=距離感です。放牧状態にしているように見えて、決して無関心ではなく、壊れた柵の隙間からとんでもない方向に行こうとする羊に道を聞かれれば、その時だけは、大人の智恵と優しさで真摯に誘導してあげる、、、、、、そんな 「介入はしないけれど、見守っている」 間の取り方ができるかどうかが、とても大切なことだと思います。

 相次いで深夜の報告をしてきたミチコさん親子は、まさにそんな素敵な関係でした。昨年秋に娘さんの就職指導を頼みにきて以来、ミチコさんとは何度もお会いしましたが、お母様とはほとんど交信もありませんでした。けれども、一度だけこんなご連絡をいただいたことがあります。

「今日は△△銀行と○○の最終だったようです。△△は1次に受かり明日2次面接に行くと言ってます。昨日はひどく落ち込み泣いていたようでどうしたらよいかわかりませんでしたので、ほっときました。つくづくO型の母親だと実感しました。」

 このメールを拝見して、私は本当に嬉しくなりました。まさに 「介入せずに見守る」 という姿勢だったからです。

 もう一人、ユキコさんのお母様も本当に素敵な方です。これもつい先日、お母様からいただいたメールです。

「娘の友人たちが、就活で落ちまくって、かなり追い詰められた状況にいます。そんな折に、親から心ない事を言われて本当に落ち込んでしまっている子もいたりして、、、、
『それじゃ、みんな我が家へいらっしゃい!!』 と、タイ料理パーティをしました。
久しぶりに、美味しいものを食べた〜と皆、大ハシャギで、コスコで買った馬鹿でかいケーキまで平らげてくれました。」

 ユキコさんも、最終面接で何度も駄目になり、泣きじゃくる晩もあったと言いますが、お母様はたった一言。

「あなた、特別に私の隣で寝てもいいわよ。」 と、おたがい就職のことなど何にも話さずに、枕を持ってやって来た娘さんと一緒に眠ったそうです。

 ユキコさんから嬉しい報告が来る日も近いことでしょう。
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:49| Comment(0) | マイワーク

2010年05月21日

高く、もっと高く?

P5204572.JPGP5204576.JPGP5204574.JPGP5204577.JPG 
 昨日とはうってかわって、初夏のような一日が始まりました。
 昨日、靴の中まで雨で濡らして、銀座の街を歩きました。
 つま先が濡れる感覚も、ぶらぶらと銀座を歩く感覚も、久しぶりのことでした。

 銀座で仕事をしていた日々に、毎朝毎晩、足を留めては眺めていた場所があります。
 中央通りに面した 「ミキモトの庭」 です。春には桜が咲き、初夏には紫陽花、夏にはいくつもの風鈴が涼しい音を運び、秋にはコスモスが風に揺れました。11月に入れば、毎年大きな樅の木が植えられて、イルミネーションの灯りが道行く人たちを照らします。

 真珠が彩るウインドーを通して、傘をさす人々と行き来する車が見えます。銀座はやはり大人の町、美しい町です。

 昨年末に最後の仕事を終えるまでの4年間、そんな銀座で大人たちのための講座が開講されていました。延べにして数えれば250を越えます。企画をし、交渉をし、作り上げたものたちです。蕾のままで終わってしまったものもあれば、可憐な花を咲かせてくれたもの、驚くほどに大輪の花を開き、実を結んだものもあります。そんな花々のひとつひとつを手に載せて、こんな初夏の日には思い出をなぞっていきたいぐらいです。

 それらの中には、場所の閉鎖とともに終わりにしてしまうには、惜しいものがたくさんありました。いくつかは運営をある社団法人が受け継いでくださいました。そしていくつかは、受講生主導という形に変わって、今でも場所を変えて継続されています。私の最後の役目は、それらのスムーズな橋渡しと、その後の滑り出しを見届けることでした。

 昨日、銀座教会で開講された講座は、後者のタイプです。もっと学びたいという受講生たちが月に1度、自主的に集まり、部屋を探し、連絡をしあい、資料をそろえ、お金の出入りの管理をしています。3月も4月もたまたま外に出ていたものですから、昨日、5月の回に、1受講生として、初めて皆さんと一緒に勉強をさせていただきました。

 先生は毎月京都からおいでくださる、敬愛する湯浅裕子先生。
 講座の主題は、「能と聖書の響き合い」

 驚いたことに、いつのまにやら新しい方々の顔も増え、昨日の出席者は男性3人、女性8人。

「今日はたまたま来られなかった人たちもいるんですよ。」 というお世話役の方の言葉に、蒔かれた種が、芽生え、葉をつけ、蕾を抱き、小さな花を開き、移植された後もまた、大きく成長し続けていることを知り、心の奥が熱くなりました。

 昨日の対話のテーマは 「バベルの塔」。
 他を圧するような天まで届く塔を建てよう、という、人間の自己顕示欲や権力欲、権威欲についてです。これを同じテーマを持つ能の 「善界」 と交差させ、響き合わせます。

 それにしても、驚きました。
 現在、世界一高い建物は、昨年完成したドバイの 「ブルジュ・ドバイ」 の829メートル!
 話題のスカイツリー、634メートルよりもまだ200メートル近く高いのです。

 しかも、もっと驚いたことには、何と、同じくドバイに計画中の高層ビルは2500メートルの予定だそうですから、こうなるともうあまりの高さに想像もできません。

 高く、もっと高く、、、、
 これがバベルの塔の時代から変わらぬ人間の 「願望」 なのでしょうか。

 私、閉所恐怖症に加えて、実は軽度の高所恐怖症でもあります。
 フィレンツェのドゥオモの螺旋階段を上ったてっぺんで、足がすくんでからだが凍りつきました。イスタンブールのガラタ塔でも、眼下に開けた風景にふるえました。性懲りもなく、先月ウイーンの教会の上の上までエレベーターで昇ってみたら、やっぱり真っ青になりました。

 以来、高いところには上るまい、と心を決めました。
 ですからバベルの塔も、ドバイの塔も、絶対に上りません。
 ましてや建てようなどとは夢にも思いません(笑)。

---------------------------------------------
今週のグローバルキッチンお品書き
http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku
17日(月):香味屋ふたたび
18日(火):超特急デザート〜リンゴとクルミのタルト 
19日(水):もっとレモンを!
20日(木):北海道 野菜のディップ
21日(金):オーストリアの打合せはベトナムで
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 11:09| Comment(0) | マイワーク

2010年04月30日

袖すりあうも多少の縁

Rs[ ` 1P4294132.JPGRs[1 ` P4294133.JPGRs[ ` 1P4294113.JPG1P4264057.JPG

 ご無沙汰しました。と言っても一日あいてしまっただけなのですけれど、「毎日読んでます。」 などと言うお言葉を頂戴すると、やっぱり後ろめたいです(笑)。すみません。

 ゴールデンウイークの幕開けの昨日は、5月を先取りしたような素晴らしい陽気に恵まれました。ついこの間までピンク一色に覆われていた居間の窓が、すっかり新緑の緑に変わりました。東京は、嬉しいことに、この先もGWの間、ずっとこんなお天気が続きそうです。

 昨日は 「グローバルキッチン4月の会〜春の地中海のハーブ料理」 の二回目でした。1月以来これで4ヶ月目。だいぶ慣れてきて、手抜きのポイントなどもわかってきたとは言え、それでも前日と当日は大忙しです。

 とりわけ今月は、ウイーンから帰ってすぐの開催ですから、たまった別口の仕事をにらみながら、合間合間に仕事サーフィンをしています。

 しかも昨日は嬉しいトラブル、いえ、嬉しい誤算がありました。
 台所とテーブルのサイズを考えれば、当然ながら 「適正数」 というものがあります。
 それが、昨日はそんな適正数を3人も上回る皆様がおいでになったのです。

 お二人は別のお日にちを予約なさっていたものの、どうしても昨日でなければ駄目になってしまわれた方々。
もうお一人は完全に私のウッカリ。ご予約をいただいていたのに私のリストから完全に抜け落ちていたのです。

「二人でお申込しましたが。」
「あ、あ、そ、そうでしたよね、す、す、すみません。」

と、かなりシドロモドロ状態です。急いで別コーナーにお席をご用意しましたが、どうしてもテーブル組の8名とソファー組の3名のコミュニケーションが成り立ちません。これではまずい!とますますあわてて一計を案じ、結局、デザートに移る前に、くじ引きで席のシャッフルをさせていただきました。

 これを機に、それぞれのエリアが新しい顔合わせとなり、また新たなおしゃべりの花が咲き始めました。これまたグループダイナミックスの面白さです。そんなきっかけを作るのも仕掛け人の醍醐味、そしてそんな様子を見るのもひそかな喜びです。

 調子に乗って、一皿ごとに席替えをしてみたら?などと考えています。

 まさかそんな回転寿司みたいなこと、できるわけもありませんが、「袖ふり合うも多生の縁」、いえ「袖すりあうも多少の縁」。人と人との組み合わせから多少、どころか、大きな素敵な何かが生まれることだってあります。

 札幌出身の38年来の親友が来てくれました。彼女のためにライラックを飾りたくなりました。
 部屋中花の香が漂う4月最後の日です。

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 13:24| Comment(0) | TrackBack(0) | マイワーク

2010年04月28日

引き寄せとコミュニケーションの広場

P4274070.JPGP4274074.JPGP4274079.JPG 
 おかげさまで、4月のグローバルキッチン 「春の地中海のハーブ料理」 第一回も、昨日、楽しく賑やかに終了しました。

 今にして思えば、何があんなにおかしかったのかしら?と思うぐらいに、みんなでお腹の皮がよじれるぐらいに笑い転げたり、はたまたペットを亡くされた方のお話に涙ぐんだりしながら、それでもしっかりと数々の料理をご一緒に味わいました。

 この集まり、毎回必ず同じメンバーになるとは限りません。その時々の組み合わせで、盛り上がり方も異なるのは、同じお料理でも人参の代わりに大根を使えばまた味わいも変わるのと同じ。それこそが 「グループダイナミックス」 の面白さ。メンバー同士が意識的であろうが無意識であろうが影響を与え合い、全体の空気が作られていきます。けれども、もともとが同じことに興味を抱き、自らの意思でその場に居ることを選んだ人たちです。どんな組み合わせになろうとも、楽しく、面白く、快適です。

 そして、びっくりするぐらいに、初対面の人同士の間に何かしらの 「繋がり」 が見つかります。そんな発見で、またみんな盛り上がります。

 昨日もいくつもの発見がありました。

 その一つ、一番驚いたのは、たまたまお隣同士に座ったお二人が、食事の途中のふとした会話から、実は同郷の出であることがわかった時でした。年齢は若干開きがあるものの、小学校も中学校も、そして高校までもが同じ。長野県伊那市にあるその学校は、一学年が 「春、夏、秋、冬、天」 という5クラスに分かれていたそうなのですが、何と、お二方とも 「天組」 だったのです!住んでいた所も目と鼻の先。それなのに、おたがい全く知らないままに何十年かが過ぎて、東京の、世田谷区の一角で、偶然に隣り合わせに座ったのです。

 そんなお二人の一人、私が応援する若きキャリアカウンセラーのサツキさんが、早速、昨夜のブログに書かれています。

「本当にビックリ!これが引き寄せの法則?シンクロニシティというものなのでしょうか!」

 そして嬉しいことには、こんなことまで書いてくださいました。

「私、、、実は、、お料理は苦手だと思い込んでいました。つい先日までは。。。。
直美先生のグローバルキッチンに通う様になって、ちょっと、私という人間の見方も変わりました。コツコツとお野菜を刻む私、、この時間、無心になれて何だかとっても満たされた思いとなります。“今、ここ”に居る充実感を味わう事ができます。春のお野菜、色鮮やかで五感を通して、“今、ここ”を感じます。普段使っていない機能を使い、新たな発見と嫌なことも忘れ夢中になるひと時・・・・お集まりになった8名の皆さまと協働し、こんな素敵な場所でお料理を味合うひと時・・・・毎月1回お邪魔させて頂いているのですが、私のストレス発散の場所なのです。」

 さらに嬉しいことには。。。。。

「『コミュニケーション』 の語源を調べてみると、、、
 ラテン語で、『分かち合う』 『食卓を伴にする』 『役割を分担する』 とありました。 
ココには、そのすべてが存在します。
生きる方向=キャリアという軸を持ちながら、自分自身にあらためて気付いていくという過程。今まで気付かなかった自分自身と出逢う場所。すると、今までは見えなかった周りの様子が見えてきて、感動や驚きを発見できる場所。そんな 「広場」 をご用意して下さる直美先生に今夜も感謝」

 これこそが私がやりたかったこと、コミュニケーションの場、「プラティエス」 (広場) を作ることです。
 ありがとう、サツキさん、また明日も頑張って「広場」を作りますからね。
(サツキさんのHPは、http://ameblo.jp/work-t/
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 13:27| Comment(0) | TrackBack(0) | マイワーク

2010年04月11日

みんな、もう少し

P3183957.JPGP3234222.JPGP3183952.JPG 
 まだ大学3年生だった去年の秋から就職活動を続けている学生たち。
 電車に乗れば、必ず一人や二人はいわゆる 「リクルートスーツ」 に身を固めた姿に出会います。
 やけに緊張している様子が伝わってきたり、自身を喪失した暗い表情が見られたり、かと思えば、足を組んでガムをくちゃくちゃ携帯メールを打っていたり、鏡を取り出して眉描き作業に熱中していたり、、、、、、

 緊張組には心ひそかに呼びかけています。
「大丈夫、大丈夫、ほうら深呼吸をして、気負わずに君らしくやってきなさい。」

 暗い顔組には心ひそかに励ましています。
「辛いのは君だけじゃないよ。歩いていることだけでも君は成長しているんだよ。」

 そして、リラックス組には心ひそかに警鐘を鳴らしています。
「ちょっと君たち、電車の中は公の場。しかも君たちは今、誰から見ても一目でわかるシューカツ(就職活動)生という特別な存在。スーツを着ている時ぐらいはシューカツマナーでいましょうよ。」

 正直なところ、この時期は学生たちにとって本当に辛い時です。ゴールデンウィークに近づいていくにつれ、内々定の報せに踊り立つ友を見ながら、先の見えない不安に飲まれそうになります。とりわけ、最終面接まで進みながら、最後の最後で不採用だった学生たちは、いったんは大きな期待を持たされただけに、その落ち込み具合もひとしおではありません。

 私のところにもこの1週間で、思い悩む学生たちからたくさんのメールが寄せられています。

「最近ではテレビ制作系がほとんど全滅し、幅広く業種を見ているのですがどうしても面接を突破できず、もどかしさでいっぱいです。」

「目標を切り替えてみたのですが、どうしても志望動機が書けません。このままでは先に進めるか心配です。どこの企業でも私が見ている会社は競合が多く勝ち残れる自身がないなど不安要素がたくさんあり苦しんでいます。」

「福岡まで社長面接に行きました。『君みたいな人が来てくれると我々も嬉しいよ。』などと言われたのに、翌日不採用通知が来ました。もう何を信じていいのかわかりません。」

「明日提出の○○生命のエントリーシートです。ギリギリで申し訳ありませんが、ちょっと読んでいただけますでしょうか。突然自信がなくなってしまいました。」

「先日まで手の上に8社もあったのに、みんななくなってしまいました。自分のような者でもいったい就職できる会社があるのでしょうか。」

 今の時代のこんな就職活動はやっぱり間違っています。これほど長い間、心身をささげ、翻弄され続けている間に、去年のスタートの時点では、理想に燃えて夢を語っていた青年たちが、無理やり自分を相手が求める形に合わせようとしていきます。素晴らしい個性を埋没させて、だんだんとこじんまりしていく彼らを見るのは辛いことです。

 そんな中、昨夜、嬉しい第一報が届きました。
 
「□□社に総合職として内定をいただきましたことを報告させていただきます。
現在も就職活動は続けています。(やめるように言われましたが・・・)
これから受けようと思っている所が2社、結果待ちが3社あります。
とりあえず無職になることはないと思ったら安心して、ようやく伸び伸びと自分らしさを発揮できそうです。」

 みんな、もう少し。
 しょうがないね、変えることができない仕組みなら、せめて楽しいことを見つけてほしい、
 たとえば、こんなにたくさんの会社の中に堂々と入れるなんて、今しかないかもしれない。
「落ち込むな」 とは言わないけれど、ひとしきり落ち込んだら、また歩き出してほしい。
 聞き飽きた言葉だろうけれど、歩いていれば違う景色も見えてくる。
 歩き続ければきっと抜けられる。
 出口からは光にあふれた広い世界が見えるかもしれないよ。
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 09:53| Comment(0) | TrackBack(0) | マイワーク

2010年04月07日

ゴチャゴチャも今はスッキリ

P4064590.JPGP4064591.JPGP4074593.JPG
社会福祉援助技術演習、介護コミュニケーション技術、少数言語としての手話
ことばのバリアフリーを目指して、自己表現の技法、心をとらえる話し方入門
なぜか面接に受かる人の話し方、ビジネスに活かす電話応対術、エコグラム
就職面接必勝ガイド、ビジネスメール辞典、恥をかかない敬語・言葉遣い
心に届く日本語、ロジカル面接術、少数言語としての手話、適性検査の知識

 これは全部机の上に山と積まれた本の名前。
 加えて手元には、プリントアウトされた資料のもう一つの山。

 何とかに火がついて、とうとう切羽詰ったこのストレス満載の状態を、相棒と一緒に切り抜けることにしました。ちょっと遠い所に住む彼女が朝早く家を出てやってきてくれて、何と朝の9時半から夜の9時まで、延々11時間半もこの狭い私の仕事部屋に閉じこもり、二人で椅子を並べて協働作業をしました。

 かつての同僚として、人生の先輩として、全幅の信頼を置く友として、同じキャリアカウンセラーとして、20年以上も交流を続けている相棒です。鬼に金棒、二人 (?) 寄れば文殊の知恵、三本の矢ならぬ二本の矢。気心も知れている上に、おたがいが得意な分野も心得ています。仕事は面白いほどに進み、部屋はあきれるぐらいに散乱しました。時に手を休めての、あれやこれやのおしゃべりタイムも協働作業の喜びです。

 ある私大から、福祉・介護を学ぶ学生のためのコミュニケーション力測定テストを作ってもらえないか、と打診があったのが1月半ばのこと。私にはちょっと荷が重過ぎると、相棒を紹介したところから、結局、二人で取り組むこととなりました。

 二人でやるというのはいい所がたくさん、でも、困ったこともあります。ついつい相手を頼りにして、「まだ始めなくてもいいだろう。」 とか、「まあ、彼女がいれば何とかなるだろう。」 とか、気楽に構えてしまうことです。気心知れた同士、思いは同じだったようで、結局一緒に火がつきました。

 よく働きました。目と耳と口と指をフル活動させて、PCをたたき続けました。

「これ、どうする?」
「いらない!」

「これ、ちょっとおかしくない?」
「うん、おかしい。別の言葉にしよう。」

こんな具合に、一人ではきっと時間がかかったであろう小さな決断が、ポンポンとなされていきます。かくして外が暗くなる頃には8割がたのドラフトが完成し、それまで厚く覆っていたストレス雲も飛び去って、「やったね!」という達成感に11時間半の疲れも喜びに変わりました。

 仕事をしていて一番楽しいのは、こんな達成感です。これがあるから、たぶんやめられないんでしょう。

 友との協働作業に加えて、もう一つ嬉しかったのは、最後に、「この仕事は私たちだからこそできることだったかも。」 という実感を持てたことでした。 

 私の母は、ケアマネジャーの方や、献身的な介護士の方々に助けられて、人生最後の何年かを送りました。記憶を失った母を一人の人間として扱ってくれたスタッフの皆さんに、どんなにありがたく感謝しているでしょうか。

 いつの間にか私は、そんな方々とのコミュニケーションを思い出し、母と一緒に暮していた老人たち一人一人の顔と声と仕草を思い出しながら、仕事をしていました。老母をかかえる相棒もきっと同じだったのではないでしょうか。

 いい仕事でした。
 ゴチャゴチャだった机の上はきれいに片付けられ、ゴチャゴチャだった私の頭も、だいぶすっきり軽くなりました。

 これから残りの2割に取り組みます。
 
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 09:48| Comment(0) | TrackBack(0) | マイワーク

2010年03月28日

こんなことを始めたわけ

P3284361.JPGP3284370.JPGRs[ ` P3284366.JPGP3284401.JPG 
 今日は、1月から始めた 「グローバルキッチン」 3月の回の第二回目。今月のテーマは 「タイの台所」。甘さと辛さ、酸味としょっぱさの4つの味覚が素晴らしいハーモニーをかもしだすのがタイ料理。今日も冷たい前菜、温かい前菜、サラダ、メインディッシュ、デザートのフルコースメニューでした。

 毎月参加してくださる方々に、新しいメンバーも加わって楽しく時間が過ぎていきます。女を3つ書くだけで姦しい、10も書けば3倍以上も賑やか。せっかくの荘厳なタイの古典音楽も、あちこちから沸き起こる笑いとおしゃべりでかき消されます。

 予定ならば、庭の満開の桜を見ながら、トントンと石臼で香辛料を叩くはずだったのが、残念ながらまだ3分咲き。それでも床にペタリとすわってみなで交互にトントンすれば、木棒が石にぶつかる音の中で、つぶされていく食材からふわりと立ち上る様々な香りが心を癒してくれます。友を失った悲しみも、先々の不安も、忘れていられるひと時です。

 こんなことを始めたのには訳があります。おおぜいの人たちが気楽に集まり、共に楽しむ場を作りたかったこと、これまで色々な地を訪れ、色々なものを食べ、集めてきたレシピを何かの形にしたかったこと。そして、、、、、

 若い頃は、とにかく外へ出たくてたまらなかったのに、不思議なもので年々、日本という国が、東京という都市が、面白くなってきました。家の中に居ることが、小さな自分の仕事部屋で過ごすことが、快適になってきました。ところが、できるだけこの国で暮し、できるだけこの国で仕事をしたいと思うのに、なかなか一筋縄には行きません。母でありたいことと、仕事を続けることとの相克の中にいた時のように、この国に居たいことと、妻であることとの両立は、そうそう簡単なことではないのです。あきらめなければいけないこともたくさん出てきます。

 それならばせめて、外に出ることを、単なる旅や、単なる海外暮らしではないことにしたかった。それには、外と中を結ぶ線が必要でした。そのひとつの線が、食であり食文化であったのです。オリーブオイルの勉強をし、ソムリエの資格を取ったことも、そうした線を引くためのひとつの視点でした。

 そう気づけば世界は面白くなります。学ぶことはまだまだ山のようにあります。知りたいことも山のようにあります。ブラブラとスーパーマーケットを歩き、書店をのぞき、土地の人たちの話に真剣に耳を傾け、興味のあるレストランに片っ端から行ってみることも、全てが一本の線でつながります。それらを少しずつでも私なりの形で発信し、表現していく場があれば、私の外での時間も無為ではなくなるはずです。

 シアトルでもバンクーバーでもたくさんの仕入れができました。しばらくはこんな形で、仕入れたものを発信していきます。そしていつかは、どこにでも持ち歩ける 「ポータブルジョブ」 「ポータブルライフ」 へと繋げていくことができれば、と言うのが私の夢であり、目標です。

 あんなに華やかだったテーブルが、また元の何にもないテーブルに戻りました。
 あんなに賑やかだった部屋が、また元の静かな部屋にもどりました。
 これからもこうして繰り返されていくのでしょう。

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:45| Comment(0) | TrackBack(0) | マイワーク

2010年03月11日

私のパワースポット

P3113667.JPGP3113664.JPGP3103638.JPGP3113694.JPG
 窓一面からさしこむおだやかな日差しの中で、トントンと心地よい音が響いてきます。窓際で素焼きの壷を囲み、女たちがペタンと床に腰を下ろして、太い棒をリズミカルに動かしています。軽口をたたきあっては楽しそうに笑うさまは、遠い遠い記憶の中の風景のようです。

 かたやキッチンでは、女たちが行き交い、ジュージュー、パシャパシャ、クツクツ、コンコンと様々な音の洪水の中で、屈託のないおしゃべりを続けています。

 高い天井の大きな部屋には、ふだんとは違うエキゾチックな香が漂っています。パクチーの香、ナンプラーの香、カピ (蝦のペースト) の香、こぶミカンの葉の香、クミンやコリアンダーの香、、、、、、

 ここはタイの台所です。

 紫を基調としたテーブルには蘭の花が飾られ、タイの食器が並べられ、シンハビールとプーケットビールが置かれています。笑い声とおしゃべりの合間を縫うように流れてくるのは、タイの古典音楽です。

 1月から開催している 「グローバルキッチン」 3月の回の第一回目が今日開催されました。ありがたいことに今日も満席です。女たちだけの贅沢な時間です。

 昨日の車の中のラジオで、「あなたのパワースポットは?」 と言うテーマで言葉が行き交っていました。水族館という人もいれば、ディズニーランド、保育園という人もいました。最後にまとめられた結論によれば、パワースポット三原則とは、水がある所、笑顔のある所、そして別世界を感じさせる所。

 私にとっては、月に3度のこの会がパワースポット。
 キッチンから水の流れる音がして、女たちが笑いさざめき、別世界になるひと時、、、、

 正気に戻って、テーブルの上を片付け、台所を片付け、実世界に戻ってみれば、すでに静かな闇に包まれる時間。先週からの過重労働と、睡眠不足でかなり疲れがたまっているはずなのに、パワースポットのおかげでしょうか。何だかまだまだ色々なことができそうな気がしています。

 とは言え、明日は旅発つ身、そうそうに眠りに就かねばなりません。
 毎度おなじみ、早朝の荷造りです。

 次は海に面したマイナス17時間の時差の町からです。
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | マイワーク