2012年07月14日

今年もまた「一日為師 終生為父」 

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「開港してからちょうど13年後の7月6日、九龍半島の西にある国際空港に降り立ちました。キョロキョロと見回して迎えに出てくれているはずの人を探していると、人混みの中から大きな声が届きました。『Professor!』 リュージンでした。そばには小柄な運転手さんが立っています。」

これは1年前に書いたブログの出だしです。そして今年もまた、開港14年の空港で、多少の日付のずれこそあれ、全く同じことが起きました。

リュージンは今年60歳になる、ベイジン生まれの中国人です。文化大革命の後すぐに、思う存分勉強をしたいという夢を叶えるためにアメリカへ渡り、ニューオーリンズにあるロースクールに入学しました。いつかきっと来るその日を夢見て、母国が政情不安の時代には、部屋の隅っこで一枚一枚英単語の辞書をめくっては、頭にたたきこんでいたと言います。学校が閉鎖されると、家が知識を学ぶ場となり、父は息子の将来のための師と転じました。

リュージンは真面目で勤勉な学生だったと夫は言います。いつも礼儀正しくノックをして、まっすぐに立ち、授業でわからなかったことを謙虚に質問をし、与えた課題に一生懸命に取り組んでいた、と言います。

かたやリュージンはこんなことを言います。

「プロフェッサーはいつでも僕を優しく迎え入れてくれた。わからないことには丁寧に説明をしてくれて、僕が知りたいことのすべてを教えてくれた。法律だけならほかにも先生は居たけれど、プロフェッサーはちがった。文学も歴史も政治も、すべて僕の興味につきあってくれた。一度本当にお金に困った時には、『これは君にあげるのではない。貸すだけなのだから君は負担に思ってはいけない。誰が銀行からお金を借りる時に『申し訳ない』などと思うかい?』と助けてくれた。」

そんな二人の師弟関係は、リュージンが祖国でひとかどの人物になった今でも続いています。夫の講演が終わった夜、迎えに来た彼が言いました。

「今日はプロフェッサーが初めて香港に来た時に、一緒に食事をした所に連れて行く。もう30年以上も前のことだから覚えてはいないだろうけれど、僕にとっては忘れられない場所なんだ。」

そうして連れて行かれた思い出の場所が、海に浮かぶフローティングレストランでした。若き青年は、アメリカから来た恩師のために精一杯気張ってこのきらびやかなレストランに案内をしたのでしょう。その心中を思うだにほろりとしますのに、食事が終わって一息ついている最中に、彼がブリーフケースの中から何やら大事そうに取り出した封筒に、また、心揺さぶられることとなりました。

中から出てきたのは、なんとセピア色に変色した一枚の写真でした。32年も前のものです。

「ナオミ、プロフェッサーがどこにいるかわかる?」

私が手に取ろうとすると、「だめ、だめ。これは僕のだいじな宝物なんだから。」と、触らせてくれません。そして彼は、去年と同じようにまた、私のメモ帳にこんな文字を書きました。

「一日為師 終生為父」

「覚えていますか?孔子の言葉です。一日でも師となった者は生涯の父となる。だからプロフェッサーは僕の父です。」

遅ればせながら父子の輪に入れてもらった私は、リュージンによれば彼の「老姉」、そして彼の奥さんのビンとは「姉妹」だそうです。若弟は、頼りない姉のために、いちいち采配を振るいたがります。

「ほら、ナオミ、そこでプロフェッサーと座って写真を撮らなきゃ!」

おかげでめったにない二人並んでの記念写真が残りました。
もちろん、二枚目はリュージンとビンと一緒です。だって、どうやら弟と妹らしいのですから(笑)。

私の「だいじな宝物」になるでしょう。たとえセピア色になろうとも。
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                        By 池澤ショーエンバウム直美

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本日のグローバルキッチンメニュー
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7月14日(土): 香港でレイニアチェリーに遭遇!
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 22:41| Comment(0) | 香港

2012年07月13日

早起き魚の一日の始まり

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うすいレースのカーテンと
二重になった分厚い遮光性のカーテン
さらにまた それらを覆うように 
ゴールドの繻子のカーテンがついているのですが
どれひとつとして 使ったためしがありません。

夜には 窓の外
ダイヤモンドが散りばめられたような
灯りと一緒に眠ります。

そして朝には 窓の外
少しずつ 少しずつ 明るさを増す
景色の中で目覚めます。 

まだ太陽の昇りきらない6時には
もう8階のプールが開いて
アーリーフィッシュたちが 黙々と泳ぎ始めます。

昼日中のプールのように
申し訳程度に肌を覆った小さな水着で 
日光浴をする人たちもいなければ
声をあげて 水の中で遊び続ける子どもたちもいません。

アーリーフィッシュたちは
みな一様にゴーグルをつけ ひたすら往復を繰り返します。
早朝のプールは 言葉のない世界です。
聞こえるのは 水が跳ねる音と 時折鳥が鳴く音です
そして ここでは私も そんな早起き魚のひとりです。

水をかくたびに からだが前へと進み
時は後ろへ流れます。
その感覚は 歩くよりもずっと鮮明です。
だから私は いつもどこかで泳いでいるのかもしれません。

ひとしきりノルマをこなしたら 
デッキチェアで 日本の新聞を読みます。
読み終わる頃には お日様も少し高くなり
ぬれたからだも、悲しい心も なんとか乾いて
エレベーターは 私を乗せて
今日もまた 新しい日の始まりと 時の移りを知らせます。

Wednesdayは
Thursdayになって
Thursdayは
Fridayになりました。
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                    By 池澤ショーエンバウム直美

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昨日のグローバルキッチンメニ
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7月12日(木): 香港山寺の精進料理
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 11:32| Comment(0) | 香港

2012年07月12日

心經簡林というスピリチュアルスポット

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香港には何度も来ていますし、今回の目的だって物見遊山ではないのですが、どうしても行ってみたい所がありました。これまで行ったことがない場所です。友人のリュージンだって、「『大仏様』に行ったら」とは言っても、その先の「『心經簡林(ハートスートラ)に行ったら』とは言ったことがありません。

そこに行くには、まず香港島からランタイ島に渡ります。と言っても、MTRと呼ばれる地下鉄に乗れば、東涌線で終点の東涌駅まで30分。山を見たり海を見たりしながらの路線です。終点で下りれば、すぐにロープウェイの乗り場があります。ここでいかに根気よく順番を待たねばならないかについては、また別の機会に譲りますけれど、とにかくいったん乗り込めば、あとはひたすら高く高く上ること30分の空中移動です。1つのゴンドラに、ドイツ人の家族4人と、中国人のカップル、そして私たちの8人が乗り込みました。

「突然止まったらとうしよう」などと考えてはいけません。地震が起きたらとか、雷が鳴ったらとか、何かの事情で停電したら、などとは思わずに、ゆらゆらと身を委ねなければなりません。いったん覚悟がつけば、素晴らしい景観を楽しめるようになります。

「私、今55階にいるの。」と言ったら、友がスカイプで、「か、考えられない。僕はせいぜい頑張っても15階までだ。」。

そんな高所恐怖症の方には、バスで山を登るという方法もありますので大丈夫。とは言え、だいぶ時間がかかるようですし、酔い止めもいるかもしれませんけれど。

空中ゆらゆらの途中から、はるか遠くの頂に大きなお釈迦様の姿が見え始めます。ゴンドラを下りれば、門前町のような街並みが続き、その先の283段の石段を上がった先に、仏陀様がおわせられます。この大仏様と、それを擁する山上の寺「寶蓮寺」については、またあらためて書きますけれど、今日はそれをすっ飛ばして、私の本当の目的地「心經簡林」にまいります。

中国語で何と読むかはわかりませんけれど、その4つの漢字からあるイメージを抱くことができるのは、同じく漢字文化の私たちの特権です。それは「ハートスートラ(Heart Sutra)」とも呼ばれていますし、「ウィズダムパス(Wisdom Path)」とも呼ばれています。

「ハートスートラ」とはまさに「心經」ですし、「ウィズダムパス」とは「簡林」でしょうか。けれども、読めはしなくとも、私たちはその4文字から、「ハートスートラ」や「ウィズダムパス」という言葉にはないある種の深みを感じることができます。

その4つの漢字が与えるイメージのように、それはまさに「スピリチュアルスポット」と言うにふさわしい場所に、それにふさわしい形で存在していました。その場所に行きつくためには、タロイモやパパイヤ、ジンジャーやマンゴーなどのなつかしい木々や葉の間を抜けていきます。途中、今にも倒れそうに傾いた案山子に出会ったり、廃屋の前を通り過ぎたりしながら辿る道がすでにしてどことなく「スピリチュアル」に感じられるのですから不思議なものです。こんな時には、あちこちで舞い踊る漆黒の蝶でさえ、まるで誰かの魂のようにすら思えてしまいます。

強い陽光を遮るものとてない小道を、あるいは大きく茂った葉が影を作る山道を15分近く歩いたでしょうか。山に囲まれ、遠くに海を臨む一角に突然現れたのは、実に不思議な光景でした。巨大な丸太からできた卒塔婆のようなものが天に向かって立っているのです。いえ、まさに「卒塔婆」かもしれません。だって、そのひとつひとつに「スートラ=経文」が彫られているのですから。その大きさは180センチの家人をはるかに越しています。
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その数は38本、花梨の木に彫られているのは般若心経だと言います。
そしてそれらの卒塔婆が「∞」の字を描くように立てられていると言います。

ここでも、経文の木の間で輪舞をする蝶たちが見られます。数えるほどの人たちしかいない静かな空間で、目を閉じて深く息を吸い込めば、ふと何か大きなものに受け入れられた気がします。そうした感触は、おそらく「そういう場所に行くんだ」というある種の思い込みが作るものだとは思いますけれど、それでもそれは、とても心地のよいものでした

ここで私が祈ったのは、家族でも自分のためでもなく、心を病んでしまったある方のためでした。これと言った宗教があるわけでもないのに、祈り人間の私は、いつでもどこかで祈ってしまいます。今も、明るくなった外の景色に向かって手を合わせ、ここに居られることの感謝と共に、愛する人たちの今日一日の無事を祈ったところです。

ということは、もしかしたら、どこに居ようとそこが私のスピリチュアルスポットなのかもしれません(笑)。
                          By 池澤ショーエンバウム直美

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7月11日(水): ありがたきライチの恵み
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 09:24| Comment(0) | 香港

2012年07月10日

シャングリラにて

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高い高い天井よりも もっと高く茂った 
ベンガル菩提樹の木が 風に揺れ
精妙に計算された香りに満ちた室内で
グランドピアノとフルートが奏でるのは 
ジムノペディー

こんなところでは 人々は
決して大きな声で しゃべったりはしない

完璧なブリティッシュイングリッシュの美女が
銀のティーポットからそそいでくれる東方美人の 
移り変わる色を見て
移り変わる香りを嗅いで

これは単なるシェルターで
こんなことは続くわけがない
とはわかっていても
それでいい
たとえほんの短い間でも
それでまた 元気になれるのなら

ロビーも 部屋も
どこもかしこも 
濃い紫の 紫陽花と
濃い橙の 極楽鳥花で 彩られて
ここは東洋か 西洋か
北半球だか 南半球だか
そんな不思議空間で わざと私たちを迷わせて
目くらましの世界で 現実を忘れさせる 
シャングリラ

(Island Shangri-La Hong Kongにて)
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                   By 池澤ショーエンバウム直美

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7月9日(月): 女子力でますます素敵な寿司パーティー
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 18:07| Comment(0) | 香港

2011年07月26日

ローマの休日 もとい 香港の休日

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思えば「もとい」なんて言う言葉、久しく聞いたことがありません。昔々の高校時代、古文の先生がよく使っていました。言い間違えた時や言い換えたい時に、使うのです。「光源氏もとい薫の君は言いました。」てな具合です。

今日は私も先生にならって、ローマの休日もとい香港の休日です。

思えば香港から帰ってはや2週間。日々の東京での生活に追われている中で、実はまだまだ書き残していることがあります。

今回の香港は、旅行と言うのとはちょっと違ったもの。もともとは「一日為師 終生為父」を実践する、夫の忠実な元学生リュージンがたくらんだものなのですが、夫のほうは大変でした。銀行連合、経済団体、大学、政府の会議などあちこちに引っ張り出されては、金融危機やら環境問題などについての講演とコンサルティングの連続。

リュージンが言いました。そして私が答えました。

「ナオミを一人にしておくわけにいかないから、一緒に来ませんか?」
「いえ、一人で大丈夫。聞いてもどうせチンプンカンプンだし、一人でブラブラ町を歩きたいから。」

すると心配性のリュージンが、なんと自分の会社の運転手付きの車を当てがってしまったのです(笑)。その居心地の悪さときたら、、、、なんせそんなこと慣れてないものですから、どこに行くにもやたら気を使ってしまって、くたくたにくたびれてしまいます。そりゃそうでしょう。人ごみの真ん中に黒塗りのベンツが止まって、運転手さんがうやうやしくドアを開けたら、いったいどこのお嬢様、あるいはマダムが下りてくると思います?

すでにして一日でもうたくさん、と、翌日からはこう言うことにしました。

「私、今日は一人でお部屋で書き物がありますので。」とか、
「今日はプールサイドでのんびりしてますから。」とか(笑)。

かくして手に入れた自由に万歳!
私はすぐに地下鉄の駅に直行し、ガイドブックの地図をぐるぐるまわしながら、雑多な街を幸せいっぱいな気分で歩き回ったのでした。メインロードの間を結ぶ坂道の小さな路地は歓声を上げたいほどに面白く、青空市場には大興奮、物価だって気取ったショッピングモールとはゼロの数が驚くほどに違います。

あろうことか、どこに行くにも必ず持っていく水着を忘れました。ホテルに連結したモールで買おうとしたら、とても手が出る値段ではありません。あきらめかけていたら、なんと露店で見つけた水着が、まさかの300円でした!年甲斐もなく恥ずかしながらのビキニですけれど、この際泳げりゃなんだってかまいません(笑)。もちろん買いました。もちろん泳ぎました。どうせ水の中に入っていれば人様からは見えやしませんもの。

かと思えば、いったいこんな本物の古美術を売ってしまっていいの?と思えるほどに通称ハリウッド通りの骨董屋のすごいこと!隋の時代や唐の時代の仏像や装身具や家具まで、きちんとした証明書付きで売っているんです、

付き添い得で、ずいぶん豪華で美味なるものもいただきましたけれど、一番おいしかったのはやっぱりこれでしょうか。うろうろと歩いた小さな通りで見つけた「麺」という大きな看板。引き戸を開けて入ってみれば、中は満員。もちろん相席。メニューはありません。その代わりにテーブルに漢字がたくさん、数字がたくさん。つまりメニューがテーブルに貼りついているのです。

頼みました、ワンタンメン。よろしかったらどうぞこちらも見てくださいね。
http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku/e/0e684b52adcbea72ecbe2d0d915c3b80
値段にして本日のレートで280円!
次に香港に行ったら絶対にまた食べに行きます。

やっぱり私は「ローマの休日」のプリンセスにはなれません。
どこにでも行ける自由、なんでも食べられる自由、ひとり気ままにあっちへフラフラ、こっちへフラフラ、、、、混み合った食堂の相席に座って、280円のワンタンメンに感激できるほうがずっと幸せ!


しばらくはこのバナーを置かせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
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7月21日(木):奇跡のパーティーの行方1 
7月23日(土):奇跡のパーティーの行方2〜土佐編
7月26日(火)予定:奇跡のパーティーの行方これで最後!
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2011年07月14日

あり得ないパークマジック

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 さて昨日の「スカイ100」に続いて、香港の新名所のお話です。まさかこんな所に行くことになるとは思ってもいませんでした。しかも夫と一緒になんて、絶対にあり得ない場所です。だから逆に良かったんです、連れて行かれて。世界が広がりましたもの(笑)。

 物見遊山の旅行ではなく、れっきとした仕事あっての滞在でしたから、おのずと自由時間も限られています。連れ合いが午前中に講演やら会合やらを終えて、ご招待のビジネスランチが終わった後に、リュージンと一緒にホテルに戻ってきます。そこから私たち3人の「大人の遊び」が始まります。

 とは言うものの、、、、、、

「ナオミ、明日はどこに行きたいですか? 一つの候補はちょっと退屈なランタオ島の大仏様、もう一つは絶対に面白いオーシャンパーク。 どちらがいいですか?」

 これは明らかに誘導尋問、もしくは圧迫面接(笑)。本音を言えば、私は巨大な仏像が鎮座するという山上のお寺に行きたかったのですけれど、リュージンをがっかりさせたくなくて、ついつい口が滑りました、「もちろん絶対に面白いオーシャンパークに。」

 それを聞くや彼の顔がパッと輝いて、「そう思ってましたよ。なんたってパンダが見られるんですよ。見たいでしょう?」と来ました。どうして海にパンダ?という素朴な疑問はさておいて、、、

 オーシャンパーク(海洋公園)とは、「アジア最大の海洋公園」と銘打った一大レジャーランドです。麓のエリアと山の上のエリアがケーブルカーで結ばれていて、山の上エリアからは南シナ海が一望のもとに見渡せます。ジャイアントパンダの安安(アンアン)と佳佳(ジアジア)がいるのはもちろん山の麓の「ウォーターフロントエリア」です。
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 正直、気乗りもせずに出かけたパンダ園でしたが、なかなかどうしてエキサイティング。すぐ目の前を大きなパンダがノソリノソリと歩き回ります。居合わせたのはタイミングよく食事の時間です。飼育係りのお兄さんとお姉さんが、隠すように散りばめた果物や筍を探し出しては、こちらを向いて二本足を投げ出してペタリと座ります。そして赤ちゃんのように、両手で持った食べ物をムシャムシャムシャムシャと食べるのです。ガラス窓さえなければ手が届くでしょう。そんな近くで平然と歩いたり、食べたりしているのを見ると、きっと安安と佳佳からは手に手にカメラを持った私たちの姿は見えないように出来ているのでしょうし、いろいろな国の言葉が入り混じっての歓声なども耳には届かない特殊ガラスで守られているのでしょう。

 パンダの一挙手一投足に目を奪われている私の後ろでは、二人の男どもがまた仕事の話など始めていますけれど、かまやしません。存分にパンダ初体験を楽しみました。思えば変に天邪鬼なところがあって、人が騒ぐものにはあえてクールに処したくて、上野のパンダも、ワシントン動物園のパンダも見たことがありませんでした。

 上にも下にもいわゆる絶叫マシーン系の乗り物や、イルカやアシカのショーなど数多くのアトラクションが用意されています。私たちも、ついその場の雰囲気に飲まれて、ほんの一瞬、急流をクルクル回りながら下るラフティングに挑戦しようかという気になりましたけれど、あまりの行列なので止めました。

 あとは再び冷静に戻って、南シナ海を見下ろす展望カフェで長いこと「大人のおしゃべり」を楽しんで、また長い長いロープウェイに揺られて地上に戻りました。
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 一人250ドル(約3千円)の切符を買って、パンダを見て(いえ、私に見せて)、ロープウェイで揺ら揺ら登り、カフェでビールを飲んでアイスクリームを食べて、またロープウェイで揺ら揺ら下っただけでしたが、それでもリュージンはご機嫌です。

「ね、すごいでしょう、オーシャンパーク。これだけの眺めの所はありませんよ。」

 あれ? たしか同じセリフ、「ヴィクトリアピーク」に登った時にも、「スカイ100」に登った時にも言わなかったかしら?(笑)

 とは言え、言ってみる価値はあるかもしれません。何が面白いって、絶対に日本のアミューズメントパークでは見られない色づかいだからです。パンダをまじかに見たい方には特にお勧めです。南シナ海からの風に吹かれてゆっくりまったりカフェやレストランで時間を過ごしたい方にもお勧めです。

 絶叫マシーンに乗ったわけでもないのに、だいぶ心が浮き立っていたようで、まさかの写真を買ってしまいました。こんなこと絶対にあり得ないこと。でも、あり得ないことが起きるのがパークマジック?
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7月12日(火):ANAビジネスクラス7月のメニュー
7月13日(水):ライチはプルプル今が旬@香港
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2011年07月12日

高く、もっと高く〜香港で一番高い「スカイ100」

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 香港もなかなかの暑さでしたけれども、やっぱり東京の暑さは格別です。じっとしているだけで、というか、じっとするやいなや汗が流れ落ちてきます。南半球も南太平洋も、南アメリカも南欧も、およそ「南」と名が付く所にはずいぶん行きましたけれど、こんな風に汗をかく所はなかったように思います。ハンカチを忘れて出ようものなら大変です。けれどもいったんこの日本の夏に慣れてしまえば便利なもので、おおかたの国の、おおかたの暑さは楽に感じられます。

 香港のことをもう少し続けたいと思います。その昔、香港でまず連れて行かれるのは、極彩色に彩られたタイガーバームガーデン、大きな水上レストランが浮かぶアバディーン、レパルスベイ、そしてヴィクトリアピークでした。

 時が流れて歴史が変わり、人々の嗜好もライフスタイルも変わりました。昔の香港土産と言えば、虎の絵の蓋をまわせば鼻にツンと来る軟膏「タイガーバーム」でしたけれど、あれで巨万の富をなした香港の大富豪「胡文虎」は、もういません。1950年に一般公開されるようになった彼の別荘も、彼の死後は次第に切り売りされて高層マンションへと変わり、とうとう2000年には閉鎖をされてしまいました。

 それではいったい現代の名所はどこなのでしょう。リュージンが私たちを連れて行ったのは、「スカイ100」と「オーシャンパーク」、そして装いも新たな「ヴィクトリアピーク」でした。彼が誇りと共に私たちに見せたかった今の時代の香港です。それらを少しばかりご紹介したいと思います。

 まずは香港で一番高い建物、「スカイ100」。

 今年の4月にオープンしたばかりの、香港一高いビルの展望台です。高さは393メートル。と言うことは、東京タワー展望台の250メートルをしのぐ高さです。最も今や東京には高さ450メートルのスカイツリーがありますけれど。こちらの入館料はスカイツリーよりはだいぶ安値で150ドル(約2千円)。2階から展望台のある100階まではわずか60秒。高速エレベーターの中からは外は全く見えませんし、ほとんど振動も感じませんので、全く上昇している気がしません。

 展望台には「世界の高さ比べ」の大きなイラストがかかっています。香港の「スカイ100」は世界で4番目。もちろん第一位の座に輝くのは、一昨年完成したドバイの「ブルジュ・ドバイ」、829メートルです。

 高く、もっと、もっと高く。
 他より少しでも高く。
 どうやら私たち人間というのは、バベルの塔の時代からちっとも変わらぬようです。

 私自身は別にもっと高い所に上りたいとも思いませんし、自分がいる所が世界で何番目かなどにはほとんど関心もありませんけれど、それでも、393メートルから見る夕日が染める海は、圧巻でした。 

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2011年07月11日

一日為師 終生為父

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 朝8時にホテルにやってきたオハイオ州立大学のダン教授夫妻。中国で生まれながら、今では夫妻ともアメリカ国籍を取って、アメリカで暮らしています。それでも故国を愛する気持ちは変わらずに、大学が休みになると故郷の家族のもとに帰ります。今回も中国法の新しいケースブックを書き終えて、コロンバスオハイオからロサンゼルスで乗り換えて、金曜日に上海に帰ってきました。そしてわざわざ私たちに会うために二人で香港に飛んできてくれました。

 ダンは夫の「国際経済法」のCo-author、共著者です。さだめし仕事の話だろうと思いこんでいて、ちょっと遅れて駆けつけたら打ち合わせはとっくに終了しています。結局は私たちの出発直前までなんてことのないおしゃべり。このためにわざわざ?と恐縮していたら、「世話になった人に感謝し、年上の人を敬うのが我々の文化だから。」と、ニューヨークで育って、アメリカで仕事をするダンが言いました。

 いつだって約束の時間より早く来て私たちを待っているリュージンは、昨日も空港へと出発する私たちの姿を見つけて、少年のような笑みを顔いっぱいに浮かべて近づいてきました。ホテルの前にはすでに、ピカピカに磨かれた真っ黒なドイツ車が停まっていて、実直そうなドライバーがやはりニコニコと私たちのために車のドアを開けてくれます。

 男たちの弾丸トークは空港に行く道すがらもずっと続いています。いったい何度あの言葉を聞いたことでしょう。「Yes, Professor!」

 30分で到着した空港でも、広いロビーで荷物のカートを押しながら、まるで後ろから遅れないようについていく私の存在など忘れてしまったかのように二人は話し続けています。小走りで駆け寄って、自分の荷物を取ろうとすると、リュージンに怒られました。

「ナオミは僕の姉さんなんだから。」と言って、たかだか1歳しか違わないくせに、私を「老姉」だと言うのです(笑)。「じゃ、彼は?」と夫のことを聞くと、「もちろん僕のプロフェッサー。そして、、、」と、やおら私のノートとペンをつかむと、書き始めたのがこの言葉でした。

「一日為師 終生為父」

「孔子の言葉です。一日でも師となったものは生涯の父となる。だからプロフェッサーは僕の父。」

 リュージンはまるで小さな子供のように、私たちが手荷物検査を通るまでずっと手を振り続けていました。見えなくなりそうになると飛び上がっては、「ここにいますよ!」と合図をし続けます。振り返れば、満面の笑顔の途中で、時折手の甲で目をぬぐっているのは汗でしょうか、涙でしょうか。たった5日の滞在なのに、いったい何と言う見送り方でしょう。まるで、留学先のカナダの高校に戻るティーンエージャーの娘を見送っていた私のようです。
 
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7月11日(月):スーパーマーケット面白探訪2@香港
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2011年07月09日

何にもしないという選択肢

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 朝から太陽をたくさん浴びて、たくさん歩いて、たくさん汗もかいて、おまけに見晴らし抜群のカフェで昼間から生ビールなど飲んで帰ってきてしまったものですから、目下、かなりグッタリとではなくマッタリと疲れています。

 夕食に出るまでの制限時間は1時間半。選択肢は3つです。
 水着に着替えて7階まで下りて一泳ぎしてくるか、
 快適なカウチに横たわって一眠りするか、
 期間限定の贅沢な仕事場で、眠気と戦いながら一書きするか。

 ぐでぐでと迷っているうちに時間ばかりが過ぎて、結局そのどれもできそうにありませんけれど、これはこれでまた選択肢の4番目?と思えば、それもまたあり。何にもせず、何にも考えず、ただただぼやっと時間を浪費しているなんて、もしかしたら一番贅沢な選択肢かもしれません。

 ここもまた面白い町です。緩と急、貧と富、動と静、明と暗、新と旧、、、そんないくつもの対をなすものが小さな所に混在しています。いずれまたそんなことも書いてみたいと思います。

 食事の約束時間になってしまいました。何にもできませんでしたけれど、お腹は空きました。出かけます。

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7月5日(火):これが本物バインミー(ベトナムサンド)
7月7日(木):香港最初の夜はアヒル1羽
7月9日(土):HKGスーパーマーケット探訪
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 21:30| Comment(0) | 香港

2011年07月08日

1回、2回、3回、そして4回目のヴィクトリア・ピーク

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 天気予報は今日も晴れ。予想最高気温は33度。湿度は85%です。リュージンの「先週はずっと雨でした。プロフェッサーとナオミのことを考えて、雨が続かないように祈っていました。」と言う願い通りに、こちらに来てからずっと明るい陽射しに恵まれています。

 昨日、男たちが仕事を終えるのを待って、急勾配をトラムで登ったヴィクトリア・ピークからの景色も、光の中で壮観でした。

 一番最初に登ったのは19歳の時でした。ニューギニアでの1ヶ月にわたる調査を終えての帰り道、2人の仲間と一緒に香港に下り立ちました。

 二番目に登ったのは、まだ娘たちが生まれる前のこと。夫と二人の旅でした。
 三番目は女友達との短い旅行。まだあの曲乗りのようなパイロットの技が見られた啓徳空港の時代です。そして今回。

 ほとんど忘れていた思い出の端々が時折よみがえってきたりはしますけれど、まるで新しい経験をしているように感じるのは、この町の変化ばかりではなく、私自身の変化にもよるのでしょう。

 ピークには、昔はなかったいろいろな施設ができています。コンピューター関連の店もあれば、息を呑むような見晴らしのカフェも、日本食のレストランもあります。喉の渇いた私たちは、そのうちの一軒に入りました。「Bubba Gump」(ババ・ガンプ)です。

 今さら言うまでもありませんが、これは1994年の映画「フォレスト・ガンプ」をテーマにしたレストラン。この映画もまた、一昨日下り立った香港国際空港の開港日と同じ7月6日に公開されています。狙ったわけでもないのに、やけに7月6日の偶然が続きます。

 世界中の「ババ・ガンプ」の中で一番高い所にあるのかもしれないヴィクトリア・ピークのその店の黒板にも、これが書いてありました。映画の中のあちこちに散りばめられている、シンプルだけれど、やけに心に残る名言のひとつです。

「Mama always said, life is like a box of chocolates, you never know what you’re gonna get.」(ママがいつも言っていた。人生はチョコレートボックスのようなものだって。どんなチョコを食べるかなんてわかりゃしないんだ。)

 たしかに人生はチョコレートボックスのようなもの。空けて見るまではどんなチョコレートが待っているのかはわかりません。目の前に広がる将来を信じてやたら元気だった19歳の頃には、まさかその数年後に愛する人と二人でピークを登るなどとは、思ってもいませんでした。ましてや、今またこんな風にここに来て、こんな風に登って、こんな風にここにいるなんて、いったい誰が予想をできたでしょう。

 開けられたチョコレートの箱から自分で好きなチョコレートを選んだつもりでも、実はそれを選んだのは気まぐれでも偶然でもなく、あらかじめ定められていたチョコレートなのかもしれません。だとしたら、手にしたチョコレートが、多少好みとちがったっところで、大切においしく食べたいものですね。

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7月5日(火):これが本物バインミー(ベトナムサンド)
7月7日(木):香港最初の夜はアヒル1羽
7月8日(金)予定:スーパーマーケット面白探訪@香港
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2011年07月07日

Yes, Professor!

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 香港最初の朝です。海にせり出すように設計された大きな二面の窓から見えるのは、高いビルたちです。ビルの間に見える山肌は光を集め、磨かれたビルの窓は、よく晴れた青空と流れる雲を映します。ここはパシフィック・プレイスの高層ビル群の一角にあるホテルです。押さえた色調の広い部屋は快適です。昨日午後に到着してから、この23階の部屋が私の住処となりました。窓に面したガラスの机は早速仕事机です。

 開港してからちょうど13年後の7月6日、九龍半島の西にある国際空港に降り立ちました。キョロキョロと見回して迎えに出てくれているはずの人を探していると、人混みの中から大きな声が届きました。

「Professor!!」

 リュージンでした。そばには小柄な運転手が立っています。

 リュージンはもうじき60歳になろうとする、ベイジン生まれのチャイニーズ。文化大革命の後すぐに、思う存分勉強をしたいという夢を叶えるためにアメリカへ渡り、ニューオーリンズにあるロースクールに入学しました。いつかきっと来るその日のために、政情不安の時代には一枚一枚英単語の辞書をめくっては頭にたたきこんでいたと言います。十分に学校で勉強ができなくなると、家が知識を学ぶ学校となり、父はいつか来る息子の将来のための師と転じました。

 リュージンは真面目で勤勉な学生だったと夫は言います。いつも礼儀正しくノックをして、まっすぐに立ち、授業でわからなかったことを謙虚に質問をし、与えた課題に一生懸命に取り組んでいた、と言います。

 かたやリュージンはこんなことを言います。

「プロフェッサーはいつでも僕を優しく迎え入れてくれた。わからないことには丁寧に説明をしてくれて、僕が知りたいことのすべてを教えてくれた。法律だけならほかにも先生は居たけれど、プロフェッサーはちがった。文学も歴史も政治も、すべて僕の興味につきあってくれた。一度本当にお金に困った時には、『これは君にあげるのではない。貸すだけなのだから君は負担に思ってはいけない。誰が銀行からお金を借りる時に『申し訳ない』などと思うかい?』と助けてくれた。」

 そんな二人の師弟関係は、もう30年以上、リュージンが祖国でひとかどの人物になった今でも続いています。大きな会社の幹部となり、たくさんのお金や人を動かす彼が、今でも師を「Professor! Professor!」と呼び、「Yes, Professor!」とピンと背筋を伸ばして答える様は、とても爽やかです。そんな男たちの信頼関係は見るにも聞くにもほのぼのとして、私の知らない30年前の夫の姿をもっともっと聞きたくなります。

 リュージン一家との昨夜の晩餐のテーブルで、次から次へと出てくるお料理に喜びながらも申し訳なく思っている私に、彼がにこやかに言いました。

「ナオミ、どんどん食べて、足りなければなんでも好きなものを注文してください。
僕はまだプロフェッサーに利子を返し終わってないんですから、ナオミも協力してくれないと困ります。ローンの利子を受け取った銀行が『申し訳ない』などと思います?」

 もう少ししたらリュージンがプロフェッサーを迎えに来ます。プロフェッサーがリュージンに連れられて2箇所で講演をこなす間、私は28歳の娘のモンモンと飲茶に行きます。高校から大学院までをアメリカで学び、ベイジンのヘッジファンドで働くモンモンは、私たちのために昨日香港に帰ってきてくれたのです。「Yes, Professor!」が二代目にも受け継がれているなんて、いったいなんというホスピタリティーでしょうか。

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