2012年08月18日

2列の求人 5列のトレーニング

037.JPG038.JPG

メトロに乗る時に、いつもちょこっと箱から取っては車内で読むタブロイド版の新聞があります。「EXPRESS」という名の日刊フリーペーパーです。フリーペーパーの分、やたらと広告が多いのですが、それがまた土地柄が表れていて面白く、記事よりはそちらを丁寧に見てしまったりもします。

今日(17日)の「EXPRESS」は、週末を前にして上映中の映画評がたくさん載っています。この欄も好きですけれど、つい目が行ってしまうのは求人広告です。今、このアメリカの首都で、いったいどのような仕事に対して求人があり、それにはどのような条件が必要なのか、、、そんなことを知るのはとても良い勉強にもなります。

ところが、昨今はどうも「JOBS」の欄よりも、圧倒的に「CAREER TRAINING」の欄がのさばってきているのです。たとえば、今日の求人欄は、たったの2列。それに対して仕事を得るためのトレーニングやキャリアカウンセリング、あるいは「トレーニー」とか、「インターン」の名の下で、正規の雇用ではないものを求める広告が5列です。

たとえば、、、

「一日であなたの人生を変えてみませんか。看護婦になるための訓練を受けたいのなら今すぐ電話を!」 とか、

「今こそあなたの未来を今変えましょう。毎月200ドルの交通費補助が出ます。高校の卒業証書は要りません」とか、

「事務補助のトレーニーを求めています。費用はかかりません。」 等々。

これだけでも雇用市場の需給バランスの一端が垣間見られます。

そういえば、リハビリに行った先の東京のクリニックで手に取った8月7日の日経新聞には、アメリカの就職事情に関するこんな記事がありました。題して「こんなはずじゃなかった」。

「2009年に名門コーネル大学を卒業したメリーランド州の25歳の青年は、ソーシャルワーカーの仕事をようやく見つけたものの、年棒は3万ドルにも届かず、夢の単身ニューヨーク生活をあきらめて実家に戻ることにした。」

「卒業後、実家で暮らすブーメランキッズの25〜34歳の男性の比率が過去最高の19%となった。経済危機の打撃は中高年層より若者に厳しい。収入の目途が立たない若者が増え、学生ローンの返済は進まない。今年3月末の学生ローン残高は約1.5倍に増えた。」

そういえば、6月のメイン州ポートランドでロングフェロー・ミュージアムに行くのに乗ったタクシーのドライバーは、何やら知的な風貌の青年でした。道中、よもやま話になったはずみで、彼がこんなことを言いだしました。

「僕はコロンビア大学で哲学のPhDを取りました。でもニューヨークでは仕事が見つからなくて、故郷に帰って来たんですが、ここでもやっぱり難しくて、とりあえずはタクシーの運転手をやってます。」

そんな彼が、気づけば、ハンドルを握りながら、夫とギリシャ哲学を語り、私にはチンプンカンプンのカントやニーチェについての自論を熱っぽく述べ始めたのです。次第次第に目が輝きだして、何と目的地に着いたとたんに、「お戻りになる時間に僕の携帯に電話をしてください。ここまでお迎えに来ますから。もう少しお話ししたいのです。」

ホテルまで迎えに来たレンタカー屋の若い女性も、今年の5月に地元の女子大の教育学部を卒業したものの、自分のやりたい仕事に就くことができず、アルバイトのつもりで、レンタカーのお客の送迎をしているとのことでした。

アメリカに限らず、有能な若者たちの受難は夏の香港でも目にし、耳にしました。そしてもちろん私たちの国でも、ひたひたとその波紋が広がっているように思えます。たしかに、この1〜2年で、日本でもアメリカでも、寄せられる相談の質が変わってきました。

タクシーの運転士や、レンタカーオフィスの送迎が悪いとは全く思いませんが、やはりしっかりと学び育ってきた若者たちには、少なくともまずは自分のやりたいことにチャレンジする機会を与えてあげたいと思うのです。

ポトマック川まで散歩に行きました。
この川はいつも海の匂いがして、心が落ち着きます。
ここでも、平日の昼日中に物思いにふける人たちの姿がたくさん見られました。
001.JPG009.JPG011.JPG012.JPG
By 池澤ショーエンバウム直美

――――――――
グローバルキッチンメニュー
http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
8月17日(金):初体験!腸に優しいバースデーディナー
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 12:06| Comment(0) | キャリア

2012年05月27日

計画された偶発性〜宝くじも牡丹餅も

012.JPG011.JPG
5月最後の日曜日の、美しい朝です。
こんな日は、いやなことや悲しいことは似合いません。
たとえそれが一時の逃げであったとしても、いいではありませんか、いいことだけを考える日があったって。

桜が窓を薄桃色に覆っていたのがついこの間のように思えるのに、今朝はもうこんなに緑の葉が茂っています。私たちのように心象風景も心象時間もないはずの自然は、いつだって、季節と共に時間を刻む律義さの中で生きています。

先週、急ぎ足で次の場所へと移動する途中、数寄屋橋で長い行列に出くわしました。メガホンを持った人たちが何やら声を上げています。好奇心から歩を止めてみれば、「ドリームジャンボ」の販売でした。その案内がふるっています。

「ただいま、7番窓口でしたら並ばずにお買い求めいただけます!」

宝くじ体験など実は皆無に等しいビギナーは、急いでいるはずなのに、なんとなく好きな数字の7に惹かれて窓口の前に立ってしまい、「連番ですか? バラですか?」と聞かれて、よくもわからないままに薔薇の花を思い浮かべて、「バ、バラでお願いします。」と手にしたのが、組も番号も「バラバラ」な10枚の紙でした。

電車に飛び乗ってから気づきました。
これって、まさに「計画された偶発性」?

いえいえ、「宝くじ攻略法」ではなく、1999年にスタンフォード大学のクランボルツ教授が発表したキャリア理論です。私たちキャリアカウンセラーの中にも、これが好きな方はたくさんいます。私もそのひとりです。

要するに、個人のキャリアは偶然に起きる予期せぬできごとによって決定されるけれど、その偶発的な出来事を、主体性や努力によって最大限に活用し、力に換えることができるというものです。

そのための5つの行動を、教授は次のように述べています。

1.Curiosity (好奇心を持つこと)
2.Persistence(あきらめないこと)
3.Flexibility(柔軟でいること)
4.Optimism (楽観的に考えること)
5.Risk Taking (失敗を恐れないこと)

ほら、宝くじはまさにこの5つが当てはまります。

宝くじを買ったら、もしかして当たるかもしれない。
    ↓
よし買ってみよう。
    ↓
はずれた! ま、いいさ。
    ↓
次は別の場所で買ってみよう。
    ↓
また損をするかもしれないけれど、当たる可能性だってあるさ。

つまり、当たるも当たらぬも、宝くじを買わなければ始まらない、ということです。

3月末に、大人気青年ブロガー、もりぞおさんの「はじめてのアジア海外就職」出版記念イベントの対談に呼ばれて、皆様の前で、打てば響くもりぞおさんとポンポンと卓球のように言葉をやり取りしていたら、最後に彼がこんな言葉でしめてくれました。

「棚から牡丹餅=タナボタと言ったって、棚の下に行かなければ 落ちてきた牡丹餅だって捕まえられませんよねえ。」

なるほど!
これもまた立派な「計画された偶発性」(Planned Happenstance)理論です(笑)。
014.JPG
By 池澤ショーエンバウム直美



―――――――――
本日のグローバルキッチンメニュー http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
5月27日(日): ラッキーハッピーモーニング

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 10:48| Comment(0) | キャリア

2010年11月25日

苦難の道は輝きに繋がる  

RIMG2048.JPGRIMG2047.JPGRIMG2052.JPGRIMG2054.JPG
 丸ビルには大きなクリスマスツリーが飾られ、並木道にもイルミネーションが輝いて、街は1月後にやってくるクリスマスへと近づいていきます。今夜、大通りに面したガラス張りのレストランで、この時期恒例のパーティーがありました。

 ワシントンDCの名門、ジョージワシントン大学ロースクールの同窓会が開かれたのです。アメリカからは、連邦政府の首席裁判官(チーフジャッジ)と、アシスタントディーン(副学部長)、教授夫妻がやってきて、日本で活躍する卒業生たちとの親交を深めました。

 日本側は、1968年の卒業生から、今年の卒業生までを含む27人。企業や政府から派遣されて1年間の修士課程を終えて帰ってきた方々が多く見られます。渡されたリストを見れば、ほとんどは、外国法事務弁護士事務所や特許法事務所、経済産業省や環境省、特許庁、裁判所といった政府機関、そして大学で働く人たちです。高度の専門性を身につけるロースクールらしいラインナップです。

 およそ敷居が高いそんな場に、なぜか今年で7回目の出席となりました。いつもなら、このロースクールで教える家人にくっついて、ゲストとしての出席なのですが、いつの間にやらジャッジやディーンたちと親しくなって、今回はこんな具合に声がかかってきたのです。

「○○はミラノでも、ナオミは日本にいるんでしょう?だったら来なさいよ。」

 気恥ずかしいながらも、行けば行ったで、顔見知りの人たちも多く、なかなか楽しい時間を過ごせます。新しい方々にもたくさん出会い、それが女性ならなおさらの興味津々、そのキャリアパスについてたずねたくもなります。今夜も色々なことを学びました。

 中締めで、アシスタントディーンのスーザンがこんなスピーチをしました。

「日本からの学生が少なくなってきた分、中国やインドからの学生がどんどんと増えています。日本人は、とても真面目で優秀なのに、入り口のところでTOFELの点数でひっかかってしまうのです。本当にもったいない話です。」

 レイダー裁判官が続けました。

「私たちは才能ある日本の学生がもっともっと欲しいのです。日本という素晴らしい国の存在感を失わないためにも、皆さんの協力が必要なのです。どうか皆さんの周りの、将来ある若い人たちを励まし、導いて、扉を開いてあげてください。」

 「最初のオリエンテーションでは何を言ってるか全くわからなかった」という若い人たちが、たとえ1年でも、必死になって勉強をし、時には挫折感にうちひしがれ、膨大な資料を読まされ、討論の場にひっぱり出されていくうちに大きく変わっていきます。そんな苦難の経験こそが、力となり、自分自身への信頼となり、今日の彼らの輝きにつながっているのではないだろうか、そんなことを、クリスマスのイルミネーションのようにキラキラと輝く彼らの顔を見ながら思う夜となりました。 
-----------------------------------------------------------------
グローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
11月26日(金):クリスマスにいかが?手作りレバーパテ
11月25日(木):野菜画廊
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:58| Comment(0) | キャリア

2010年07月12日

つらい体験を乗り越えれば、、、

2P8030284.JPGs1ora.JPGP8040347.JPG
 いくら企業側の 「倫理憲章」 があったって、いくら大学側の適正化の 「申し入れ」 があったって、その二つを尊重するべきだといくら文科省が 「ガイドライン」 を示したって、大学生の就職活動=シューカツの早期化、長期化は依然として改善されないままです。

 私が大学の就職相談室長をしていた2000年から2004年の頃からもう随分年月がたったと言うのに、事態はいっこうに変わらぬどころか、ますます拍車をかけているようにすら見えます。

 夏休みには3年生に向けてのインターンシップが行われ、それすらも今や選考を経た者でなければ機会を与えられないのは、すでにして 「シューカツ」 の火蓋がが切られたようなものです。最初の就職ガイダンスを、3年生になりたての4月に開く大学も増えてきました。

 こうして至る所から煽られた学生たちは、慣れないスーツに身を包み、シューカツと言う長い旅路に足を踏み出すことになります。

 今日も電車の中で何人かの、いかにもそれとわかる、黒い上下に黒い靴、黒い鞄の学生たちを見かけました。けれども、それが昨秋からシューカツを続けている4年生なのか、今まさにスタートラインに立った3年生なのかが傍目にはわからないのが、この時期です。

 昨年の秋、同じ高校を出て別々の大学に進学した3年生3人組の就職ガイダンスをしました。一人一人が全く違う素晴らしい個性の女子3人組は、数回にわたるガイダンスを実に真剣に取り組んでくれました。

 「卒業」 をさせててからも、思うような結果が出ずに希望を失いそうになる彼女たちを励まし続けてきましたが、私からは決して、「そろそろ内定は出ましたか?」 という質問はしませんでした。そんな質問がどんなに彼女たちにプレッシャーをかけるかがわかっていたからです。

 3人組の一人、リサさんから最初の内定報告が届いたのは4月半ばのことでした。
 次にリオさんから、5月半ばに報告が届きました。
 そして、たった今、最後に残ったマサヨさんから嬉しい報告メールが届きました。

「長くかかってしまいましたが、『XX』 と 『YY』 に内定を頂き、本日、『XX』 に就職することを決め、無事に就職活動を終えることができました。『XX』 は現在業績を伸ばしつづけている会社です。総合職の新卒採用第一期生として採用して頂き非常に満足しています。昨年はエントリーシートの書き方から就職活動のノウハウまで、細かくご指導いただき本当にありがとうございました。」

 これでやっと、「全員落ち着いたらみんなでお祝いの会をやろうね。」 の約束が実現できることになりました。

 話は変わって、今度は個別にガイダンスをしていたC大学の学生さんです。彼女もまた、育ちのよさからくる天性の魅力にあふれた子でした。たとえ今はただの原石でも、近い将来きっと輝き出すだろうと思わせる何かがありました。

 一つまた一つと壁にぶちあたっては失望を繰り返し、一時は 「もう私はこの社会では必要とされていない」 とまでに思いつめながら、彼女もまた、つい先月、「ナオミ先生!」 と真っ先に内定の喜びを伝えてきてくれました。

 そんな彼女に1週間前に会ってみて本当に驚きました。しばらく会わないうちに、すっかり顔つきが大人になっていたのです。持ち前の愛くるしさの中に、何かキリッとしたものが見えるようになり、昨秋からの苦労が彼女を大きく成長させたことを物語っていました。

 先日、新聞の投書欄に、大阪の大学4年生からこんな一文が寄せられていました。

「ただ今大学4回生。今も続けるシューカツはかなりきつい。そこで今の状況を、『ショーカツ』(将来に向けた活動) と前向きに呼ぶことにした。シューカツを機に自分を見つめなおす時間はつらかったが、情けない自分の姿と、それでも、将来の希望を捨て去ることはできない現実が、はっきりと目の前に現れてきた。
シューカツに行き詰る仲間たちに、覚悟を決めた 『ショーカツのススメ』 を届けたい。」

 早期化、長期化には多々問題がありますが、つらい体験は必ず将来の力になります。つらければつらいほど、それを乗り越えた自信は学生たちを大きく成長させます。

 そしてそれは、何もシューカツ学生だけではありません。とうにそんな時代を通り過ぎて社会に出た私たち大人にだって充分に言えることです。私自身も、彼らから毎年多くのことを教えられています。
----------------------------------
グローバルキッチンお品書き
http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku
7月13日(火):ギリシャ神話と夏の星座〜お料理篇
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:58| Comment(0) | キャリア