2012年09月25日

だって1つの疑問がわくと、、、、、

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「兼高かおる 1つの疑問 2つ。2つが4つ。忙しいんです。まだまだ行きたい土地」

この謎のような言葉の羅列は、いつだったかラジオから流れてきた兼高かおるさんの素敵な言葉を忘れたくなくて、大急ぎで書いたメモ。

ラジオを聴くのは、おおかたは車の中ですから、心にひっかかる言葉を耳にしてもその場でメモがとれません。どうしても覚えていたいものの場合には、次の信号待ちの間に、手元の紙にあわてて書きます。

けれども、これは往々にしていくつかの失敗に結びつきます。

その1 急いで書いたので、後から見て自分の字が判読できない。
その2 確かにどこかに書いたのに、それがどこだかわからない。
その3 たとえ見つかって判読できても、それがいつのものなのかわからない。

冒頭のメモは、ひどい字でしたけれど、幸い何とか読むことができました。そして、小さなノートの2ページ目にあるのをたまたま見つけることもできました。最後の難関は「その3」でしたが、これまた推理小説のようにひも解いていけば、たぶん4月の後半のどこかであることも推察できました。だって、ギプスが外れ、字が書けるようになって、運転もできるようになって、日本にいた時なのですから(笑)。おまけに3ページ目に書いてあるのは明らかに4月末の仕事のメモでしたから。

兼高かおるさんと言えば、あの独特の言い回しで語る、美しく上品で大胆な冒険家。ですから、冒頭のそっけないメモ書きだって、実際はこんな風におっしゃっていたのかもしれません。きっとそうでしょう。

「わたくし、とても忙しいんですの。ひとつの疑問がわくと、それが2つになりますでしょう? そして2つの疑問は4つに枝分かれして、またどんどんと増えて行くじゃございませんか。わたくし、まだまだ行きたい土地もございますのよ。」

若い頃からの憧れの方、兼高さんも今や84歳。
いつまでたっても、いったい何て素敵なんでしょう!
84歳で、さらりとエレガントにこんなことをおっしゃるなんて。

実は、今回のアメリカ暮らしの間にひとつ大事なものを紛失しました。私がいつどんな時でも鞄の中に入れているソニーの電子辞書です。失くした場所、いえ置いてきた場所もピンポイント的にはっきりしています。9月4日、ドナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港午前10時5分発バンガー行きUS航空の前から3列目の窓側の席の上。

漢和辞典やら国語辞典、英和や和英の辞書などおそらく誰の役にも立ちやしません。当然保管していてくれただろう、という安易な気持ちで、帰りの便に乗る前に遺失物のオフィスに寄ってみたら、「Unfortunately Not」の答です。いったい私のあの便利な小さな機械は、どこに行き、誰がどのように使っているのでしょう、と思ったところで後の祭。

「ま、いいか、日本でまた買えばいいのだから。」などと諦めてはみても、いかにその後の日々が心細く、寄る辺ないものであったことでしょう。町を歩いても、新聞を読んでも知らない言葉に出会います。逆に、あることを伝えたいのにその英語がわかりません。たとえば、「細菌性赤痢」の英語名なんて、どうして知っているはずがありましょう。

「私、忙しいの。だって1つの疑問がわくと、、、、」など言ってみたくともできない、もどかしい日々となりました。

By 池澤ショーエンバウム直美


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9月24日(月):ルピシア グラン・マルシェ2012〜見るも楽し、嗅ぐも楽し、味わうも楽し
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2012年07月15日

私の名前は舎恩鮑姆?

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日本の最南端よりも、まだまだずっと南にあるはずの香港から北に戻るやいなや、この蒸し暑さ!窓をどこもかしこも全開にして自然の風を入れるようにしても、動きを止めたとたんにどっと汗が噴き出します。そのたびに、「そうそう、これこれ、これこそ日本の夏!!」と、何だか妙に納得しては、さまざまな思い出が巡り来るのを楽しんでいます。

電気冷蔵庫もなかった子供のころ、小さな木の箱のような冷蔵庫に入れる氷を買いに行くのが、長女の私の役目でした。氷屋さんのおじさんが、「よっ、嬢ちゃんえらいねえ」などと褒めてくれて、鋸でギコギコと真四角に透明な氷を切ってくれます。それを縄でしばって、ぶらぶらとさせながら急ぎ足で帰るのです。まるでヘンゼルとグレーテルのように、私の歩いた道筋に溶けた氷の後が続きます。

ポナペ島の父は、気温が下がらず寝苦しい夜が「熱帯夜」と呼ばれることに、いつも苦笑をしていました。「熱帯の夜は、ほうらこの風だよ、なんて涼しいんだろう。なんで『熱帯夜』なんて呼ぶんだろうねえ、まったく。」

話はがらりと変わります。

香港の面白さはたくさんありますが、その歴史的背景からも、英語と中国語がなんとなく共存していることもそのひとつです。町中でもそうですし、こんなアカデミックな専門誌でもそうです。この「中國法律」と言うけっこうな厚さのジャーナルも、「CHINA LAW」という中英のタイトルのもと、前半が中国語、後半が英語という、みごとなバイリンガル誌です。よくあるように、原語の論文の要約を別の言語で、というのではなく、一字一句きちんと翻訳されて二つの言語で載っているのです。
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そして、また別の面白さは、固有名詞の中国語表記です。たとえば、ここに家人の論文が載っています。もちろん英語で書かれたものです。タイトルは「An Evaluation of the Rotterdam Rules」.

これが中国語のページでは、「鹿特丹規則評析」となります。普通名詞の「規則評析」の方は何となくわかりますけれど、最初の三文字「鹿特丹」がRotterdam、つまりロッテルダムだなんてどうやったってわかるわけがありません。

面白いことに、夫の名前は「托馬斯・舎恩鮑姆」です。ということは、私は「直美・舎恩鮑姆」なのでしょうか。としたらまんざらでもありません。だって、魚扁の字がもらえるなんて、自称「半水棲動物」の身としては嬉しい限りです。欲を言えば、アワビではなく、すいすい泳ぐお魚ならもっとよかったのですが、贅沢は言えません(笑)。

逆もまた面白いのです。英語圏で暮らしていると、時折、会話の中に??と言う言葉が出てきます。そのおおかたは固有名詞です。たとえば初めて、「チアンカイシェック」(シェの部分にアクセントがあります)や、「マオツェトゥン」(トゥの部分にアクセントがあります)という音を聞いた時には、全く持って何のことかわかりませんでした。前後の文脈から何とか憶測をつけられる場合はまだいいのですが、そうでない時は悲しいかな、会話についていけません。

ちなみに、「チアンカイシェック(Chiang Kai-Shek)」は蒋介石、「マオツェトゥン(Mao Tse-tung)」は毛沢東です。漢字がない分、もともとの音から取っているのでしょう。

ところで、これは香港空港の全日空・ユナイテッドラウンジです。
フリーサービスのお食事全部に英語と中国語が並んでいます。
たとえばトマト味の野菜スープなら、、、、
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ぱっと見て先に目に飛び込んでくる方はどちらですか?そして、どちらの方がより早くイメージをつかむことができるでしょうか?

「Garden vegetable soup」より「田園雑菜」の方が塊りとして一瞬に理解できるというところが、漢字の素晴らしさであり、それを享受できるのもまた、漢字文化圏にいる私たちの特権かもしれません。

                       By 池澤ショーエンバウム直美

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本日のグローバルキッチンメニ
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7月15日(日): 火龍果、紅天桃、そして日本桃
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2012年06月01日

オチャか? コーヒーか?

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Cha cha cha cha?
Coffee, coffee, coffee?
ローマ行きの機内で
ショートカットの大柄な女性がワゴンを押してくる

お茶でございます
コーヒーでございます
ワシントン行きの機内で
髪をシニヨンにまとめた華奢な女性がワゴンを押してくる

日本語は
お茶、お茶、お茶、お茶?
コーヒー、コーヒー、コーヒー?
とは言えない文化

ギリシャで生まれて
2歳を過ぎてから日本の子になった娘は
言葉が魔法の泉のように沸いて出てきた頃
お気に入りの遊びは 飛行機ごっこ

お客さんの母に
おままごとのカップを手に 問いかける
オチャか? コーヒーか?

(鉢植えのオリーブの花が咲きました!
こんな黄色い花も!)

By 池澤ショーエンバウム直美



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5月31日(木):残り野菜の行く末は〜スチームクッカー
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2012年05月18日

バラ ばら 薔薇

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黄色は ブラジル
ワインレッドは フリーダム
クリーム色は ゲイシャで
サーモンピンクは シナモン

白は チベット
ピンクは ベルディ―
ピンクの縁取りがついいた白ならば マリブ

うすい緑色は ジェイドで
まぶしいような明るい黄色なら ビバ
薄紫は シルバースター

バラ ばら 薔薇

言葉の魔力
言葉の魅力

(3月 メイン州ポートランドの花屋にて)

By 池澤ショーエンバウム直美



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5月18日(金): コストコのホットドッグ 対 同窓会のホットドッグ
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2012年01月12日

古今東西名前の付け方

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 お正月のしめ飾りも外され、三連休も終わり、だいぶ普通の日常が戻ってきました。降るらしいと脅かされていた雪もまだ降らぬまま、先ほどまで唸り声を立てて吹き荒れていた風もおさまって、静かに夜が更けていきます。

 そろそろ年賀状の行き来も終わりでしょうか。

 母は私とは大違いに几帳面なところのある人で、きちんと家計簿もつければ、きちんと日記も書く人でした。そして自分が誰に何番の葉書で年賀状を出したかをも、きちんと書き留めておく人でした。年が明けてお年玉くじの当たり番号が発表されると、「あ、○○さんにXXが当たったわ。良かった!」と、喜ぶ人でした。と、言ったっておおかたは、一番最後の切手シートでしたけれど。

 大雑把な私はそんな面倒なことはしたこともありません。けれども、返事を欠くことのないように、すでにお出しした方々のお名前は、ポストに入れる前にアイウエオ順に記録をしています。今年は12月の後半から日本にいたものですから、ちょっと頑張って、いつもよりたくさん出しました。

 リストを眺めていて思うのは、実にいろいろな名前があるということです。一昨日のブログにも書いたように、私たちの日本語というのはとても豊かな言葉です。思いっきり好きな名前を自由に子供につけられるというのも、日本人の素晴らしい文化です。生まれた子供の名前を考える時、私たちはみな詩人になります。

 それに引き替え、たとえばギリシャ人。
 人ごみで、「ヤニ!」とか、「ギオルゴ!」とか、「スピロ!」とでも叫べば、たくさんのヤニスと、ギオルゴスと、スピロスが振り返ります。これらはみな男性ですが、女性の場合だって、たくさんのイリニがいて、たくさんのマリアと、たくさんのソフィアがいます。

 生まれた子供が長男ならば、だいたいは父方の祖父の名前を付けますし、長女ならば父方の祖母の名前をつけます。次男ならば母方の祖父、次女ならば母方の祖母の名になりますから、イマジネーションあふれるロマンチックな詩人になることもないのです。そしてその結果、当然ながら一族はたくさんの同じ名前に溢れます。

 ギリシャ風ならば、私は「トシ」ですし、私の長女は「澄子」、次女は「シゲ子」です(笑)。

 アメリカにしても同じようなもので、かろうじてJRはついていますけれど、祖父や父親と全く同じ名前の息子がいたりもします。「ジョージいます?」などと電話口で言えば、「大きい方のジョージ?それとも小さい方?(Big one or small one?)」などと聞かれることもあります。それでも最近は、日本のように詩人になる親も増えてきました。本屋に行けば、「子供の名前の付け方」などという本も見つかります。

 面白半分、孫が生まれる時にアメリカから買ってきた本があります。あまりに面白いその内容については、いずれご紹介したいと思いますが、本に出てくる「2005年人気名前ベスト100」の5位までをあげてみます。ちなみに( )の中は1900年〜1909年のベスト5です。

 男の子 
 第一位:Jacob(John)
 第二位:Michael(William)
 第三位:Joshua(James)
 第四位:Matthew(George)
 第五位:Ethan(Joseph)

 女の子
 第一位:Emily(Mary)
 第二位:Emma(Helen)
 第三位:Madison(Margaret)
 第四位:Abigail(Anna)
 第五位:Olivia(Ruth)
 

 やっぱりまだ随分保守的な感じがします。まだまだ詩人にはなりきっていませんね(笑)。

 ところで、全く関係ありませんけれど、せっかく年賀状宛先リストが手元にあるのですから、しかもアイウエオ順にならんでいるのですから、ちょっと電卓を叩いて遊んでみました。私の今年の年賀状の宛先、苗字ランキングは、

 第一位:ア行  27%
 第二位:カ行  16%
 第三位:サ行  11%
 第四位:タ行  10%
      マ行  10%
 第六位:ナ行   9%
      ハ行   9%
 第八位:ヤ行   5%
 第九位:ワ行   2%
 第十位:ラ行   1%

 名前の方もやってみたら面白そう?かしら、、、、

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1月8日(日):ペルージャから運んできたものは?
1月9日(月):オリーブの木のロマン
1月10日(火):オリーブ物語その2
1月11日(水):時には蕎麦でなくSOBAはいかが?
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2012年01月10日

直美も奈緒美も直海も尚美も、みんなNaomi

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 夫がペルージャの駅で買い込んで、ローマへと向かう早朝の急行電車の中で読み終えた「International Herald Tribune」は、いつものように重要な所だけをピリピリと切り取られた虫食い新聞。それを今度は私が流し読みして、気になるところを同じようにピリピリ。
これもまたいつものこと。ここらへんの順序は、レディーファーストではなく、まさに夫唱婦随です。でも、いい具合にそれぞれの興味の対象が違いますので、虫食い箇所の取り合いになることはありません。

 いまだに手元にあるたくさんのピリピリの中のひとつに、12月14日付の「Character values」という記事があります。ライターは日本女性です。しかも、ネイティブの夫が感心するぐらいに表現力のある英語を書ける日本人です。何についてかと言えば、表題の示すように「キャラクターの価値」についてです。キャラクターとはこの場合、ミッキーマウスでもなければキティーちゃんでもありません。「漢字」のことです。

「私の爪の上の文字がほとんど見えなくなってきている。けれど、私にはまだかろうじて読むことができる。」という巧みな掴みで始まる記事を読み進めれば、、、、

 12歳の息子さんをアメリカの全寮制の学校に入れることになって、その寂しさを紛らわすために、片方の親指に息子さんの名前の最初の漢字を、もう片方には「我慢」という意味の漢字を東京のネイリストに書いてもらった、と言うのです。名前の漢字は8画、我慢の方は7画ということです。8画の方を推し量ることはできませんが、「7画の我慢」というのはもしかしたら「忍」かもしれません。たぶんそうでしょう。

 筆者は、2〜3か月も前に二つの漢字を書いてもらったわが爪を見ながら、息子を想い、寂しさをひたすら我慢しています。そして、そんな自身の現状を描くことから、漢字の持つシンボリックな特性について触れているのですが、う〜ん、、、、、、

 もしも私の母親が、「直」「忍」と書かれた両手の親指を見つめながら、ため息をついている姿など想像したら、ちょっとやりきれません。そして、その文字、いえ模様を聞かれるたびに、「娘を全寮制の学校に入れたものだから、寂しくて、、、、」などと説明をするのだとしたらますますやりきれません。そうした愛情表現は何だかとても、相手をしばりつけるような気がするのです。

 とは言え、漢字はやっぱり凄い!これがアルファベットで「N」や「P」だったら、それは単に文字のまま。広がりも奥行もありません。私の名前にしたって、英語では「Naomi」という音以外の何者でもありません。何人の「Naomi」が居たってみんな「Naomi」です。

 けれども、今、これを書きながら変換してみれば、私たちの日本語はこんなに豊富ではありませんか。

 ナオミ、直美、尚美、直己、直巳、奈緒美、直実、直海、なおみ、、、、

 そして、面白いことに、それぞれの「Naomi」がひとつひとつ異なったイメージを抱かせるのです。ですから、ここにいる私は「直美」であって、時に「ナオミ」になったり、「Naomi」になることはあっても、絶対に「直海」でもなければ「尚美」でもなく、いわんや「奈緒美」ではありません。

やっぱり日本語って素敵ですよね。

ところで、前述の「Herald Tribune」の記事を書いたKUMIKOさんは、いったい久美子さん? 組子さん? 公光子さん? 公実子さん? 紅美子さん? あるいはクミコさん? それともくみこさん?  

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2011年12月25日

サイレンナイ ホーリーナイ、メリークリスマス!

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 皆様、2011年のクリスマスイブをいかがお過ごしでしたしょうか。

 私たちは明日の日曜日が、9人プラス2ワンコのファミリークリスマスです。女たちは、それぞれの得意料理を持ち寄ります。というわけで、私はこの深夜、スタイリスティックスのクリスマスCDをかけながらキッチンで働いています。ローストチキンの付け合せと、ムサカの中身が出来上がったところで、今、自分の部屋に下りてきました。

 料理はいいです。刻んだり、かきまわしたりしているうちに、気づけば無心になっています。そして料理は、次のステップに進むための想像力と創造力で遊べます。しかも、大切な人たちに食べさせたいと思えば、一生懸命に作ります。あげく、まるで「料理セラピー」と呼びたいほどに、些細なことが気になっていた自分の心が、すっきり軽くなっていくのがわかります。特に、うまく出来上がろうものなら、味見をしながらフフフと笑いたくなるほどです。

 決して家事が得意ではなかった義母が、生前よくこんなことを言っていました。同感です!

「料理はゼロをプラスにすることだからまだしも面白いわよね。でも、お掃除はいや。マイナスをゼロにするだけなんですもの。」

 おいしそうな匂いの中で更けていくイブの夜に、今、突然あることに気づいてしまいました。そうか、そうだったんですね。50年もの間、ずっと思い違いをしていました。

 あれはたしか小学校3年生の音楽の授業。いまだに口をついて出てくるぐらいですから、一列に縦並びをすれば前から3番目の小さな少女にとっては、かなり衝撃的だったのでしょう。

 音楽だけを教えに来てくれていた岡崎先生が言いました。

「みなさん、もうすぐクリスマスですね。今日は『きよしこの夜』を英語で歌いましょう。」

 そして私たち生徒に背中を向けて、白墨を持って、まるで呪文としか思えないカタカナの羅列を黒板に書き始めたのです。


 サイレンナイ ホーリーナイ (Silent night, holy night)
 オーリズカム オーリズブライ (All is calm, all is bright)
 ランジャバージン マザレンチャイ (Round your Virgin, Mother and Child)
 ホーリインファソ テンダレンマイ (Holy infant so tender and mild)
 スリーピンヘブンリ ピー (Sleep in heavenly peace)
 スリーピンヘブンリ ピー (Sleep in heavenly peace)

 そして私たちは、先生のオルガンに声を合わせて歌いました。
 サイレンナイ ホーリーナイ♪♪♪

 長らく私は、これを笑い話として自分の心の中にしまっておきましたけれど、もしかしたらこれこそ正しい英語ではないかということに今になって気づいたのです。岡崎先生はたぶん、耳から聞いたそのままをカタカナにしたのだと思います。さすが、音楽の先生です!

 昨日の孫息子の「クリスマス発表会」では、4歳児と5歳児が、英語劇「ピーターパン」を見事に演じました。ネイティブスピーカーによって口移しで学び覚えた子供たちの英語のセリフや歌は、実に「英語」でした。

 ピーラパ ピーラパ (Peter Pan, Peter Pan)
 ウィラーヨ (We love you)
 ラベリン ウォー (Travelling the world)

 それにひきかえ思い出すのは、先週の飛行機の中での会話です。アリタリア航空のフライトアテンダントがイタリアなまりの母音の強い英語で、乗客一人一人に聞いてまわります。

 What would you like to drink?

すると通路を隔てたお隣の席の中年夫婦が口々に答えました。

 ホワイトワイン!
 レッドワイン!

 さだめし昨日の子供たちなら、こう答えたことでしょう。

 ワイワイ
 ウレワイ

 どうぞ皆様、
 メリークリスマス! (日本語)

 
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12月19日(月):ポットラックパーティーの楽しみ
12月20日(火):何でもありがポットラックの楽しさ
12月21日(水):シフォンケーキも苺大福も
12月22日(木):ペルージャvs御殿場 朝ごはん対決
12月24日(土):クリスマスにはぜひこのクッキーを〜ギリシャのクラビエデス
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2011年10月28日

力不足の身ですが?

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「力不足の身だが、難局に立ち向かう覚悟だ」
 これは最近、本格的に業務を開始した、原発事故関連のある組織の理事長に着任した方のお言葉。就職試験の面接で、「できる範囲で頑張ります。」という学生を思わせます。

 私たちが求めるのは、力不足な人ではなくて、これまでの知識と経験を最大限に活用して難局に立ち向かってくれる人です。そして、出来る範囲で頑張る学生ではなくて、出来ないことに対しても果敢に挑戦しようとする学生です。

 「お忙しそうですね。」と言われて、「いえいえ、大したことやってやしませんから。」とか、「木っ端仕事ばかりですよ。」と答えれば、それは仕事に対して失礼に当たるというものです。

 エミさんのハンサムなご主人は、アメリカ国籍の九州男児。エミさんが笑い話のようにこぼします。「彼、私のこと『うちの愚妻が』って言うのよ。」

 ある時、通訳を頼まれて、「たいしたおもてなしもできませんし、ぼろ家ですが、愚妻ともどもお待ち申し上げております。」と言われて、いったいどうやって相手の方にお伝えしようか困りました。そのまま英語に直訳してしまったら、「stupid wife」が「poor hospitality」で迎えてくれる「shabby house」になど、誰が意気揚々と行く気になれるでしょうか。

 私たちの日本語は実に謙遜な言葉です。謙虚さは美しい私たちの文化です。けれども、それもTPO。

 昨日からちょっと忙しい時間の中にいます。昨夜、拙宅で力不足の身で取り組んできた仕事の会合があり、明日は朝から木っ端仕事。ま、できる範囲で取り組みましょう。

 いえいえ、そんなことはありません。取り組んできたのは、たぶん私だからできる、自分らしいことですし、皆様をお迎えするために一生懸命掃除をし、お料理だって作りました。明日は学園祭のシンポジウムでパネラーを務めます。さっきまで登り口が見えずに呻吟していましたが、クーとのお散歩の途中でふっと光が差し込んで、登山道が見えてきました。できる範囲どころか、火事場の馬鹿力まで動員して頑張ります。だって、お受けした以上、木っ端仕事なんてひとつもありませんから。

 ゆっくりと歩くお散歩で、たくさんの秋を発見しました。
 急ぎ足で駆け抜けていれば見落としていたことでしょう。

By 池澤ショーエンバウム直美


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10月23日(日):秋はやっぱり外テラス@ワシントン
10月24日(月):やっぱりこれが一番?娘の料理@TOKYO
10月25日(火):デラックス家庭科調理室@TOKYO
10月26日(水):シニアカレッジの2品@TOKYO
10月28日(金):引き寄せの法則〜飲むお酢@TOKYO
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2011年10月24日

 日本語の妙ですわ。

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 今回のワシントン暮らしの間に読んだ本のひとつが、「二つの祖国を持つ女性たち」というものでした。祖国を出てアメリカに移住した13カ国の女性たちの生き方のレポートは、帯によれば「異色の比較女性文化論」ということになります。

 この本をわざわざアメリカまで持っていったのは、祖国を離れた女性たちが、どのように新しい土地と折り合いをつけ、そこで普通に暮らすようになったのかを知りたかったからです。私自身が抱えている問題の糸口だけでも見つけることができれば、という期待もありました。

 けれども、読み進めるうちに、困ったことに、内容以前にその文体にひどく違和感を覚え始めてしまいました。そして、問題がいつの間にか、翻訳の難しさにすり替わってしまったのです。

 この本の中で、洋裁リフォーム業のトルコ人女性ゼイネップは、「そして年を取ったら、トルコとアメリカとどっちがいいか決めますわ。」と話し、パレスチナから来た土木技師のライラは「間違った観念を広めようとしていますわ。」と言い、オランダ人の栄養学者エルスは「雨が降っていましたわ。」「雇われていましたわ。」「ここで働きはじめてもう5年になりますわ。」「ぜひともオランダに行かなくちゃいけませんわ。」と、インタビューに答えるのです。

 韓国人の大学付属研究所長のステファニーまで、「彼らに滅茶苦茶にされてしまいましたわ。」「ありとあらゆる科目を勉強しましたわ。」と話しますし、アルゼンチンの仕立て屋ノーマだって「ものすごいお金持ちみたいですわ。」と言い、中国人弁護士のグレイスは自分のことを「私は変わり者ですわ。」と呟き、フィリピン人の看護婦のマリエッタは「彼らを理解するのには苦労しますわ。」とこぼしながら、「フィリピンに住んで、アメリカに健康診断に来るかもしれませんわ。」などと語るのです。

 著者はロサンゼルスに住む日本人女性。インタビューに対して返ってきた英語の答が、著者の中で翻訳変換されると、こうした「〜ですわ。」になってしまうのです。もちろん間違っているわけではありませんが、もしも(そんなことは絶対にありえませんが)彼女たちが日本語で答えたとしたら、「雨が降っていましたわ。」などとは言わないように思えてしょうがないのです。ゼイネップは「どっちがいいか決めます。」と言ったかもしれませんし、エルスは「雨が降っていたんです。」と言ったかもしれません。

 私自身で言えば、「〜ですわ。」などという表現はまずしたことがありませんし、実際まわりで話される言葉の中にも「〜ですわ。」が登場したこともほとんどありません。

 同じようなとまどいは、しばしば直接話法で語られる時にも起こります。だいぶ前のブログにそんなことを書いたのを思い出しました。ちょっと引用させていただきます。

 朝早くから始まった会議が白熱してきた頃のことです。「池澤さんが 『準備したらどお?』 と言ったので。。。」と聞いて、「えっ?それって私のこと?私、そんな言い方してない。『準備をなさったらいかがですか?』 と言ったはずよォ。」と心中異議を唱えていました。

 こんな風に違和感を覚えることはしばしばあります。
 「直美さんが 『これ違うわよ』 って言ったから。。。。。」
 (うそォ、「これ違いますよね。」 って言いました!)
 「『いいわよ』 とおっしゃったので。。。。。。」
 (いいえェ、仕事の場ではそんな言葉は絶対使いません。『いいですよ。』 と言ったはず!)

 たぶんこんな現象は、話し手が、相手を自分のイメージの中の女性像、あるいは男性像に近づけてしまうから起きることなのでしょう。もしかしたら、私が 「はい、いいと思います。」 ときちんと言ったのに、「池澤さんが 『よくってよ。』 と言うので。。。。。」となることだってあり得ます。その場合、話し手はきっと、昔の小説に出てくるような山の手のお嬢さんスタイルがお好きなのでしょう(笑)。あるいは、女はこういう言葉遣い、男はこういう言葉遣いをするものだという話し手の深層心理のなせるわざかもしれません。
 

 言葉と言うのはまさになま物です。
 いえ、言葉というのはまさになま物ですわ。
 言葉というのはまさになま物だよ。
 言葉というのはまさになま物じゃねえか。
 言葉というのはまさになま物でございます。
 言葉ってなま物じゃん。 

 等々、延々と続きそうな言葉遊び。
 そのどれもが、英語に翻訳したら、おそらくみんな同じ表現になってしまうのでは、と想像する時、つくづく日本語の妙を思います。そして他国語から日本語への翻訳の難しさを思います。

 
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2011年09月12日

ホウレンソウとVSOP

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 かつて仕事をしていた所の週一の部内会議で、必ず部長が言いました。そのたびに、「あ、また出たか。」とちょっとウンザリ。「報告してください。連絡してください。相談してください。」と、ふつうに必要なことを伝えればいいのにと、思って聞いていた反逆児でした(笑)。

 それが「ホウレンソウ」。
「みなさん、仕事にたいせつなのはホウレンソウですよ、ホウレンソウ。わかってますね。」
 
 こうした流行の言い回しってありますよね。これも使い古されると陳腐な決まり文句になります。なにやら得意気に言っているように見える場合には、モゾモゾと居心地悪くなります。英語では「cliché」(クリーシェイ)と言います。アクセントは「シェイ」の部分。もともとはフランス語です。ほとんどが悪い意味で用いられます。

 先月、日本のとある場所で耳にしたのも、ある方のスピーチの中のこんな言葉でした。この時も、「ホウレンソウ」と同じに、ちょっとモゾモゾしてしまいました。

 「だいじなのはVSOPです。」

 もちろんここで間(ま)をおきます。VSOP? ブランデー? 鰻パイ? などと聴衆の関心をひきつけるために。そんな時の話し手って、どうしてもちょっと得意そうに見えてしまうのが面白いところです。話し手が続けます。

「VSOP、そうです。VはVitality、SはSpecialized、OはOriginality、そしてPはPersonalityです。すなわち、、、、、」

 どうもこの手のことは苦手です。

「たいせつなのは行動力と専門性と、独創性と人格です。もし覚えたければ便利な覚え方があります。英語の〜の頭文字をとってVSOPと。」

 ならば全然抵抗ないのですが(笑)、、、、

 そうそう、もう一つ苦手なものがあります。会話の途中でいちいち紙に字を書いてウンチクを述べられること。あまりに度重なると、少々興が冷めます。

「ほら、親と言う字は、木の上に立って子どもを見る、じゃないですか。」とか、
「姦しいという字は、ほら、女を三つ書くじゃないですか。」とか、、、、、

 これもまた「クリシェイ」です。

 かくいう私の口癖のひとつは、「すごく」という言葉でした。でも、友に指摘されるまでは全然気づかずに使っていました。教えられたら恥ずかしくなって、以後、言いそうになると自動的にブレーキがかかるようになりました。こうしたことをきちんと伝えてくれる友や家族は貴重です。たぶん、ほかにもきっと私の「クリシェイ」はあるはずですが、なかなか自分自身では気づかないものです。

 最近嬉しかった「ホウレンソウ話」をいくつかご紹介したかったのですが、前文が長くなり過ぎました。また明日にします。

 ハリケーンが良い季節を運んできました。暑くもなく、寒くもなく、「すごく」爽やかです。昨日のセプテンバー・イレブンの空も明るくすみわたり、飛行機が飛んで行く姿が見えました。

 人々は、ドッグランでワンコたちと遊び、テニスをし、夕暮れ間近の木陰でバーベキューを楽しみます。この典型的コンドミニアムには、いかにもアメリカらしく、プールやジムばかりでなく、ドッグランもテニスコートもバーベキューテーブルもあります。

 セプテンバー・イレブンを忘れることはできなくとも、こうして日常生活を楽しむこともまた、私たち生きている者のつとめ。

 ところで「ドッグラン」と言う言葉。これは夫に言っても??という顔をされる和製英語です。英語では「Dog Park」。面白いですね。
                          By 池澤ショーエンバウム直美

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9月11日(日):オバマバーガー?
9月12日(月):巨大マッシュルーム登場


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2011年06月02日

もう6月? まだ6月?

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 6月なんてまだまだ先だと思っていたのに、どうしましょう、もう6月だなんて。

いつぞや、劇作家の野田秀樹さんが、時間のとらえ方で南国の楽園に向いているかどうかがわかる、と書かれていたことを思い出します。

「30分ぐらい遅れそう」と連絡をした上で、実際は20分遅れで約束の場所に駆けつけたら、「5分ぐらい遅れそう」と連絡をしてきた相手も同時に到着。

「同じ20分の遅刻を、私は30分と読み、先方は5分と読んだ。先方の方が楽観的だ。その20分の間、先方は、ま、5分ぐらいだから、どうってことねえや、と考え、私は、その20分間、罪悪感と共に生きた。人間としては私が立派だ。でも長生きしそうなのは、先方だ。南国の楽園で幸せに暮らせるのは先方である。」

 という見方で行けば、「もう6月だ」なんて言っているよりは、「まだ6月だ」と言う方が断然南国の楽園向き。南国の楽園で幸せに暮らしたい私は、冒頭の前言をひっくり返して、呟き直すことにします。

「なんだ、まだ6月だ。」

 さて、そんな6月最初の日に発売された「とある」女性誌に、写真付きで小さな記事が載りました。「とある」なんて恥ずかしそうに言っていること自体、全然南国的ではありませんけれど、ご一緒した他の方々の顔ぶれがあまりにゴージャスなのものですから、やっぱり気恥ずかしくて、、、、、美容ジャーナリストの齋藤薫さんと、女優の羽田美智子さんと本上まなみさんなんですから。

 けれども、「私を元気にしてくれる名言集」という特集の中で、私が語っていることは、とても南国向きです(笑)。そして、これはたくさんの質問を通して、「言葉」について考えるためのとても良い機会となりました。ワシントンのショッピングモールのベンチで、マサチューセッツの霞むような春景色の中で、そしてプエルト・リコで海を眺めながら、
思えば随分「言葉の力」について考えていたように思います。

 結局私は、自分を元気にしてくれている3つの言葉を発見し、「座右の銘」にしている言葉を考え、「ナオミさんにとって言葉とはどういう意味を持ちますか?言葉って何でしょう?」という問いの答を見つけようとし、「これまでの人生において、言葉のもつ力を感じた瞬間があれば教えてください。」と問われて、我が人生の様々な場面を思い起こしました。

 紙面では表しきれなかったさまざまな思いを、追々このブログでお伝えしていければと思っています。

 さて明日は、グローバルキッチンの2回目。「もう2回目」ではなく、「まだ2回目」です。よしよし、だんだん南国思考に近づいてきました(笑)。

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5月29日(日):恒例の家族バーベキュー
5月30日(月):赤道を越えて〜ニュージーランドと太平洋の島々
6月 1日(水):大成功のパブロバ

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2011年05月02日

自由か死か

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 ここ、ニューハンプシャー州のモットーは「Live Free or Die」。
「自由に生きるか死ぬか」です。これはアメリカの独立へと繋がった戦争で大きな働きをした、地元のジョン・スターク将軍の言葉です。

 独立戦争の頃からいったい何百年たったというのでしょう。世の中は変わっていることだし、何もそこまで黒白つけなくたっていいんじゃない?と、最近ではとみに「ま、いいか」型の私なぞはついつい思ってしまいます。

 この究極の選択は車のナンバープレートにもしっかり書かれていて、私たちが空港で借りた真っ赤なレンタカーも「Live Free or Die」と一緒に走り続けています。

 レンタカー置き場でずらりと並んだ車を見て、すぐに浮かんだのは青と白のストライプがあざやかなギリシャの国旗でした。実はこの、青5本、白4本の9本のストライプもまた「自由か死か」を意味するのです。
fgr.gif

 ギリシャに移り住んだ初期の頃、日本大使館で仕事を始める前のすき間で、何度かガイドをしたことがあります。たいていはまだ朝暗いうちに空港までグループを迎えに行き、だんだんと明るくなるバスの車内でマイクを持って、最初に話すのがこのことでした。

「国旗のこと忘れないで話してよね。」とは、「ナオミ、ちょっと手が足りないんだけど手伝ってもらえないかな。」と頼んでくる旅行会社の友、スピロスが、「そんなに何度も言わなくたってわかってる!」と憤然とする私におかまいなく、いつもしつこく口にしていたことでした。それほどに「自由か死か」はギリシャ人の誇りなのでしょう。

 このギリシャの青と白の旗のどこに、そんなメッセージが読み取れるのでしょう、

「自由か死か」はギリシャ語では、「Ελευθερία ή Θάνατος」になります。読み方と意味は「エレフセリア(自由) イ(または) サナトス(死)」です。

 さてここで質問です。この中には母音を含む音節がいくつあるでしょうか。皆様が指を折っているうちに明かしてしまえば、

 Ε λευ θε ρί α ή Θά να τος
 エ レフ セ リ ア イ サ ナ トス

の9つです。ほらほら、9という数字、どこかで出てきませんでした?
そう、5本の青+4本の白=9本です。つまりギリシャ国旗のストライプは単に美しいからというのではなく、実はこんな強烈なメッセージがこめられていたのです。

「Live Free or Die」をつけられた私たちのトヨタカムリは、足の向くまま気の向くままに昨日も一日走り続けました。ダートマス大学の学部長とお昼の食事をし、湖の周りをぐるぐる走り、今は誰も住んでいない廃墟のような大邸宅を訪れ、誰もいない庭園で失われた時を感傷的に思い、夜にはこの町のコルビー・ソーヤー大学の学長夫妻と夜が更けるのも忘れて楽しく飲み、食べ、おしゃべりをしました。

 自由か死かの選択をする気はありませんし、選択をしなくてもすむ時代に生きていることをありがたく思います。が、ふと気づけば、一昨日も昨日も、そしてきっと今日も「Live Free」。やっぱり車のナンバープレートに煽られているのかな(笑)?

 今日は朝食後にこの古いインをチェックアウトし、お隣の州、マサチューセッツへと「Live Free and Go!」です。
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5月2日(月):ニューロンドンインの夕食
5月3日(火):本場のシーフードチャウダ?ー〜サナペー湖
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2011年02月04日

春近し 立春の夜の ウフウフフ

250px-Zubin_Mehta_2007.jpgアンカラ.jpg 
 まあ何ともふざけたタイトルですけれど、お許しください。東京は、「立春」という言葉によく合った、春の始まりを予感させる暖かな日となりました。たくさん泳いで身も心も軽くなって、たくさん読んで心潤って、たくさん料理してストレスを発散し、すっかり春待ち気分です。

 そんな時にはちょっとばかり、あの引き出しを開けてみたくなります。ほのぼのとおかしくて、思い出すたびに一人笑ってしまいます。混み合った電車の中なぞでつい開けてしまえば大変です。怪しい人と思われぬように、ひたすら下を向いてニヤニヤしなければなりません。これだって十分怪しい人ですが(笑)。

 引き出しの中にはたくさん詰まっています。今夜取り出して、飽きもせず吹き出したのはこの2つ。どちらもおそらく「自動翻訳機」なるものの仕業です。

 まずはこれ。昨年の10月にアメリカから飛んできた友人夫妻と一緒に北イタリアを旅した時のもの。古都ヴェローナの由緒あるレストラン「TRATTORIA TRE MARCHETTI」のホームページの日本語訳です。ここは、オペラのシーズンになれば、隣のテーブルにドミンゴやカレーラスが座っていることも珍しくないというレストラン。室内の雰囲気も、使われているお皿やグラスも、もちろん出てくるお料理だってとても洗練されています。

 ドミンゴもカレーラスもいなくたって、店主のオペラ歌手が突然店内で朗々と歌いだします。私たちが食事をしていた時に、鳴り響いたのは「トスカ」の一曲でした。

 そんな素敵なレストランが、日本語に翻訳されるとこんなになってしまいます。

「当ホテルのレストランの哲学はヴェネト地方とそのすべての素晴らしい製品の強化は、私たちの家、キッチン、目の口蓋上記の喜びの食品。

4.00は、観客とオペラのアーティストのお越しをお待ちして時まで夏の夜は、魔法の年を浸透するとき、我々は、開いているので、夕食をプラシドドミンゴ、ホセカレーラス、レオヌッチ、または横にしては珍しいことではないズービンメタ。その多くが当ホテルのレストランの20年の生活の中で我々の食卓を飾ってゲストです。」

 一生懸命笑いをこらえていても、「横にしては珍しいことではないズービンメタ」の所まで来ると、もう我慢ができません。あの世界的な指揮者、ズービン・メータ氏が横になって指揮棒を振っている姿を想像してしまうのです(笑)。

 もう1つがこちらです。昨年の3月に「FOODEX」のトルコブースで仕事をした時に出展していたパスタ会社の日本語版HPです。

「こねこっぽいマカロニをどなたが食べたいんですか。この部分にはパケットにある。輝くマカロニを煮る時には何を注意するのを強調したいです。本の特色をはかんじてどうやってマカロニを煮りますか。マカロニ早く消化されるので太られません。」

「マカロニの作り方:セモリナは水と交ぜるといいこねこを作るまでねられます。おまけのマカロニのためにビタミンや野菜などのおおおまけはその間に加えます。このこねこは圧迫くで形作るのに恰好の中に入れます。なりたったこねこ型は乾かします。休養されたマカロニは手をつけないで包み機械でお好きな放送とグラムで放送された販売のため準備されます。」

 もうめちゃめちゃ意味不明で、めちゃめちゃ可愛いのです。何たってマカロニをこねれば仔猫になっちゃうんですから(笑)。「ANKARA」というブランドのパスタです。ご覧になってみます?
 http://www.nuh.com.tr/japanese/urunler.html

 やっぱり日本語は難しい。そして言葉は機械では置き換えられないもの。

 引き出しの中にはまだまだありますけれど、今日はひとまずここでお開き、いずれまた。
「ウフウフフ」のおかげで楽しく眠れそうな立春の夜です。
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グローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku  (土日閉店)
2月4日(金):恵方巻は南南東で
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2009年02月26日

直接話法にはご注意あそばせ

 直接話法は苦手です。私が全く嫌いなタイプの私になってしまうからです。別の言語に翻訳をされてしまうようなものです。心の中で、「ちがう!私、そんな風に言ってない!」 と叫びながら、いつもとても居心地の悪い思いをしています。声色をつけて言われようものなら、背筋がゾクゾクとアレルギー反応を起こしてしまいます。

 朝早くから始まった会議が白熱してきた頃のことです。「池澤さんが 『準備したらどお?』 と言ったので。。。」と聞いて、「えっ?それって私のこと?私、そんな言い方してない。『準備をなさったらいかがですか?』 と言ったはずよォ。」と心中異議を唱えていました。

 こんな風に違和感を覚えることはしばしばあります。
 「直美さんが 『これ違うわよ』 って言ったから。。。。。」
 (うそォ、「これ違いますよね。」 って言いました!)
 「『いいわよ』 とおっしゃったので。。。。。。」
 (いいえェ、仕事の場ではそんな言葉は絶対使いません。『いいですよ。』 と言ったはず!)

 たぶんこんな現象は、話し手が、相手を自分のイメージの中の女性像、あるいは男性像に近づけてしまうから起きることなのでしょう。もしかしたら、私が 「はい、いいと思います。」 ときちんと言ったのに、「池澤さんが 『よくってよ。』 と言うので。。。。。」となることだってあり得ます。その場合、話し手はきっと、昔の小説に出てくるような山の手のお嬢さんスタイルがお好きなのでしょう(笑)。あるいは、女はこういう言葉遣い、男はこういう言葉遣いをするものだという話し手の深層心理のなせるわざかもしれません。

 でも、やっぱりこれはちょっと苦手です。その場に居合わせない第三者が聞いたら、背筋をピンと伸ばしたビジネスの場で、本当に私が、「この企画、よくってよ。」と言ったと思うかもしれません(笑)。 

 私自身はたぶん無意識のうちに客観的・ニュートラルな表現をしているように思います。たとえば、「山田さんが 『来週の予定はどうなってるの?』 とお聞きになりました。」とは言わずに、「山田さんが来週の予定についてお聞きになりました。」 と言っているだろうなあ、と思います。

 去年の春、ギリシャの大学で、日本語vsギリシャ語比較論の講義をした時のこと、朝起きて窓の外を眺め 「It’s a beautiful day !」と言う人の言葉を、面白半分でたくさんの表現方法で伝えてみたら、学生たちが目を丸くしていました。

「いいお天気だねえ。」
「いい天気だよ。」
「いいお天気です。」
「いいお天気でございます。」
「おっ、いい天気じゃん。」
「いい天気ですわねえ。」
「いい天気ですこと。」
「いい天気でござる。」
「いい天気じゃ。」

 等々、中味は同じでも、表現ひとつで話し手のイメージが面白いほどにコロコロ変わっていきます。日本語というのはつくづく奥深いもの。こんなに何層ものニュアンスを表現できる言葉を勉強するなんて、私が外国人だったらとっくにお手上げです。日本人に生れて良かった!

 それにしても直接話法には注意しろ! 注意しましょう! いえ、ご注意あそばせ。
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 言語

2009年02月01日

8プッシュのレトリック

 3年近くギリシャに住んで、夜間の学校に通い、帰国後も10年近くをギリシャ人たちと一緒に仕事をしてきたものですから、多少のギリシャ語ができます。たとえ「多少」 でも、英語やフランス語と違って珍しい特技ですので、これまで何度かギリシャ語のネーミングを頼まれてきました。タレントの写真集には「ククラムー(私のお人形さん)」 、銀座の宝石店には「アステリー(星)」 、人の集まる音楽学校には「プラティア(広場)」 等々。そうそう、4年前に作った自分の小さな会社の名前も「プラティエス(広場の複数形)」 です。近々では、「サリナ(ハッピーエンドの女神)」 という化粧品、「銀座トリアンダ(トリアンダフィラ=薔薇)」 という会社がありました。

 モノに名前をつけるのは大好きです。イメージを考え、響きを考えながら、言葉を探して行きます。手元には随分昔にバンクーバーの古本屋で見つけたアルファベットの開運学のような本まであり、これをいつかきちんと読破して本気で「名づけ屋さん」 を開業したいぐらいです。(笑)

 さてさて新製品の「サリナ」 は名前のイメージに合ったパステルピンクのガラス瓶の美容液です。この化粧品を一生懸命口コミ宣伝している友人がいます。美しい肌の華やかな人で、化粧品のスポークスマンにはうってつけです。熱意が高じて、「とてもいいのよ。私なんか毎朝毎晩8プッシュも使っているぐらい。」 と、彼女のコンプレックスでもある、少しばかり皺とたるみの目立つようになった首筋を示します。初め聞いた時には、「なるほど、8プッシュも使いたくなるぐらい良い美容液なのか。じゃあ私も使ってみよう。」 と思いました。でも、別れて10分歩いたところで、「ん?8プッシュも使わなきゃ効き目がないってこと?」 と気づいたところで、足が止まってしまいました。日常生活の中のこうしたレトリックってなかなか面白いですね。

 ところで、時間がたつのは何と早いことでしょう。新しい年が始まったばかりと思ったら、今日は「まだ」 2月1日。

 明らかに矛盾しているこの「まだ」 という副詞に隠された私の願望と焦り、わかっていただけましたでしょうか。
     (ああ、どうしよう、「もう」 2月だ!)

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 07:53| Comment(1) | TrackBack(0) | 言語

2009年01月22日

挫折の後の三美女開

 名古屋からイクコさんが上京するのに合わせて、本年初の三美女開が田園調布のレストランで開かれました。議題は「挫折の後の戦略」について。

 時は遡って昨年の春、鎌倉の東慶寺で筍づくしの膳を堪能した後に、お堂で若手バイオリニストのコンサートを楽しむという粋な催しがありました。同じテーブルを囲んだ方々とたまたまオペラの話題になり、私がつい口を滑らしたことが三美女開の発端となりました。「来年(2009年の11月にワグナーの指輪全4作を1週間連続でやるんですよ。思い切って切符買っちゃいました。」発言にその場で2人の美女が「私たちも行きたい!」とエントリーしてしまったのです。と言っても、一年何ヶ月も先のこと、しかも場所はアメリカのワシントンですのに!

 その後、誰からともなく「どうせやるならついでに何かやりましょうよ。昼間は暇なんだから。」と言うことになり、話はどんどんと発展し、ワシントンで「源氏物語に見る草花の世界」展を開催するという企画ができあがりました。ミサコは素晴らしい感性で植物を描く作家、イクコはやたら顔の広い展覧会オタク、そして私は企画屋、しかも3人が3人とも遊び心も挑戦心も人並み以上と来ていますから、みるみるうちに企画は膨らんでいき、ワシントンでの開催場所もほぼ決まり。。。。。。

 ところが、昨年のリーマンに端を発した金融危機の大波が1週間のオペラ公演を中止にさせてしまったのです。つまりは私たちが今年の11月にワシントンに行く本命の理由がなくなってしまいました。ということで、今年最初の三美女開の議題は、「挫折の後の戦略会議」。

 結論?大丈夫、「遊び心+感性+挑戦心」の三要素に、山あり谷ありを嫌と言うほど経験してきたオバサンパワーが加われば、挫折は次のワクワクステップへと化学変化を起こします。予定通りに、あるいは予定したものよりもっと面白く東京で開催するために、私たちは動き始めました。

 最後に三美女開なるものについて一言。実は仲間とのメールのやり取りの中で誰かが変換ミスをしてしまったのです。以来、私たちの会合は、こうなれたらいいねえ、というそれまでの「三美女会」から何となく幸先もよさそうな「開」に代わりました。

P.S. 変換ミスは時折楽しいヒット作を生み出しますね。仕事上のやりとりでも「ただ今テスト鯖にアップしました。」以来、「鯖を俎上に乗せました。」「鯖は鮮度が命、なるべく早目にご賞味ください。」だのというメールが飛び交うようになりました。張り詰めていた空気がその時ばかりはふっ〜と和みます。ちなみに、鯖=サーバーです。日本語は面白い!

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 07:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 言語

2009年01月13日

こほり水 豊かなり〜英語で言ってみれば?

P1120340.JPG 時折ジャパンタイムズを斜め読みすると、必ずと言ってよいほど日本の新聞では見つからないような記事に出会えて嬉しくなります。レストランの紹介記事にいたっては、かなりの確率で当たりますので、我々のように新しい物好きの食いしん坊にとっては、紙上で取り上げられた場所に食べに行くのは週末の楽しみの一つです。
 
 レストランではないのですが、昨夜行った所もジャパンタイムズの記事に導かれてのことでした。渋谷駅からほど近い明冶通り沿いの小さなギャラリーで、能の公演があったのです。通りを歩く人たちが大きなガラス越しに中を見渡せるその場所は、30から40人も入れば一杯になってしまうようなところ。そもそも能を伝統的な能舞台ではなくてギャラリーで?という驚きは序の口で、何とこれは英語能なのです。しかも若手アーチスト、桜井真樹子さんの創作。初めは「英語で能なんて」と思っていたのですが、「マンハッタン翁」というその作品は、あなどるなかれ、なかなか素晴らしいものでした。能の所作、しきたりをきちんとふまえた流れの中で、地謡のリチャード・エマートさん(喜多流)の英語が朗々と響き渡ります。たとえば、幕開けはこんな感じ。

Icy waters abundantly flowing
Surging swelling
A river in early spring
Reeling rolling
 (こほり水、豊かなり。たゆとひ流る 春の河。うねりし姿。)

 実に不思議なことに英語がまるで違和感なく謳と語りに溶け込んで、音としてとても心地よいのです。しかも、もしかしたら日本語の能の言葉よりもわかりやすい(笑)。ストーリーもわかりやすく、マンハッタンに住む3人の老人〜ヒスパニックと日系とアフリカン〜が最期の時を孤独に迎える中で、自分の貧しい人生を振り返りながら、花の精に導かれて天に昇っていくというものです。翁たちを導くのは、ヒスパニックの老人には水仙の精、日系の老人には桜の精、そしてアフリカの老人には百合の精。能のことはあまり知りませんので大きなことは言えませんが、白壁の空間が震えるほど寒かった点さえのぞけば、地謡は言うに及ばず、シテもワキもこ小鼓も能管も声明も、皆さんたいした力量で、休みなしの2時間半、居眠りもせずに最後まで身を乗り出していました。

 若い人たちによるこうした斬新な試みはいいものです。あまり知らなかった世界に触れるのもいいものです。でももうちょっとは能のことも知らなければ.....と反省。

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 19:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 言語

2009年01月08日

七草粥と日本語の妙

P1070312.JPG 新年も1週間が過ぎました。車に乗っている時間が長かった昨日は、ラジオを付けっぱなしにしていたために、耳にタコができるぐらいに七草粥の話を聞かされました。「邪気を払い健康な一年を祈って食べるもの。おせち料理で疲れた胃を休めて、野菜が不足しがちな季節に栄養補給をする。」というのがその趣旨だということは私も知っていましたが、今の時代に、これほど話題にされているのにまずは驚きました。たしかに、スーパーには七草をコンパクトに並べた「七草粥セット」が売られています。昨夜は外食だったために、残念ながら我が家では粥を食べることはできませんでしたが、こうして季節ごとの行事を日常生活の彩りにすることはとても素敵ですね。

 せり なずな
 ごぎょう はこべら ほとけのざ
 すずな すずしろ はるのななくさ

 子供の頃に教えられて、今でもこうして口にすることができるのは、日本語の優れた点です。一つ一つの音が母音を伴う日本語は、一音の長さも同じですから「せ・り・な・ず・な・□・ご・ぎょ・う・は・こ・べ・ら」という具合に呪文のように繋げていくことができます。しかも古くから私たちの体には、和歌や俳句のリズムが受け継がれていますから、この春の七草のように、5音と7音を組み合わせて使えば、簡単に覚えられます。

 夕食を食べながら「英語でもこういう覚え方ってある?」とパートナーに聞いてみたら、ひとしきり首をひねった後で、「う〜ん、あまりないなあ。すぐには思い浮かばない。」との答。調子に乗って、「私たちは歴史の勉強で年号を覚えるのも簡単だったのよ。『納豆の売れぬ日はなき平城京(710年)、泣くよ鶯平安京(794年)、いい国鎌倉幕府(1192年)、いよお国が見える(コロンブスのアメリカ大陸発見 1492年)………』などと羅列し始めたら、止まらなくなるぐらい昔取った杵柄が出てくるわ、出てくるわ!連れ合いの方はと言えば、驚きと羨望でしばし食べるも忘れ。。。。

 英語ではコロンブスのアメリカ大陸発見は単純に「Fourteen Ninty-two」、私たちが小学校時代に一生懸命覚えた掛け算九九は、「サンゴジュウゴ」が単に「Three times five is fifteen.」だったと言うのですから、日本語が美しく奥の深い言葉であるだけでなく、いかに便利で実用的な言葉であるかがわかります。

 さて7日は年末から飾っていた注連飾りを外す日でもありました。松の内も終わり、いよいよ今日からは完全にお正月気分ともサヨナラです。我が家の注連飾り、今年は、年内不在だった私たちのために娘がこんなモダンなデザインの飾りを取り寄せてくれて、昨日までドアを飾っていてくれました。

 ところで子供の頃、お客さまの前で得意げに「松の内」を「幕の内」と言ってしまって大恥をかきました。これも日本語の妙です(笑)。

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 07:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 言語