2013年02月02日

プライベートアワーから始まった古典の世界(前回からの続き)

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先生はまわりに人がいなければ、「栄花物語」を声に出して読みます。語調もいいですし、その方が理解もしやすいからです。

高校時代には夕食後の30分から1時間が受験勉強から離れて自由になれる時間でした。先生はこれを「プライベートアワー」と呼びます。プライベートアワーには、こっそり隠れて源氏物語を読んだり、血沸き肉踊らせながら平家物語を読みました。ですから、古文の勉強など何一つしなくても、入学試験はいとも簡単だったそうです。

「だって、ふつうの人が小説を読むように僕は古典を読んでいたのだから。」

その後、数学者になってから、物の感じ方、表現方法、人情の機微に対する感覚が「とても数学者には思えない。」と周りの人たちから言われたのも、おそらくは読み込んだ古典の影響だろうとおっしゃいます。

ドナルド・キーンさんもまた、コロンビア大学時代に、「Great Books of Western World」という西洋古典を読破しました。西洋文明へと繋がるアメリカ人としての自己を見出したことが、キーンさんをして日本への関心へと向かわせたように、日本の古典を理解した人こそが真の意味の国際人になれる、というのが先生の持論です。

昨今、イギリスの名門オックスフォード大学でも、ビジネスではなく文学・芸術などの分野に進む優秀な学生が増えているとのこと。そうしたリベラル・アーツ(教養教育)への回帰はとても意義のあることだと先生は語ります。

同じような意見を、今日のフォーラム「グローバル人材の育成と活用」でもお聞きしました。「すぐに役立つ人間はすぐに役立たなくなる人間」と、慶応の清家篤塾長が即戦力要望の是非を問いました。これもまた、たいへん有意義なフォーラムでした。この模様はまた機会をみてまとめてみたいと思います。

ところで、古代ギリシャから現代までをとらえたリベラル・アーツ教育の集大成とも言える先生の本が、ようやく最初の校正の段階に入りました。発端から3年あまり、その過程をご一緒させていただけたことは、私にとっても大変嬉しいことでした。昨年のクリスマスカードには、いつものように丁寧な字でこんなありがたい言葉が書かれていました。「あなたが傍にいておだてたりしなかったら、本は書けなかったかも、、、、」

いずれ出版の詳細が決まりましたら、何らかの形でご案内をさせていただきます。

By 池澤ショーエンバウム直美


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グローバルキッチンメニュー
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2月1日(金):らしくないの面白さ バルセロナの日本レストラン「MIU」
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 00:24| Comment(0) | 友人
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