2012年11月12日

たった一つの出会いから〜エドナ・セント・ヴィンセント・ミレーの物語

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ひとつの言葉が別の言葉へと繋がって
ひとつの思い出は別の思い出へと繋がります。
まるで連歌のように。

サンドラ・デイ・オコナーというアメリカの「傑出した女性」について書いている途中で、私の頭の中を何回かよぎったのは、エドナ・セント・ヴィンセント・ミレー(Edona St.Vincent Millay)という詩人のことでした。彼女もまた、ある意味で「傑出した女性」でした。

9月の初め、私たちはメイン州バーハーバーから、いくつもの小さな町や村を抜けて海沿いに南へと走りました。最後の目的地はロックランドでした。

1892年、ロックランドの貧しい家庭で、エドナという女の子の赤ん坊が生まれました。父親は漁師でしたし、母親は洗濯屋でした。小さなエドナは成長して、女性詩人として初めてのピュリッツァー賞の受賞者、エドナ・セント・ヴィンセント・ミレーとなりました。今ではその名前を知る人も少ないでしょうが、20世紀前半には最も人気のある詩人のひとりだったと言います。

これは、その昔、エドナの妹がウェイトレスとしてアルバイトをしていたカムデンのホテルのロビーです。いつしか姉のエドナも妹を手伝って、ホテルのお客様のおもてなしをするようになりました。まだ16、17歳、高校生の頃でしょう。彼女は、ピアノを弾き、自分の書いた詩を読みました。
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そこには、暑さから逃れて夏を過ごすニューヨークやボストンの富裕層たちが滞在していました。その中のひとり、ニューヨークから来ていたお金持ちの婦人が、エドナの詩に心を打たれ、驚くような申し出をしたのです。

「私が学費と生活費の全てを出すから、あなたは好きな大学で勉強をしなさい。」

これは、大学で学ぶことなど考えられもしなかった境遇のエドナにとっては、まさに夢のような話でした。エドナは名門、Wasser大学を選び、そこで最高の教育を受ける機会に恵まれます。そして後に社会に影響を与えることになるようなたくさんの人たちに出会います。卒業後は故郷に戻らずグリニッジヴィレッジで暮らすようになった彼女の才能はますます輝き、多くの詩を発表します。

初めて会った少女の才能を信じて、無償の助けを申し出たこのご婦人がいなければ、エドナ・セント・ヴィンセント・ミレーという詩人は存在しなかったことでしょう。夫がぽつりと言いました。

「No one would do that today.」

今でも、高校生の彼女が自作の詩を読んだ小さなホテルの部屋は、「エドナ・セント・ヴィンセント・ミレーの部屋」として保存されています。彼女が弾いたピアノに誰でも触れることができ,そこで育まれた芸術と夢と善意が、100年たった今でも部屋の中に漂います。
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これは、その壁にかけられた、215行にも及ぶ彼女の代表的な詩「Renascence」の最初の4行です。
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All I could see from where I stood
Was three long mountains and a wood;
I turned and looked the other way,
And saw three islands in a bay.

私がそこから見ることができたのは
連なる3つの山々と森
振り返れば
湾に浮かぶ3つの島

カムデンの町の小さな古本屋で、偶然にもエドナの詩集を何冊か見つけました。今ではなかなか買うことができない本です。そして、何とその1冊は初版でした。そして別の1冊には表紙を開けると様々な字体のたくさんの名前が書かれていました。おそらく、結婚や出産などのお祝いに、友人たちが連名で誰かにプレゼントをしたものなのでしょう。
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こうして、我が家の本棚には、エドナ・セント・ヴィンセント・ミレーという、今ではあまり思い出す人もいなくなってしまった女流詩人の詩集が5冊も並ぶことになりました。もう少し余裕ができたら、毎日少しずつでも読んでみたい、、、私のウィッシュリストの新項目です。

By 池澤ショーエンバウム直美

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11月11日(日):鳩とオリーブのランチョンマットに一目惚れ
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 11:49| Comment(0) | 本、映画、コンサートなど
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