2012年11月09日

最後に思い出すのは〜アメリカ最高裁判所日記(2)

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アメリカ合衆国の最高裁判所には9名のジャッジ(判事)がいます。意外だったのは、あの壮大な建物に9名しかいないということでした。しかも彼らには定年というものがなく終身制です。つまり、大統領に指名され、最高裁判所判事に任命された時から、在任中に死亡したり、犯罪を犯したりしない限り、自らが引退を決めるまではずっとその職にあるのです。

別の面から言えば、最高裁の判事になりたい人にとっては、かなりの狭き門ということになります。空席ができない限りは機会がないのですから。

もし引退したとしても、65歳以上の年齢に在職年数を足したものが80を満たせば「シニア・ステイタス」と呼ばれる特別な資格が付与されて、現役時と同額の報酬と共に、秘書やロークラークを雇う権利が与えられるというのですから、それがどんなに特別なポストであるかがわかります。

現在は9名のうち3名が女性です。
年齢は54歳から81歳、在任期間は5年から29年です。
法廷では、期間の短い判事から順に、こちらから見て左側の椅子に座ります。
一番左の2名を指名したのはオバマ大統領ですし、一番右の2名を指名したのはレーガン大統領でした。

先の「シニア・ステイタス」のルールに照らしてみれば、現職の9名中5名の判事が、すでに「シニア・ステイタス」、つまり生涯保障を受ける権利を有しています。

それだけではありません、いえそれだからでしょうか。
「Your Presidents」の本の隣に「Your Supreme Court Judges」などという本が並ぶぐらいに、それは名誉ある職業のようです。
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さて私たち、総勢6名は、法廷での承認式が行われる前に、いくつもの検問といくつものドアを通って、まるで大奥のような一角の大きなオフィスに通されました。そこがクラレンス・トーマス判事のセクレタリーとクラークの執務室、そしてそこから内扉で続いているのが判事の部屋でした。
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9名のうち唯一のアフリカ系黒人であるトーマス判事は、私たちの1人1人と握手を交わし、大きな体によく似合う大きな声で豪快に笑う方でした。主役のジェシカばかりでなく、スポンサーにもゲストにも言葉をかけ、時に共通の知り合いの近況などで盛り上がったりするかと思えば、私たちのちょっとしたユーモアに大笑いし、また自分で言った言葉にも大笑いをしながら、私たちの緊張をほどきます。

「いいねえ、今日は。みんなで一緒に写真を撮らないか。
 あ、そうか、ここはカメラの持ち込み禁止だったね。ワハハハ。」

「東京から? どのくらいのフライトタイムなの?」

「はい、行きと帰りで多少違いますけれど、14時間ぐらいです。おかげで映画を4本も楽しむことができます。」

「4本も! そりゃいい、ワハハハ。」

こんな具合です。もちろんその端々に最高裁バーメンバーとしてデビューをする若い弁護士に向けてのメッセージをさりげなくはさみます。

フレンドリーなのは判事のお人柄だけではありません。そのオフィスの様子もそうでした。大きな机の上には十字架とキリストの像が置かれ、右側の書架にはぎっしりと法律の本、その上にはリンカーンの胸像、左側の書架にはたくさんのフットボール。その楕円形のボールの表面にはいくつものサインが書かれています。おそらくトーマス判事は学生時代にはフットボールの選手だったのでしょう。そしてボールを取り巻くように並んでいるのが、何枚ものご家族の写真なのです。しかもこんな大きなラベルまで貼ってあります。
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私たちが座るソファーの前のテーブルにはロリーポップ(棒つきキャンディー)のバスケット。アメリカに9名しかいない名誉ある最高裁判事の部屋が、そんなセッティングなのです。「トーマス判事!」ではなく、思わず「クラレンス!」と呼びかけたくなるような。

最後まで笑い声を絶やさなかった判事は、私たちを廊下に出て見送ってくれました。そして、その30分後には、法廷の檀上に黒い法衣を着た厳粛な姿で登場しました。

判事のオフィスのプレートに刻まれていた文字が強く心に残っています。最後に思い出すのは敵の言葉ではなく、友人の沈黙、、、、、、、キング牧師の言葉です。

In the ends we will remember not the words of our enemies,
but the silence of our friends.


By 池澤ショーエンバウム直美

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グローバルキッチンメニュー
http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
11月8日(木):アラバルデロ〜スペイン政府も一押しのレストラン?(前篇)
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 00:33| Comment(0) | アメリカライフ
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