2012年06月20日

その分いいことに時間を使わなければ〜ロングフェロー家の老婦人

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メイン州ポートランドの中心部からさほど離れてはいない所に、アイリスとライラックと、牡丹と白い山吹が美しく咲く庭があります。そして、それを隠すようにして、18世紀に建てられた古いレンガの家が建っています。

そこが、19世紀にポートランドで生まれ育ったアメリカが誇る大詩人、ロングフェローが暮らしていた家です。家自体は彼の母方の祖父によって建てられました。

いちおう英文科でしたから、その名前ぐらいは頭に残っていましたけれど、恥ずかしながら作品を読んだことはありません。アメリカの人たちならば、そのひとつや二つは学校で習い覚えていると言います。200年目のお誕生日を祝して、2007年には39セント切手になったぐらいです。
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この建物は今では一般公開されて、ガイドの案内のもと、内部をくまなく見ることができます。ロングフェローについてほとんど知らない不肖の見学者は、もっぱら庭歩きを楽しみ、室内ではガイド役の老婦人のウィットにあふれた巧みな話術に惚れ惚れとしていたのでした。

1階と2階の見学が終わって自由解散になった時、たまたま隣にいた婦人と、どちらからともなく言葉を交わすことになりました。そして、よく通る声と、絶妙な間の取り方で聞く者を魅了したそのご婦人が、89歳でいらっしゃることを知ることとなりました。

「長い年月、海外で暮らしていたけれど、年金生活に入るのを機にここに戻ってきました。私もここで生まれ育ったんです。大学もロングフェローと同じブランズウィックのボードンカレッジですよ。ですからこの詩人にはとても親近感を感じていましたし、偉大な詩人だと誇りに思っています。

夫は亡くなりましたし、子どもたちも独立して遠くに暮らしています。妻としても母としても、仕事人としても、もう充分に役目を果たしただろうと思い、最後に我がままになることに決めました。自分の好きなことを好きなようにやりたいと。お金のためにはもう働きたくないと。

週に3日ですが、こうしてここで初めてお会いする皆さんに話をするのは、私の生活に張りを与えてくれるのですよ。まだまだ役に立っているのだなと。そんな張りが、何を聞かれてもいいように、もっともっと勉強しなければという気持ちにさせます。そして、勉強をするのがとても楽しいの。若い頃には決して味わえなかった贅沢です。

ロングフェローよりも、もう14年も長く生きているのだから、その分いいことに時間を使わなければね。あなたが私に会ったことをきっかけにロングフェローの詩を読もうと思ってくれたら、そんなことだって、私にとっては『いいこと』のひとつなの。」

続く何日間かの間に、私たちは色々な所でロングフェローの碑に触れることになりました。たとえば、彼の母校、そして老婦人の母校である大学のキャンパスで。
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崖の上に立つ灯台の足元で。
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By 池澤ショーエンバウム直美


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昨日のグローバルキッチン http://blog.goo.ne.jp/naomiwakuwaku 
6月19日(火):日本食お客様ディナー何作る?〜ソフト篇
       

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 11:00| Comment(0) | エイジング
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