2009年01月27日

ヒーローはお茶を入れる

 最近の報道写真で一番印象的だったのは、真冬のハドソン川に浮かんだ飛行機の左右の翼の上に155人の乗客が立つ姿でした。エンジンが故障した機体を冷静な判断で着水させ、最後まで全員の無事を見守ってから脱出した機長が、24日に初めてサンフランシスコ郊外の自宅に戻った時、3000人の人たちが出迎えたと言います。町の広場に集まった人たちは手に手に星条旗と機長の写真を掲げ、マーチングバンドの演奏と共に熱烈な歓迎ぶりを見せました。「実にアメリカだなあ」と思います。

 かの地で映画を見ていると、トレイラーと呼ばれる予告編の中にしばしば遭難救助の広告がはさまれます。災害にあった人たちを救助する場面の後で、「This is America’s DNA!」という言葉が画面いっぱいに映し出されます。人を助けることが英雄としてたたえられる良きアメリカのセンティメントは、まさにスーパーマンを生み出した国です。

 「ハドソン川の奇跡」の機長はかくして国民のヒーローとなりました。そんな英雄の奥様が、「でも、私にとっての彼は、毎朝私にお茶を入れてくれる人です。」と述べた言葉も、まさにアメリカ的でした。冷静な判断で多くの人の命を助けた英雄が、実は良き夫でもあるという構図です。「パパは何でも知っている」、「うちのママは世界一」などの1950年代にアメリカから輸入されていたホームドラマを彷彿とさせます。

 我が家でも毎朝コーヒーを入れるのは夫の仕事です。早朝から自分の仕事部屋に閉じこもっている私の耳に、ようやく外が明るくなった頃、2階のキッチンからコーヒーを挽く音が届きます。それからしばらくすると、ドアがノックされ、なみなみとコーヒーが注がれた大きなマグカップが私の机に配達されます。二つのマグカップで両の手がふさがっている時には、「ナオミ!」と尻上がりで私の名が呼ばれ、それを合図に私はドアを開け夫を招き入れ、それまでには充分に暖めれらた部屋で私たちの朝の会話が始まります。

 ノックをすることの意味、部屋を閉めることの意味、プライバシーの感覚についても書きたいことはたくさんあります。が、また次回に譲るとしましょう。
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 06:57| Comment(0) | TrackBack(0) | パートナーシップ
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