2012年10月31日

良きパブリックスピーカーになるためには

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昨日のワシントンポスト紙の「仕事特集」ページの冒頭は、就職面接ばかりでなく、その後の仕事そのものにも必要とされる「パブリックスピーキング」のスキルについての記事でした。

「パブリックスピーキング」とは、人前で、そして多くの場合は公的な場で複数の人たちを相手に話をすることです。どんなに中味があっても、それを効果的に表現するスキルがなくては的確に伝わらないというのは、欧米ではごく当たり前の考え方。

「パブリックスピーキング」の基本は中等教育の中で教えられますし、それを訓練する専門の人たちもいます。夫もカレッジで学んだと言いますし、たしか娘のカナダの高校でもそうした授業があったと思います。私が長年働いていた東京のリベラル・アーツの大学でも、「パブリックスピーキング」のスキルは体系的、実践的に教えられていました。

その源流は古代ギリシャにまで遡ります。あの時代、あの国には、「orator(オラター)」と呼ばれる専門的なパブリックスピーカーがいました。彼らはみな「sophists(ソフィスト)」とよばれる師のもとで、「パブリックスピーキング」についての訓練を受けた人たちでした。おおかたは裕福な家の出で、人前で話すスキルを学んでからは、町の集会で理路整然と、しかも相手の共感を勝ち取るような方法で政治的な演説をしました。

さて本題に移りましょう。くだんの記事ですが、人前で話すことの多いハイレベルのエグゼクティブの多くが、自分には「パブリックスピーキング」のスキルがあると勘違いをしているとの耳の痛い指摘に始まり、4つの知恵を手短かに読む者に与えています。かいつまんでご紹介します。

Vary your tone: 声のトーンに強弱や、高低、緩急と言った変化をつけること。

Speech patterns: 話し方の癖に気づくこと。歌うように話したり、センテンスの最後が消え入るようだったり、疑問形や質問で問いかける文が多すぎたりはしていませんか?

Inflection: キーワードは何か。それを聞き手の心に刻み込むこと。そのためにはその言葉が出て来るたびに、声を大きくしたり、高さを変えたり、スピードを緩めたり、と言ったアクセントをつけること。

Nonverbal: 身振り手振りを効果的に使うこと。演台をこぶしで叩いたり、聴衆に向かってからだを傾けたり、姿勢を変えたり、笑顔になったり。最良の自己点検は、あなたのスピーチの録画を音を消して見ることです。

なにも今さら、と言った節がないわけでもありませんが、パブリックスピーキング文化圏の人にこうして箇条書きで諭されると、フムフムと改めて納得してしまいます。

最後の結論がまた面白いのです。

「The key is to remember every enagement may be the first time (and only time) your audience is hearing your message. 」
(大事なのは、相手があなたのメッセージを初めて、そしてその時だけ聞く人たちであることを忘れないこと。)

続けて、今、最後の佳境を迎えている大統領選での候補者たちのスピーチを暗示しながらこう締めくくっています。これもまたなかなかの「パブリックスピーキング」スキルです。ただし無声ですが(笑)。

「The effective communicators give their stump speeches like they’re saying their points for the first time every time. 」
(有能な伝達者というものは、遊説の場でも、大事なことを、毎回まるで初めてのように語る。)

ニューヨークで多大な被害をもたらした大型ハリケーン「サンディ」は、ここワシントンでは昨夜(29日)午後9時頃にピークを迎えました。うなり声をあげて風が吹き、雨が大きな音を立てて窓ガラスを叩きます。暗い空に何度も稲妻が走り、数回ほど瞬間的な停電が起きたものの、幸い大事に至ることはありませんでした。一夜明けた今日、空はどんよりと曇ってはいますが、雨も風もありません。犬たちが濡れた地面で遊び始めました。夫はいつものように朝のジョギングに行きました。けれども、まだ電車(メトロ)は走っていません。町の機能の復旧までにはまだもう少しかかるでしょう。

今朝のワシントンポスト紙の本紙では、全20頁のうち第一面を含む9ページがサンディについてのものでした。
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オーランドでの遊説ラリーを取りやめてホワイトハウスに戻ったオバマ大統領の写真も掲載されています。
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By 池澤ショーエンバウム直美


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10月30日(月):女二人の隠れ家ダイニングバー体験
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 02:36| Comment(0) | コミュニケーション

2012年10月29日

ありがたくも嬉しいハプニング

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思い返せばあれからもう1年と1か月前、とあるご縁から、フィラデルフィアで開催された陶芸展のオープニングをお手伝いさせていただくことになりました。「Five by Eight:New Art from Japan」と題して幕を開けた日本の新進作家8名によるこの陶芸展は、53日にわたる期間中も大きな話題を集め、作品の一部は、現在、フィラデルフィア美術館に所蔵されています。

前田正剛さんにお会いしたのは、開催前夜、関係者を招いてのプレビュー&レセプションの場でした。あの夜も、今日のワシントンのように絶え間なく雨が降っていました。会場には8人の作品が飾られ、日本からやってきた作家たちは袴姿の正装でお客様を迎えました。

プレビューとは言え、作品を予約購入することができます。ニューヨークから買い付けを目ざして飛んできた美術蒐集家の方などもいらして、会場はなごやかながらも活気あふれるものとなりました。

私たちは、素晴らしい作品群の中でもひときわ心惹かれた、金色の地に真紅の椿が描かれた横長の皿を予約しました。それが、前田正剛さんの作品「掛分黒釉描椿紋長皿」でした。
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作品は展示が終わった後に木箱に戻され、丁寧に梱包されて、11月に無事ワシントンの家に届けられました。

「お料理をのせてくださいね。どんどん使ってくださいね。」などと作者に言われながらも、粗忽者のわが身を考えるとその勇気も出ずに、以来、椿紋長皿は観賞用としてテーブルの上に置かれ、使うのではなく見ることによって私たちの生活に彩りを添えています。
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その後も、作家の方々とは折に触れお会いする機会があります。昨日ご案内した前田さんの作陶展にも、出発前日におうかがいすることができました。前田さんがロクロを回す実演で通訳をしたご縁もあり、お会いすれば懐かしくて、ますます充実した作品群に素人ながらも心躍らせ、ちっとも変わらぬ彼の笑顔と謙虚なお人柄に、かの地の思い出がふわりとよみがえります。
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東京でのご縁がフィラデルフィアへと繋がり、フィラデルフィアでのご縁がまたこうして東京へ、、、、、人生という旅の中の、ありがたくも嬉しいハプニングです。
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まだまだ暴風雨の域には達していないものの、風と雨が少しずつ強くなってきました。空港も閉鎖、メトロも運休となり、大型ハリケーン サンディが目下東海岸を北上しています。

By 池澤ショーエンバウム直美

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10月28日(日):さすがアメリカ栄養弾丸
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:58| Comment(0) | 友人

2012年10月28日

Autumn in DC

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だいじな用事があって
ダウンタウンまで車を走らせたら
どこもかしこもやっぱり秋でした。

ポトマック川沿いの道も
国会議事堂とワシントン記念塔を結ぶモールも
ホワイトハウスもタイダルベイスンも。

カトリック大学から続く道を歩けば
気の早い葉っぱたちが
時折ひらひらと頭の上に舞い落ちます。

ランチに寄ったのは
秋色住宅街の中の一角
ピザが有名なカジュアルレストラン。

外になさいます、それとも中で?
とたずねられて私たちが選んだのは
外に一番近い中 窓に向かったカウンター。

外テーブルではおとなの女性がひとり
秋の柔らかな光の中で
一心に編み棒を動かしています。

ビールが運ばれても手を休めずに
ピザが運ばれても
もう少し、もう少し、きりのいいところまで、と。
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ジャズピアノを習っていた頃に
ひきたい曲がいくつかあって
そのひとつが「Autumn in New York」でした。

最初の4行だけは今でも口に出てきます。

Autumn in New York
Why does it seem so inviting
Autumn in New York
It spells the thrill of first-nighting

ニューヨークの秋はどうしてこんなに心をときめかすのだろう
まるで初日の舞台を迎える時のように
と、大都会の秋を歌った曲。

この町もまた
Autumn in DCと歌いたくなるほどに
今、美しい秋です。

追記(10月29日 8時45分)
★明日30日の火曜日まで、日本橋三越本店本館6階アートスクエアで、陶芸家 前田正剛さんの作陶展が開かれています。前田さんの優しさが、花々ばかりではなく、今回は兎にも、虫たちにも表れています。
前田さんについてはこちらをどうぞ。前田さんとのご縁についてはまたあらためて書かせていただきますが、取り急ぎお知らせを。
http://blog.platies.co.jp/article/48245320.html

★アメリカ東海岸に大型ハリケーン・サンディーが向かっています。こちらは日曜日の夜7時45分、まだ雨も風もなく静かですが、先ほどのニュースではワシントンダレス空港と、ナショナルレーガン空港が閉鎖されました。ジョージワシントン大学も明日は休講となりました。またたった今、メトロも運休となりました。台風の前の不気味な静けさです。


By 池澤ショーエンバウム直美

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10月27日(土):ワシントン最初の夜は手抜き日本食
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:47| Comment(2) | アメリカライフ

2012年10月27日

37時間の10月26日

10月26日になってから早33時間半がたちます。目下夜の8時半です。
先月ここを発った時には、まだまだ明るくて、夕日と一緒にスイミングをしていましたのに、さすがに日が短くなって外はもう真っ暗です。お夕飯の支度も整ってあとは食べるだけ。急用で大学に出かけた夫を待っています。

5時間目に、寝過ごしたら大変とたくさん並べた目覚まし時計に起こされて、寝不足のまま起き上ったら外はまだうす暗く、急いで最後の支度を終えて車のエンジンをかけたのは6時間半目。

8時間半目、随分早く空港に着いてしまったものですから、搭乗待ちの時間がたっぷり。ラウンジで過ごすよりも、外の空気の中で過ごしたくて、本をたくさん買い込んで展望デッキに行きました。だって、秋の空があまりにきれいで、空気がとても心地よかったのですもの。この時期の、晴れた日にだけ与えられるベネフィットです。
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10時間半目にワシントン行きのいつもの便に乗り込んで、映画を3本楽しんでいたら、
24時間目にダレス空港に着きました。

この道を逆方向に走ったのはついこの間のような気がしますけれど、ハイウェイの両側は赤や黄色の美しい秋色に変わっていました。ここは途中の料金所。
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25時間半目に家に着いて、ふーっと大きく息をして、窓の外を見たらやはり秋に彩られていました。
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荷ほどきをして、いつもの場所にいつものようにしまいこんで、スーツケースを見えない所に隠してしまえば、いつも私のアメリカの日常が始まります。まずすることは、東京の鍵とワシントンの鍵を取り替えて、お財布の中の円をドルに、スイカをSMARTRIPに換えること。そうすれば、さあ、もうどこにだって出かけられます。
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まずは休憩、27時間目。
いつもの場所でいつものように新聞を広げて、いつものように開けたのはブルームーン。
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30時間目、スーパーに買い物に行って、今晩の食材を買いました。いつだってスーパーは心沸き立つ特別空間。この時期特有の野菜や果物や花々を一つ一つ見ているだけで楽しい時間が流れます。

そして、今や33時間半目。
ご飯も炊きあがって、お料理もできあがり、ビル・エヴァンスが流れてくるキッチンにPCを持ち込んで、34時間目に始まるディナータイムを待つばかり。

日付が変わるまでにまだまだ3時間半も残っています。
こんな美しい季節に戻って来られて、何と幸せなことでしょう。

ところでちょっと嬉しいお知らせです。
27日から始まった読書週間を前に、37時間ある10月26日の毎日新聞朝刊で、「グランマからの手紙」が紹介されました。
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2週間の読書週間の間、八重洲ブックセンターでも棚陳列をしてくださるそうです。早速写真が届きました。
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10月25日(水):米粉のクッキーは誰のため?
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 09:59| Comment(0) | アメリカライフ

2012年10月24日

いい時間だったねえ〜ハロウィンのフラワーアレンジメント

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ハロウィンまでちょうど1週間となりました。いつの間にやらすっかり定着したこの行事。私が住む町でもあちこちでカボチャや魔女の飾り付けが見られ、毎年イベントが開かれます。私たちの国の、良くも悪くも面白いのはこんなところ。ハロウィンだろうが、クリスマスだろうが、その大元の宗教的意味合いから離れた「お祭り」を、みんなで楽しんでしまえるのですから。

午前中、「Happy Halloween!!」というフラワーアレンジメントの講座に行ってきました。先生は仲良しの友人ですし、共にテーブルを囲む人たちも知った仲。おしゃべりもはずめば、笑い声も絶えません。

先生のお話によれば、ハロウィンとはそもそも紀元前5〜6世紀のアイルランドの習慣に始まっているとのこと。古代ケルト歴では10月31日が1年の終わりの日、つまり大晦日だったそうです。この日には死者の悪霊が地上に戻ってきて、生きている人たちに悪戯をしたり悪運をもたらすと信じられていました。

その後、カトリック教会が11月11日を全ての聖人と殉教者を記念する万聖節(All Saints’ Day)として以来、その前夜祭がハロウィンとなったそう。

「All Saints’ Day」と言って思い出すのは、一昨年のミラノ暮らしです。ハロウィンの前日のブログにこんなことを書いていました。

「ところで、こちらは11月1日が『All Saints’ Day』と呼ばれる大きな祝日です。日本語では、『諸聖人の日』とか、『万聖節』などと称されるようですが、要するに全ての聖人と殉教者を記念する日です。どうも、毎日がそれぞれの聖人に捧げられているぐらいに、この国には聖人が数え切れないぐらいいるようなのです。それらをまとめて一度にお祝いしてしまおうというのもなかなか合理的(笑)。今年は土日月とロングウィークエンドにつながって、とりわけ人々がソワソワとしています。友人のネリーナも、クラウディオも、朝早く湖畔の家へと出かけました。

 そういえば確か、神無月(10月)の由来も、日本全国津々浦々の神様方が、出雲大社に大集合するからではなかったでしょうか。所変われど、どこか似ているような気がします。」

そんな由来はさておいて、不器用な私にとっても、何かを作るというのはやはり楽しいものです。できあがった作品を大きなバッグに入れての帰り道、友とのランチテーブルでこんな会話が弾みます。

「せいぜいもっても1週間から10日でしょう? それを思うと贅沢なお金の使い方かなとも思うけれど、作っている過程が楽しいんですものね。」

「本当にそう、私、2時間の間、気が付けば全くほかのことは考えてなかった。」

「私もそう。気にかかっていることなんて全部忘れてた(笑)。」

「いい時間だったねえ。」

「ほんと、いい時間だった。楽しかった。」

たしかに、こんな物が、こんなになるんです。
楽しくないわけがありません。
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ところで今年のハロウィンはアメリカで迎えます。こんなにしょっちゅう往復しているのに、思えばハロウィンに居合わせるのは初めてです。アメリカのハロウィンっていったいどんななのでしょう。その模様については来週ご報告いたしますね。

By 池澤ショーエンバウム直美


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10月24日(水):世界に一枚しかないお皿
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:49| Comment(0) | 日記

2012年10月22日

世界中の子供たちが 一度に笑ったら

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理不尽なことを避けてばかりもいられまいと覚悟をつけたら、不思議なことに急に風向きが変わり始めたような気がします。何とかの法則とやらにはあまり頼らない身ですが、ふと関西に嫁いでいった若いネイリストのお嬢さんの言葉を思い出しました。

「引き寄せの法則ってあるじゃないですか。私、結婚したい、したいと思っていたんですよ。そしたら出会っちゃって、結婚することになって。。。。」

その真偽はともかくとして、覚悟をつけたことで、心のバリアがなくなって、風通しがよくなったからなのかもしれません。良いニュースが次々と飛び込んできます。昨夜は、たまたま開けたシチリアの白ワインがめっぽう美味しかったこともあって、秋空の半月を愛でながらちょっとばかり感動の涙にむせんでいました。

今は立派な社会人になった教え子の結婚の知らせ。
「来年2月に式を挙げます。出席していただけますか?」
あの突っ張っていた男の子が結婚?と思えばなんだかうるうる。

スペインに行ったまま、長い間行方がわからなかった友からの電話。
「スペインで定年を迎えたの。ちょっとだけ日本に帰ってきたけれどまたすぐに戻ります。」
折しも私たちは11月の半ばからの3週間をスペインで過ごすことになっています。
すぐにマドリッドでの逢瀬が決まって、あまりの偶然になんだかうるうる。

「アドバイスをいただいた企画、通りました!」
とは、若い人たちのグループから。
彼らが大志をいだき、どんなに頑張っていたかを知っているだけに、嬉しくてうるうる。

そして、きわめつけは娘が送ってきてくれたYou Tubeです。
そこに映っていたのは、「お祭のステージ、センターで張り切ってました!」という言葉と共に、小さな少年が一生懸命に踊る姿でした。緑のポンポンを両手に持ち、リズムを取って足踏みをし、片手を突出し、両手をあげて、飛び上がって、、、、、周りの友達との輪と和の中で、誇らしげに堂々と。いつの間にやらこんなになって、と思ったらやっぱりうるうる。

以来、You Tubeから流れてきた歌がいまだにグルグルとまわり続けています。
その詞にもまたうるうる。

世界中の子供たちが 一度に笑ったら
空も笑うだろう ラララ 海も笑うだろう

世界中の子供たちが 一度に泣いたら
空も泣くだろう ラララ 海も泣くだろう

広げよう ボクらの夢を
届けよう ボクらの声を
咲かせよう ボクらの花を
世界に虹をかけよう


オリーブが実を結びました。

By 池澤ショーエンバウム直美


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10月22日(月):失敗は成功のもと?〜カボチャのファルシー

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:13| Comment(0) | 日記

2012年10月21日

Going home, going home

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行きの鞄の中は日本語の本がたくさん。
帰りの鞄の中は英語の本がたくさん。
時として絵や写真の美しさに惹かれて、読めもしない言葉の本が混じりこむこともあります。

人も出会いなら、本も出会いです。
「ああ、あの時どうして買っておかなかったのだろう。」と後になって悔やむことも、「ああ、あの時どうしてもっと話を聞いておかなかったのだろう。」と悔やむことも似ています。

先回のアメリカでも、随分と良い出会いがありました。
場所は本屋さんとは限りません。友人の家だったり、ミュージアムショップだったり、大学の売店だったり、ごく普通のスーベニアショップだったり、レストランやカフェだったりもします。そうそう、小さな田舎町の、見落としてしまいそうな入り口の、薄暗く埃臭い古本屋でまさかの出会いをしたこともあります。

これは、9月のメイン州、アーカディア国立公園のインフォメーションオフィスで出会った本、「Going Home」。著者は自然を愛するMarianne Berkesさん。長年教師をしていた方です。著者の紹介文にはこんなことが書かれています。

「She hopes to open kids’ eyes to the magic found in our natural world.」
(彼女が望むのは、私たちの自然界のマジックに子供たちの目を開かせることだ。)

これまで何度も書いてきた、レイチェル・カーソンの「センス・オブ・ワンダー」に共通するものがあります。

「Going Home」と題するこの本は、「The Mystery of Animal Migration」という副題が示すように、海亀、蝶、マナティー、ハチドリ、鮭、雁、鯨、カリブー、あじさし、ペンギンの10の動物を取り上げて、その「migration(渡り)」の神秘を、心地よいリフレインに始まるたった8行の短い言葉で、子供たちに伝えます。それを声に出して読んでみれば、そのフワフワとした優しい揺らぎは、まるで詩のように、私たち大人の心をも癒すばかりか、時には人生についての思わぬ含蓄を感じさせたりもします。

今日は、最初のページをご紹介させていただきます。
どうぞ声に出して読んでみてください。
私の勝手な和訳は適当に流して、皆さんの言葉でどうぞ。

Going home, going home,
We feel the urge to go.
It’s time for us to travel on,
It’s something we just know.
Many of us look for food,
Others find a mate.
And then the weather starts to change,
There is no time to wait.

おうちに帰ろう おうちに帰ろう、
そうしなくちゃならないんだ。
旅立つ時が来た、
それがぼくらの知っていることさ。
食べ物を探すためだったり、
仲間を探すためだったり。
天気が変わり始めたよ、
もう待ってなんかいられない、帰らなきゃ。

こんな具合に、それぞれの動物の言葉で語られていきます。
「日本に帰ったらブログで紹介させていただいてもよろしいでしょうか?」の問いかけに、「Certainly!」と二つ返事で答えてくれたオフィスの方に感謝して、不定期ではありますけれど続けさせていただきます。

金木犀が香り、光が揺れる美しい日曜日です。
早起きして仕事を片付け、掃除と洗濯も終えました。
さ、これから光の中へ出かけます。
皆様もどうぞ素敵な日曜日を!

By 池澤ショーエンバウム直美


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10月20日(土):スープの出前はいかが?
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 13:52| Comment(0) | 本、映画、コンサートなど

2012年10月20日

都心の秋

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都会の真ん中で、秋をたくさん見つけました。
芝公園から増上寺の境内を抜けて、東京タワーを仰ぎ見ながら坂道を上ります。
高く澄んだ空にフフ、和らいだ光にフフ。
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並んで歩くのは、漢字四文字の名前の中に「秋」を持つ友。
そして、この美しい季節の今日、誕生日を迎える友。

「わたし、今の季節が一番好き。
 風も光も空気も花も、何もかもが好き。
 別に特別なことなんかなくたって、歩いているだけで幸せ。」

「あっ、40年前と同じこと言ってる!」

と、私はフフと優しく笑います。

共に書を読み、青臭い議論をし、時に書を捨て街なかへと冒険に出た友です。
いつも一緒にいた4人組のうち、ひとりは早々と空の上に旅立ってしまいましたけれど、残る3人は、いまだに青臭い議論をします。そして誰からともなく「フフ」と優しく笑います。

「フフ」の分だけ、みんな大人になりました。

今日も気持ちの良い秋晴れです。
みなさま、どうぞ良い一日を!

By 池澤ショーエンバウム直美


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10月19日(金):ウッディ―と一緒のレストラン「ザ・ダイヤモンドホースシュー」
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 08:29| Comment(0) | 友人

2012年10月19日

今しかできないこと 今だからできること 

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みんながここにいなければできないし
誰かが怪我をしていたり
誰かが病気でもできやしない。

もしもそれら全てが叶えられたとしたって
○才と ▽才と □才と ◇才と、etc. etc.
そんな組み合わせは 
今しかありえない一期一会のようなもの。

「いつか」という便利な言葉で先送りしてしまったら
「いつか」なんて来ないかもしれないと
口には出さなくたって
みんな たぶんわかっているから
幸運な偶然に「ありがとう」と呟きながら
今しかできないことのために
一生懸命 時間を作る。

かたや「今だからできること」というのもあって
これは「今しかできないこと」とは
似ているようでいて 実は全く違う。
どう違うかといえば、
点と線。

長い道のりを歩いてきて
そこそこに知恵もついてきて
ようやく担えるようになった役割が
「今だからできること」

たとえば
次世代の人たちのキャリアを手助けすること。
彼らにバトンを渡し
彼らが表舞台に立つための黒子になること
あるいは 彼らが夢を叶えるために
ちょっとだけ後ろから背中を押してあげること。

昨日もそんな時間があって
二台のパソコンをフル回転
もう大丈夫、彼女はきっといい本を書けるはず。
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今しかできないこと と
今だからできること で
なんだかけっこう忙しい。

By 池澤ショーエンバウム直美

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10月17日(水):葡萄の葉でまいても キャベツでまいても
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 07:41| Comment(0) | 日記

2012年10月16日

和を以て尊しとなす〜セイタカアワダチソウとススキ

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いつもと違う道を通って帰ってみたら
バス通り沿いにあった家が取り壊されたあとの空き地を
セイタカワダチ草が覆っていました。
ところどころでススキが頭を伸ばしています。
小さな秋の野原でした。

ここに建っていた家がなくなったのは
そんな前ではなかったような気がしますのに。

この、見様によっては美しい花については、これまでにも書いたことがありますが、要するに、日本では駆除すべき外来植物であり、アメリカではノスタルジーもあいまって、中西部のシンボルフラワーともされる「Golden Rod(ゴールデンロッド)です。

以前、碩学の読者からこんなコメントをいただいて、いたく感じ入ったことがあります。

「五木寛之さんが書いておられます。

『線路わきに青い草が群生しているのが見えた。秋風にゆれる背の高い草のあいだに、ススキが5、6本、かたまって白い穂をもたげている……そのススキの周囲におい茂っている草を見て、一瞬、おや、と思った。ススキより頭ひとつ低く、さも仲がよさそうに寄りそっている草たちは、なんとセイタカアワダチソウではないか』

 その昔、セイタカワダチソウが日本に上陸して、ありとあらゆる空き地を占拠する勢い、ススキは全滅してしまうのではないかと危惧されたわけです。高さも2mとかあったわけですね。なのに、おや、と思ったわけです。

 『セイタカアワダチソウの一族は、かつての猛々しい姿をやつして、なで肩でススキとしおらしく共生している。植物も、文化も、このようにして根付くものなのだろうか。馴化、という生物学で習った言葉を、ふと思い出す』

 和を以て尊しとなす」

たしかに、今日見た空き地でも、セイタカアワダチソウとススキは、平和に共生しているように見えました。

限られた日本時間が刻々と過ぎる中、公私ともども忙しい日々が続いています。
だからこそ、今の自分の役割がより明確になってきたような気もします。

1日は24時間、1週間は7日。
ならば、捨てる物は捨て、あきらめるものはあきらめて
本当に大切なものだけを残しましょうか。
良き思いのためにだけ時間を使いましょうか。
そんな取捨選択は、同時に、心地良い自由でもあります。

By 池澤ショーエンバウム直美

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10月15日(月):高尾山の麓で食べた天狗焼き

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 07:44| Comment(0) | 暮らしの知恵

2012年10月15日

ゆるやかに歩く森の中のトレイル〜高尾山

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二人、三人、二人で乗ったリフトで運ばれた先は
山頂への登り口
大して高い山でもないのに
何だか少しだけ空に近づいたような気がします。

一番楽に歩けそうな4号路
そして帰りは3号路。
山登りなどという大それたものではなく
ゆるやかに歩く森の中のトレイルです。

いつものようにおしゃべりに夢中になろうが
いつものように笑おうが
自由です。

しりとり遊びをしたり
歌ったり
春や夏の名残りを見つけ
木々に葉に花に実に、ようやくやってきた秋を見つけます。
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巨大ミミズにも
小さな蛇にも
キラキラ輝く網の真ん中で、長い足を延ばした美しい蜘蛛にも出会います。
斜面にはさまざまなキノコたち。
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何かに出会おうと思いさえすれば
いろいろなものに出会えます。

思い込みを捨てて
いったん心をまっさらにしてみれば
いろいろなワンダーに出会えます。

そんな場に
愛する人たちと一緒にいられることが
決して当たり前のことではなく
とてもとてもありがたいことだと感謝をすれば
優しい時間の中で
ますます素敵なものが見えてきます。

自然の中を歩くにも
町を歩くにも
良い季節となりました。
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By 池澤ショーエンバウム直美


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10月14日(日):高尾山の頂きで食べたもの
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 10:03| Comment(0) | 暮らしの知恵

2012年10月14日

霧の中のバービー

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あれは9月のメイン州
朝から深い霧のたちこめる日でした。
私たちは、「The Downeast Coast」と呼ばれる一帯の人気(ひとけ)のない村々を抜けて、左手にあるはずの海を見ることもなく、カナダとの国境に向けて走り続けていました。

霧が薄くなって、突然視界が開けることがあります。
何にも見えなかったのが、少なくとも何かが見えるのです。
それは、まるで蜃気楼のように幻想的な風景でした。

何度目かに現れた蜃気楼は、海沿いに並ぶ露店でした。
車を止めて歩いてみれば、不思議なものばかりが並びます。

石ころやガラス片
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古着や、半分こわれかけたような古いお人形。
セルロイドだったりゴムだったり。
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そして、、、、、、
出会ってしまったのです、このバービーたちに。
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ひとつひとつ手に取ってつぶさに見たいのに、
車の中で待つ夫が気になって
後ろ髪を引かれながらも、早々に切り上げました。
今思えば、どうして引き返してでも買って帰らなかったのかと思います。
ひとつ、いえ一人たったの2ドルです。

でも、なんだかこんな気もするのです。
車をUターンさせて戻ってみたら
ただの霧の中。
石も、セルロイドの人形も、
バービーも、みんなまぼろし蜃気楼。

ところで一世を風靡したバービー人形ですが、
調べて見たら初めて世の中に登場したのが1959年3月。
リカちゃん人形に押されて日本市場から撤退したのが1967年。
その後、1970年代後半に再上陸をしたそうですが、どうやら鳴かず飛ばずだったようです。

基地の町、横須賀で生まれ育った私にとって、バービーはごく身近にあるものでした。
お友達の家に遊びに行けば、ミシンのそばにバービーが着る小さなドレスがたくさんありました。外で仕事を持たない母たちは、内職でバービーの服を作っていたのです。

ドレスのそばにはいつも裸のバービーがありました。
その極端なまでに凹凸のついたボディーと、ポニーテールの髪は、小さな少女にとって「憧れのアメリカ」でした。
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By 池澤ショーエンバウム直美


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10月14日(日):やっぱり賑やか朝ごはん
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 07:54| Comment(0) | メイン州

2012年10月13日

奇跡と偶然と幸福〜小林直樹先生の言葉

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秋色を見つけにふらりと歩いてみたくなるような爽やかな週末、皆様はいかがお過ごしでしょうか。時に歩き、時に立ち止まり、どうぞ素敵な秋を見つけてください。

年の瀬も迫った12月に、91歳の憲法学者、小林直樹先生を囲んで平和と幸福について語り合う会が開かれることになりました。企画人によれば「前回充分とは言えなかった膝付き合わせた話し合い」にしたいそうで、私はコーディネイターをおおせつかりました。つまり交通整理のおまわりさんのようなもの(笑)?

企画人は、元朝日新聞社のデスクにして小説家。8月にシリアで取材中に亡くなられた山本美香さんのお父様とは親しい記者仲間だった方です。そんな彼が、今再び「平和」について考えたいとの思いから、「何かをしなければ、何も始まらない!」と企てたのが、この会です。

ちょうど1年前の今頃、震災から7か月たった頃にも、先生を囲んで「幸福」について考えました。今、その時の記憶を自分のブログで辿ってみれば、小林先生はこんなことをおっしゃっています。

「生命を与えられたこと自体が奇跡です。ある世代に生まれたこと自体が偶然です。生きていること自体が幸福です。もちろん人生には様々のアクシデントあります。けれども、それらの運命をどう受けとめるか、それらとどう向き合っていくかが、幸不幸の分かれ目ではないでしょうか。」

何度も聞いても、何度見ても、心の奥に染み入ります。

まだ90歳だった先生は、車でお送りする途中で、健康の秘訣についての私の質問に、こうお答えになりました。これもまた、座右の銘にしたいほどのお言葉です。

「後ろを振り向かないことでしょうか。そりゃ生きている以上いろいろなことがありましたけれど、僕はなるべく前を見るようにしています。何時に起きて何時に寝るかですって? けっこう夜更かしですよ(笑)。読みたい本がたくさんありますからね。宇宙の本も、時代小説も。」

かたや目の前にあるこちらは、3日前の天声人語。
例の、他人のパソコンから遠隔操作で犯罪予告をした事件についてです。

「生活感の乏しい部屋で、陰々と悪意を『培養』している輩(やから)に言いたい。人生は短い。他を陥れる暇と知恵があるなら『自分の今』を楽しまないか。」

しかり。

By 池澤ショーエンバウム直美


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10月13日(土):家族の食卓大賑わい
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 10:33| Comment(0) | 暮らしの知恵

2012年10月12日

お金には代えられないもの、どうせ駄目だと思わぬこと

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美しい季節になりました。
もちろんどの季節だってそれぞれに美しいのですけれど、とりわけこの時期は、出会う人ごとに、「やっといい季節になりましたねえ」などと、おだやかな微笑みが交わされます。

もっとも、猛暑の真夏にだって、「暑いですねえ」
厳寒の真冬にだって、「寒いですねえ」
と行き交う挨拶を思えば、それは、私たち、四季の変化の中で暮らす者たちに与えられた優しさの恵みなのかもしれません。

それにしても、今朝はとびっきりの美しさです。
大きなテーブルクロスを洗って干したら、時折、草や花々と一緒に、あふれる光の中で風にそよぎます。

心がやけに爽やかなのは、朝の美しさのせいばかりではありません。
この3〜4日、ずっと迷って決めかねていたことの答を見つけて、実行に移したからです。
私のメンターでもある長年の友が、自身に最近起こったエピソードを引き合いに出して、2つの助言をくれたおかげです。

「一生に一度しかないかもしれない時間や経験は、お金には代えられない。
 本当に駄目かどうかもわからぬうちに、どうせ駄目だと勝手に思わぬこと。」

残り少なくなってしまった今年ですが、まだアメリカへの1往復とヨーロッパへの1往復をしなければなりません。アメリカの方は、中途半端にポツポツと入っている予定を、キャンセルしたり、あきらめたり、という作業をしながら、ある程度の長さのまとまった時間を見つけなければならなくなりました。

同じように、アメリカ側での予定もあります。こちらを取れば、あちらが駄目、あちらを生かせばこちらをギブアップ、というような難しいパズルに時間を取られているうちには、空席もなくなって虻蜂取らずになってしまいます。

結局、思い切って設定した日程は、11月5日、ワシントンDCの最高裁判所で行われるあるセレモニーをあきらめて、日本で前々から依頼されていたセミナーに合わせて帰国をすることでした。

なんだか、話がごちゃごちゃしてきましたので(笑)、先を急ぎましょう。結局、このセミナーは事務局の都合でつい先日、別の日程となり、「5日のセレモニーに出られる!」という選択肢が突然浮上してきました。

ここからが第二弾の迷いでした。
ネガティブな部分から言えば、「今になって別の日に空席何て見つかるわけがない。」、「仮に見つかったって、いったん購入した切符をキャンセルして新たに買い直すには何万円かのチャージがかかる。」、「帰ってくるつもりの日に合わせて、また新しい予定を入れてしまった。」等々。

さてどうしようと、堂々巡りを繰り返していた時に、前へ進ませてくれたのが先ほどの友の言葉でした。

    
「一生に一度しかないかもしれない時間や経験は、お金には代えられない。
 本当に駄目かどうかもわからぬうちに、どうせ駄目だと勝手に思わぬこと。」

結果、運よく1席空いていた便を見つけ、新しくチケットも買い直し、日本側ともアメリカ側とも先ほど調整がつきました。というわけで、単純ですが、心がやけに爽やかな秋の日なのです。

さあ、出かける準備をしなくては。

昨日はお花に囲まれた良い一日でした。
今日もきっと良い一日になるでしょう。
By 池澤ショーエンバウム直美


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10月11日(木):ニコニコスイートポテトにニコニコ


posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 12:26| Comment(0) | 暮らしの知恵

2012年10月11日

受け継がれた「銀座学」

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昨晩受講したのは、中央区民カレッジの「銀座学〜発信し続けるまち銀座〜」の第二回目でした。今回の「銀座学」は、「銀座で活躍する方をお招きして、最先端のIT技術や仕掛けられる様々なイベント、まちを彩るショーウインドウにスポットをあて、銀座の魅力を探ります。」がコンセプトです。
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全五回のテーマは、
第一回:銀座のまちづくり〜その歩みと現在〜
第二回:東京ユビキタス計画・銀座
第三回:銀座を舞台にイベント発信
第四回:ショーウインドウが彩る銀座
第五回:銀座らしい百貨店目指して

私は中央区民ではありませんけれど、銀座で仕事をしていた時代に区との連携講座などを開催していたご縁で、気持ちの上でかなりの部分が中央区民です(笑)。しかも、「銀座学」というのは、そもそもが私たち、恵泉銀座センターが始めた講座だったのです。

第一回目は、2006年9月、講師にお招きしたのは、銀座の長老、「ギンザのサエグサ」の三枝進社長でした。その後、途中で「新銀座学」と名前を変え、時に「大銀座学」などという大花火を打ち上げたりしながらも、私たちは3年間で、銀座老舗の社長や店主の皆様19名を講師として、ご自身の貴重な経験を通して、銀座の過去、現在、未来を、そして皆様の人生哲学を語っていただきました。
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実に面白い企画でした。この講義は録音され、原稿に起こされ「新銀座学」という1冊の本として出版されました。
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最後の講義が終わってセンターの扉が閉められ、しばらくたった頃、中央区から連絡がありました。

「池澤さんが企画していた『銀座学』ですが、私たちが同じ名前で引き継いでもいいでしょうか。」

いいも悪いもありません。いったん終わってしまった流れがまた動き始めるかもしれないのです。誰が反対を致しましょう。

そんな次第で、今や「銀座学」は中央区に引き継がれ、新しい視点で斬新な試みがなされています。今回の全5回を全部覗いて見たくとも、可能なのは3回だけ。それでも、教室のはじっこで、拝聴させていただけるのなら、企画人いえ種まき人冥利につきるというものです。

昨日の講義は、国土交通省と東京都の間で2006年に始められた「東京ユビキタス計画・銀座」についてのものでした。2012年現在、銀座には千か所以上も、スマホをかざせばその場所の情報が取れる箇所があります。また、スマホ向けアプリ「ココシル銀座」は、4千店舗以上の銀座の情報を、日本語、英語、中国語、韓国語で提供しています。
いつの間にかここまで時代に対応する努力をしていたのです。

「銀座学」もまた、私たちの手元を離れ、新たな息吹のもと、時代と共に発展しています。
銀座はやはりだんトツに面白く、魅力的な町です。

By 池澤ショーエンバウム直美


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10月10日(水):お蕎麦の行く末 そして日本酒との邂逅
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 01:12| Comment(0) | 銀座

2012年10月10日

2日間の「ゆるゆるほかほかふわふわ」時間

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体育の日の三連休の真ん中の、後片付けも残したままの朝早く、左肩にはいつものバッグ、左の手には雨傘を、かたや右手でガラガラと、キャリーバッグを引きずって、まだまだあります、背中には、リュックサックという姿。

そんな、エレガントとは正反対の恰好で出かけた先は、都心のとある体育館でした。
こうして私のセンチメンタルジャーニーならぬ、「ゆるゆるほかほかふわふわ」の優しいジャーニーが始まったのです。

肩にかけたバッグの中には、いつもの品々。お財布やら手帳やら、カメラやらメガネやら、文庫本やらノートやら化粧ポーチやら。

ガラガラキャリーバッグの中には、お泊りをするのに必要な最小限の物たち。
加えて、家族たちに相談したい案件のパンフレットや書類なども。

背に負ったリュックの中はと言えば、ほとんどが食料です。みんなで作って食べる夕食と朝食の材料と、すでにできあがっている前夜の料理の残り物。ついでにティータイムのお菓子とみんなへのプレゼント。

気づけば事のなりゆきで、運動会を応援した後にぞろぞろと大移動。翌日も賑やかに過ごす合宿プランになっていました。誰かしらが笑って、いつだって卓球のようにポンポンと球が行き交い、楽しくなごやかに時が過ぎていき、、、、

いつの間にやら私の頭も、心の中も、「いらいらあくせくおたおた」の芽が完全に摘まれてしまって、クリエイティブからもプロダクティブからもアラートからもスマートからもほど遠い「ゆるゆるほかほかふわふわ」状態。

「ねえ、グランマ〜」と呼ばれるたびに、「はい、はい」とゆるゆるし、おんぶをしたままお馬さんになってパッカパッカと走れば、息切れをしながらもほかほかし、この無垢の子を守らねばという緊張感はあっても、家族の中で安心して完全自然体でいられることの、ふわふわした心地よさ。

移動で車に乗るたびに、チャイルドシートの子にあきれられます。
「グランマ、また寝ちゃったよ〜。」

そんな2日間を過ごし帰ってきた後は、まだまだ通常モードには切り替わりたくなくて、ブログもちょっと小休止(笑)。

ところで、子供たちの運動会というのは、どうしてこうも涙腺を緩ませるのでしょう。這い這いをしていた赤ちゃんが今年はよちよち歩きをしていたり、去年は泣いてばかりいた子が堂々とお遊戯をしていたり。まわる縄に何度足をひっかけても跳び続けようとする子もいれば、リレーの途中でころんでも自力で立ち上がって一生けん命走る子、先生の補助なしで逆上がりができて輝く瞳で胸を張る子、小さな子たちの面倒をみる年上の子供たち、、、、、

周囲を取り巻く大人たちは、「頑張って!」「ほら、もう少し!」「すごい!」「やったね!」などと知らない子供たちにも呼びかけながら、縄跳びの縄がまわるたびに、誰からともなく、「いいち、にい、さあん、しい、ごお、ろおく、しいち、はあち、きゅう、じゅう、、、、」と一緒に数え始めます。

がんばった子供たちは、一番も二番もなく、みんな同じご褒美をもらいます。
声援する大人たちは、自分の子にも人の子にも、自分の孫にも人の孫にも、惜しみない拍手を送ります。

ここもまた、たとえ束の間かもしれなくとも、「ゆるゆるほかほかふわふわ」の優しい空間でした。

銀座でセミナーに出た今夜、帰りがけにタイミング悪く小田急線の人身事故にひっかかり、新宿駅のごったがえしたホームで長いこと待たされました。おかげで家に帰りついたのは、予定より1時間以上も遅い深夜となってしまいましたけれど、まだ残っている「ゆるゆるほかほかふわふわ」貯金のおかげで、「いらいらあくせくおたおた」しなくてすみました。

By 池澤ショーエンバウム直美

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10月9日(火):蕎麦打ちという一大マジックショー
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 00:42| Comment(0) | 家族

2012年10月07日

時が流れる中で、ああ、みんな生きているんだ!

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お客様をお迎えするのに、部屋の中に秋を置きたくなりました。
まるで紅葉が始まりかけたかのように。

この花瓶には、花よりも、こんな風に枝物を無造作に活けるのが好きです。
何の心得もありませんから、本当に無造作にさしこむだけですが、この場所に生きているものがあるか、枯れてしまったものがあるか、それとも何にもないかは、大きな違いです。

大雑把にたくさん投げ入れると、水の量がどんどんと減っていくのがわかります。毎朝まずすることは、減った分の水をジョウロで花瓶の口から足すことです。驚くほどにたくさん給水しなくてはなりません。

そのたびに思います。
「ああ、みんな生きているんだ!」と。

毎朝水を足していても、いずれは枯れて散り始めますけれど、それでも家のどこかで、一緒に生きている物があると言うのは愛おしくも嬉しくて、そんな思いのために花や枝を飾るのかと思ってみたりもします。

そして、だんだんと萎んだり、枯れたりしていく花や枝を見ながら、「ああ、時はこうして流れているんだ!」と思ってみたりもします。

お客様がお帰りになる頃、こちらは大雨になりました。お一方、携帯電話をお忘れになって、雨の中、スカートの裾も足もびしょ濡れのまま駅まで走りました。陶然とするほどに美味しい日本酒や、ギリシャのワインをご一緒に飲み興じていましたので、車を運転することはできなかったのです。

雨は止みましたが、雲が厚く、月は見えません。
昨夜は、澄んだ空に欠け始めた月がかかり、そのすぐ左側に星がきらめいていました。
ふと、「1Q84」の二つの月を思ったほどに、それはミステリアスな光景でした。
私のカメラでは、その模様をお伝えできないのが残念ですが、またしても夜空を眺めて随分長い時を過ごしました。
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「マイブーム」などと言う言葉はかなり時代遅れの気もしますけれど、最近の私は月光浴がマイブーム。欠けていく月、満ちていく月に、「ああ、時はこうして流れているんだ!」と思ってみたりもしています。

皆様、どうぞ良い連休を!
私も、会いたい人たちに会うために、明日は早起き鳥で出かけます。

By 池澤ショーエンバウム直美


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10月6日(土):第一部は手打ち蕎麦、そして、、、、、
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 01:42| Comment(0) | その他メッセージ

2012年10月05日

特別な時間、特別な場所〜海辺の小道

同じメイン州でも
9月のバーハーバーは、単に新しい記憶だからというのではなく
たとえそれが1年前のものであってもそうだろうと思うほどに
鮮烈な印象を残しました。

あの空気、光、風、匂い、音
五感に触れるすべてが心地よいものでした。

私たちが滞在していた真っ白な建物の
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部屋の外には海がひろがり
バルコニーの下には海に沿った散歩道が続いていました。
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ここは誰でもが歩くことのできる小道でした。
早朝のジョギングをする人も、
三脚を構えて朝日や夕日の写真を撮る人も
ゆっくりと散歩をする人たちも
そして私たちも
みんなが、海の匂いと波音の中で
いつもとは違う何かに包まれていました。

約1マイルの散歩道の途中に、こんな掲示板がありました。
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Shore Path
Circa 1880
Welcome to a stroll along the ocean's edge on a path more than a century old.

「海辺の小道  およそ1880年
 100年以上もたつ海辺の散歩道へようこそ」

Open to the pubic thanks to the generosity of bordering landowners.

「小道に接する寛容な地主の皆様のおかげで、この小道は全ての人に開かれています。」

そんな言葉の通り、この海沿いの道は、片側には海、反対側には広大な庭や林を持つ大きな邸宅が並びます。人気のない庭には、海に向かって並ぶ椅子。

「ああ、あそこに日がな一日座っていられたら」と思ったところで、私道に入ることはできません。
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それでも自分たちの簡易椅子を持ってきて
散歩道の端っこに座るのは自由です。

仲良く並んで一心に本を読んでいる老夫婦や
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海ぎりぎりの所で、図面に目を通しているキャリアウーマン風の女性。
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波が運んだ流木や
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潮風の中で実を結んだハマナス
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潮が満ちれば濡れてしまうのではないかと思えるほどの所に咲く
可憐な野の花たち
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カモメは羽を休め
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静かに時は流れ
西空に日が沈みます。
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スニーカーに履き替えては
この小道を歩きました。

引き潮時には
岩をつたって、靴が濡れるほどの所まで
下りて行きました。
そして、大きな石に腰を下ろして
ただ海を感じていました。

あそこで出会ったすべての物
本を読む老夫婦にも
図面を見る女性にも
野の花にも

岩場に動く小さな生き物にも
カモメにも
誰もすわらぬ椅子にさえ

今すぐ変わりたいほどに
特別な時間、特別な場所でした。

By 池澤ショーエンバウム直美


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10月4日(木):ビールで味付け?チェダーチーズスープ
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 01:17| Comment(0) | メイン州

2012年10月04日

ラフカディオ・ハーンのアイデンティティー(2)〜雑司ケ谷墓地に眠る

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ラフカディオ・ハーンは、イオニア海に浮かぶギリシャの島、レフカダで生まれ、2歳までをそこで過ごしました。父親はアイルランド人(当時はイギリス国籍)で、ギリシャに駐在していたイギリスの軍医でした。母親はギリシャ人です。

けれども、物心がつく前にギリシャを離れ、父親の母国、アイルランドで子供時代を過ごし、19歳で移民船に乗り、大西洋を横断してアメリカに渡ります。そして、20年に及ぶアメリカ暮らしの間に、編集者、ジャーナリスト、作家としての才能を開花させました。本を出版し、作家としてのキャリアを作ったのもこのアメリカ時代です。

思うところがあってのことでしょう。なじんだアメリカを捨て、日本に来たのは40歳の時でした。ハーンは、英語教師の職を得て松江に住み始め、そこで妻となるセツと出会います。以来、54歳で亡くなるまでの最後の14年間を、日本人の家族と共に、日本人として、日本で暮らしました。日本に帰化して、小泉八雲と改名したのは46歳の時でした。

「LAFCADIO HEARN-----A Greek View」(1997年10月)の論文を書いたギリシャ人のコンスタンティノス・ヴァシス氏はこう書いています。

「問題は、それではハーンはいったいどこの国の文学に属するのかということだ。きちんと習ったことのないギリシャ語では書いていないのだから、ギリシャ文学ではあるまい。作家として何の活動もしなかったアイルランドでもあるまい。日本で書いたものとて日本語ではないのだから、日本文学と言い切るのも無理がある。強いて言えば、最も長く出版に関わっていたアメリカだろうか。

けれども彼自身は、自分をアメリカ人と感じていたわけではないし、アメリカ人となったわけでもない。彼が日本に来た時にはイギリスのパスポートを持っていた。

おそらくハーンは、日本を崇拝するギリシャとアイルランド出身のアメリカ人作家と定義づけられるのだろう。あるいは、外国の出処と外国の言葉を持つ日本人作家であると。」

ちなみに、ヴァシス氏によれば、ギリシャ人はハーンをギリシャの作家とはとらえていないそうです。近年になって、ハーンの生まれ故郷のレフカダ島で、日本大使館の力添えによってハーンの胸像が立てられたそうですが、ハーンの生家をミュージアムにする計画はいまだ実現はしていないとのこと。

いったい、ハーン=小泉八雲のアイデンティティーはどこにあったのでしょうか。ヴァシス氏はこうも語ります。

「4才で生き別れて以来、二度と会うことのなかった母親ではあったが、ハーンは母を愛し、自身のギリシャとの繋がりを誇りに思っていた。感情的には、父の国アイルランドよりもずっとギリシャに近かった。」

ちなみに、我が夫は、ハーンはアメリカのジャーナリストであり作家であると教えられたそうです。日本に住み、日本で最期を迎えたことを知ったのもだいぶ後になってからだと言います。

7月19日、私たちは俳優座劇場に、そんなハーンの物語「日本の面影」を見に行きました。2週間の公演中、この日は英語の字幕が付く日だったからです。ハーンを演じたのは草刈正雄さん、セツは紺野美沙子さん。なかなか素晴らしいお芝居でした。絶望の中で、草刈さんのハーンが最後に言った言葉が忘れられません。

「日本はもう私のような人間をいらないのです。単純、温和、丁寧、親切、ほほえみ、幽霊、そんなものを愛する人間は、いらないのです。。。。。。日本は機械と科学の道を行き、傲慢で利己的な、固くて乾いた魂しか持たない人間でいっぱいになるでしょう。」

日本を愛し、日本に帰化し、日本名に改名したハーン=八雲を、最後にはそんな悲しみに沈ませたのだとしたら、いったいハーンのアイデンティティはどこにあったのでしょうか。

1904年(明治37年)9月26日午後8時、心臓発作のために急逝したラフカディオ・ハーンこと小泉八雲は今、雑司ケ谷墓地に眠っています。

By 池澤ショーエンバウム直美


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10月3日(水):13種類の○○バー
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 01:18| Comment(0) | 本、映画、コンサートなど

2012年10月02日

ラフカディオ・ハーンのアイデンティティー(1)

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月並みですが、読書の秋です。
暑さを気にせず何かに集中できるこの快適さ。

講義を1本終えて、ちょっとした解放感でブラブラ銀ブラ。
あまりに気持ちが良いものですから、もっとブラブラしていたかったのに
そういうわけにもまいりません。

まずは、散らかり放題になっている私の書斎でも片付けようかと、倒れた本をまっすぐに起こすところから始めたら、分厚い本の間からこんな小冊子が出てきました。行方不明になっているうちにいつしか忘れてしまったコンスタンティノス・ヴァシス氏のラフカディオ・ハーン(小泉八雲)についての小論文です。

LAFCADIO HEARN
-----A Greek View-----
Constantinos VASSIS

ヴァシス氏などと他人行儀に呼ぶのはかえって気恥ずかしいヴァシス氏は、元在日ギリシャ大使です。その頃お会いしていたら、私はきっと緊張して、「Yes、Excellency.」(はい、閣下)などと言っていたかもしれません。男性の大使の敬称は、Mr.でもなくPresidentでもなく、Dr.でもなく、ましてやProfessorでもなく、His Excellency、略してH.E.と言います。ですから、ヴァシス大使なら、「H.E.Ambassador Vassis」が正式な呼び方。

彼が大使として日本に赴任してきたのは、すでに私がギリシャ大使館を去った後でした。それなのに、ひょんなことから夫人と親しくなりました。大使夫人としての公務に忙しかった時には叶えられなかった夢を叶えたくて、彼女が日本語を学ぶためにやってきたのです。それが当時私が仕事をしていた大学でした。

まさかギリシャ語で話せる相手がいるとも思えずやってきた彼女と、まさかギリシャ人が日本語コースに入学するなどと思わぬ私は、すぐに親しくなりました。そして元大使夫人のマダム・カティアはただのカティアとなって、ただのナオミと一緒に国内を旅行しました。

彼女が帰ってしばらくして、今度はご主人の元大使が、リサーチプロフェッサーとしてやってきました。そして、何か困ったことがあれば私のオフィスを訪ねてくるようになりました。その時に書いた論文が、このラフカディオ・ハーンについてのものだったのです。驚いたことに、彼は、世界各地で大使を歴任している間も、ギリシャ生まれの作家、ラフカディオ・ハーンの研究を進めていたのです。

まさか、と思うような不思議な縁はまだ続きました。その後、私の夫となった人が、偶然にもH.E.Vassisの友人だったのです。ここで、ようやく私も、背筋を伸ばして「Yes、Ambassador!」だの「Yes, Excellency!」だのと言わずにすむようになりました(笑)。

こうして私たちは、それぞれに、「ナオミ!」「トム!」「コスタ!」「カティア!」と呼び合いながら、アテネで、東京で、ロンドンで再会を重ねてきました。

さて、そんなコスタ(コンスタンティノス)の論文が出てきたのですから知らん顔をしているわけには行きません。

幸い読書の秋です。
幸い一仕事を終えた後です。
幸い13頁です。

ということで、片付けは明日にまわして読みふけってしまいました。それがまた何という偶然でしょうか。だって、それは、ラフカディオ・ハーンの「アイデンティティー」についてのものだったのです。アイデンティティーについては、私も昨日のブログでちょっと書いたばかりです。

ここらへんを一気に書いてしまおうと思ったのに、ちょっと長くなり過ぎました。
続編は明日に致します。

By 池澤ショーエンバウム直美


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10月1日(月):45度違いのテーブル
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 23:52| Comment(0) | 本、映画、コンサートなど