2012年01月31日

次はしっかりと送り手に

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 全てのお料理ができないわけではありません。包丁を使わないものなら、片手で何とかできる場合もあります。ただし、あとの洗い物を左手だけで頑張る気力があるのなら。

 昨日は、いろいろな野菜を切って焼いて冷凍したものをイタリア食材の店で見つけ、たっぷりのオリーブオイルで炒めて片手でスープを作ってみました。数種類のチーズと果物とパンをテーブルの上で切るぐらいは連れ合いにもできます。加えて、おいしいビールとワインと会話があれば、何の文句が言えましょう。とはいうものの、、、、、、

 日々困るのは、料理よりも、字が書けないことです。今日だってとても困りました。突然メールが開けなくなったPC の具合を見てもらおうと、いつもの店に駆け込んだのはいいものの、差し出された紙に記入することができません。名前も日付も電話番号も、症状の説明も、メールのIDも。

 当たり前だったことが、実は全然当たり前ではないのです。もしも包丁も使え、字も書けて、好きな服が着られて化粧もできて、運転をすることも泳ぐことも、両腕で荷物も持てる日々が再び戻って来てくれたなら、私はそうしたごく当たり前のことを、どんなにありがたく思うでしょうか。そして、季節の移ろいや、風や光や雨をどんなに愛おしく思うでしょうか。

 私などとは比べ物にならないほどの大怪我を負った友が言いました。

「ゼロというかマイナスからのスタート。全く歩けない状態からのリハビリ通いはきつかったけれど、ふだん接する事のない人々との出会いは貴重でした。感謝・感謝の一年間でした。」

 たかだか1週間だって、痛みと不便さと、焦りと情けなさの中で、いろいろな発見がありました。こんなことがなければ一生わからなかったことかもしれません。そして、もし「感謝指数計」でもあれば、こんな日々ですら、いえ、こんな日々だからこそ、指数系の針はプラスの方向に揺れっぱなしです。

 玄米おにぎり、ライスバーガー、ソース焼きそば、中華丼、海鮮ちゃんぽん、オニオンスープ、パンプキンスープ、きのこのクリームスープ、ビーフカレー、豚丼の具、はるさめの炒め、味付けビーフン、カルボナーラ、ナポリタン、太巻き、細巻き、鶏ごぼうご飯

 
 今日、大きな段ボール箱一杯に冷凍食品の救援物資がが届きました。ひとつひとつの名前を呪文のように唱えれば、それはまるで「サラカドゥーラ メチカブーラ ビビディバビディブー」
 カボチャだって馬車に変身しそうです。

 左手で使える「エジソンのお箸」を送ってくださった方もいらっしゃいます。
 励ましやお見舞いの言葉もたくさんいただきました。
 私にできる恩返しがあるとしたら、次はしっかりと「送り手」になることです。

 ありがとうございました。
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 22:22| Comment(2) | 不覚の骨折顛末記

2012年01月30日

Shall We Dance? 〜私の新世界

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 いよいよ装着してきました。先週の金曜日のはずでしたが、腫れがひかないため延期になったのです。何しろ生まれて初めての経験です。動転して、私のグルグル巻きの右腕の下にあるものが「ギプス」だとばかり思っていたら、いえいえそれは単なる「副え木」というものでした(笑)。

 副え木を外して腕を覆うことになったギプスは、面白いほどにコチコチです。相変わらずできないことだらけですが、嬉しいことに指が全部出るようになりましたし、大太巻きが中太巻きぐらいにはなりました。これで少しは着られる服もあるかもしれません。

 たくさんの友人が自分自身や身の回りの「骨折体験」と、不便生活の知恵を教えてくれました。私のように、手術ではなくギプスを選んだ友も多く、過去にそんな経験があったことなど初めて聞いて驚いた方も、一人や二人ではありません。

 ノリコさんにいたっては、「自慢ではありませんが、骨折は先日のあばら骨で6回の経験があります。」と冒頭からショッキング。

 「腕もありますが、何より大変だったのは右足首と左足の小関節の骨折を2年おきにした時でした。結局手術は一回もせず、全てギプスで我慢生活。。。」

 これがマイブランドの化粧品を作っているエレガントなノリコさんの言葉だとは!
 何だか元気になるじゃありませんか。

 新進気鋭の大学教授ケイコさんは、お正月に転んで右腕を骨折しました。休講にしたくなくて、やはりギプスを選びました。「そりゃ不便ですが、ま、何とかなるもんですよ。」

 加えてサチさんは、お母様のこんな素敵な「できごと」を知らせてくれました。

 70代前半で自転車で転倒して腕の骨を折ったサチさんのお母様は、手術をせずに、前から決まっていた家族旅行に参加したのだそうです。もちろん今の私と同じような姿で。なんだかそのお気持ち、とてもよくわかります。

 「ちょうどナオミさんと同じポーズの写真があったのを思い出します。」というサチさんの言葉の後に続くのは、もっと嬉しいこんなもの。

 「その後、母は、大好きな社交ダンスにも復帰して何不自由ない生活に戻ったと記憶しています。」

 ノリコさん、ケイコさん、サチさん、待っててください。
 Shall We Dance?
 いつか一緒に踊りましょう!

 コチコチ腕で初めて表に出たら、夕日が家々を染めようとしています。何てことのない見慣れた風景なのに、なんだか初めて見るように新鮮でした。こうして私の新世界が始まりました。

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 20:37| Comment(0) | 不覚の骨折顛末記

2012年01月29日

涙は優しさのために

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 せめて左腕だったらどんなによかったのに、と愚痴をこぼしたくなるほどに、不便です。これ一行書くのだって、いつもの5倍以上の時間とストレス。「じゃ、書かなきゃ?」と思っても、こんな状況では、じっと黙って耐えているのもストレス(笑)。

 服を着替えるのだって、そろそろそろりと、優にいつもの5倍。お化粧も満足にできないし、髪の毛だってブローできない。片手でやっていると思っていた多くのことが、実はもう一方の手が支えていたことを知りました。同じように、ひとりでやっていると思っていたことの多くも、気持ちの上でも実際にも、実は誰かの支えがあってのことでした。

 こうしてポツポツとキーボードを打ちながら、今日はお世話になった方々に手紙を書きましたけれど、封筒に宛名を書くことができないことに気づき、隣人に頼みました。

 せめて左ではなく、右が使えればどんなによいのに、と思ったって無理な話です。私は右利きですから、滑ったからだを受け止めるのは、当然ながら、けなげな右手の出番です。

 それでも文句は言えません。私は自由に歩けます。家の中の階段をいつもと変わらず上がったり下りたりしていますし、電車に乗って出かけることだってできます。今夜だって仲良しの友人夫婦と食事に出かけました。行った先では、お箸も使えませんし、ナイフとフォークできちんと食べることもできませんが、いつもと変わらず楽しい時間を過ごしました。

 だからどんなに情けなくても泣きません。

 元の職場の親友は、一昨年、足に大変な骨折をしました。長い病院生活の後には松葉杖暮らしとリハビリが待っていました。その後、ようやく松葉杖もステッキも必要ない日常生活に戻り、職場に復帰したと思ったら、今度は私と同じ日にお風呂場で滑って、またギプスと松葉杖の身となりました。どんなに無念なことでしょう。

 「2本の松葉杖でこの体重(笑)を支えて右足を着かないように歩くのは大変。階段も無理。両肩や両脇など右足以外のあちこちも、だんだん痛くなってきます。」

 それなのに、友はこんなことを言います。

 「泣きだい時はがまんしないで泣いてもいいと思います。私は2回目で慣れているけどナオミさんは骨折初めてなんですもの。やはり我慢はいけないと思います。私は、前回は痛いのは我慢しましたが、優しくされた時は何回か泣いてしまいました。涙って嬉しい時は我慢できないものですね。」

 素敵なメッセージです。

 光と影が織りなす美しい昼間でした。こんな状況にあっても、それを美しいと思えるなんて、なんとありがたいことでしょうか。
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 22:02| Comment(0) | 不覚の骨折顛末記

2012年01月28日

割れてくれなかった「身代わり札」

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 物に対しても、おそらく人に対しても、およそ執着心というもののない家人がよく言います。「世の中には自分でコントロールできることも、できないこともある。できないことには、だいじな心を使わないことだ。」

 今回の事故で打ちひしがれている私にも、あっけないくらいにけろりと言います。「起こってしまったことを悔やんでもしょうがないじゃないか。」

 「君が不注意だったからだ。」とか、「そんな靴、履いて行かなきゃよかったのに。」などとなじることもありません。これには助かります。だって、誰よりもそれがわかっているのは、当の本人なのですから。

 それなのにやっぱり私は、ついくよくよと、あきらめねばならなくなったたくさんのことを考えてしまうのです。こうしている今だって、こんなことにさえならなければ、家族全員が集まって「おとうさん」のお誕生日祝いをしていたはずなのです。プレゼントもとっくに用意していましたし、築地での買い出しの予定だって、それぞれの持ち込み料理の段取りだって、準備万端整って、みんな、それはそれは楽しみにしていたのです。

 お正月に同じ面子で繰り出した初詣で買った「身代わり札」だって、いつも鞄に入れていました。もちろんあの、滑って転んだ日にだってちゃんと。持ち主に降りかかる災厄を、割れたり、なくなったりすることで代わりに引き受けてくれるはずの札です。話が違うではないですか!

 けれども、割れもせず、破れもせぬ姿で依然として私の目の前にあるということは、、、
 つまり、これは「災厄」ではないということ?
 そう、きっとどこかで、いいことに繋がっているのかもしれませんね。
 お札が守ってくれなかったと恨むよりは、そう考えた方がずっと素敵。

 とは言え、やっぱりみんなでわいわい、鮑シャブシャブが食べたかったかも(涙)。
 
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 19:18| Comment(0) | 不覚の骨折顛末記

2012年01月27日

To be, or not to be〜手術? ギプス?

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 考えて考えて、泣きたくなるほど考えて、自分で結論を出したはずなのに、また揺らぎ始めてかなり辛い状況です。

 娘たちの骨折には何度も立ち会ってきましたけれど、わが身にとっては初めてのこと。母として一生懸命冷静に対処することはできても、自分のこととなると、もう本当に情けないぐらい。

 動かせなくなった右手を守りながら、タクシーでなじみの整形外科に駆け込んだのが3日前のこと。レントゲンを何枚も撮って、「いいですか、我慢してくださいよ。こうするかどうかでその後の経過が違うんですからね。」と先生に言われ、「はい、どうぞやってください!」と答えるやいなや、処置室で横になった私の腿の上に乗っかって、折れた部分を力いっぱい上下にひっぱる先生。

 診察室ではレントゲン写真を見ながら、「物書く人でしたよね。手術しちゃったほうがいいかもしれないなあ。でもともかく明日、この病院の専門の先生のところに行ってください。」

 翌日、紹介状とレントゲン写真を持っていけば、大病院の先生は、手術とギプス、それぞれのリスクを説明したあとで、「どっちにするかよく考えてお昼までに決めてください。手術なら金曜日入院で月曜日。入院はだいたい1週間。ギプスなら5週間ぐらい。」

 病院の外でぶるぶる震えながら、家族と親友に長電話をしました。それでもまだ決められません。もう一度先生にお会いし、正直にそんな思いを口にすると、先生は、からりと、

「そんなに迷うんなら手術はやめなさい! いつかは骨もくっつくんだから。」

 というわけで、ようやくきっぱり決断をしたというのに、、、、、

 今日、最初のドクターの所に戻ったら、今度はこんなことを言われてしまいました。

 「手術にしたほうが良かったと思いますよ。でもまあもう決めたことなんだから、後悔しない! 月曜日にきちんとギプスをはめましょう。1週間後にレントゲンを撮って、様子次第で手術ということにしたらどうですかね。」

 かくして私はまたもや先行きも見えぬ霧の中。「自分で決めてください。」ではなく、「僕は手術を勧めます。」とただの一言ででも言ってくれれば、迷いもなく今日入院していたのに、、、、、などとつい思ってしまって、、、

 2週間前には固い蕾だった百合がこんなに開きました。
 残る蕾は、ひいふうみいよお、あと4つ。
 蕾がひとつ開くたびに、肩の荷がポロッとひとつ軽くはならぬものでしょうか。

 明日は穴をあけられない講義がひとつ。
 ホワイトボードは左手でチャレンジするとしても、
 いったい、何を着ていったらいいのかしら。
 ストッキングはうまくはけるかしら(涙)。
 

 

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 18:38| Comment(0) | 不覚の骨折顛末記

2012年01月26日

ポカポカのポッカポカ

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今や良くも悪くも、情報の広がり方と言ったら驚くばかり。

「だぶだぶ袖」の」ことを書いて、ものの1時間もたつかたたないかのうちに、ピンポンとチャイムが鳴りました。待っている本が届いたのだろうと思えば、そこに立っていたのは、大きな紙袋を持った明美さんです。

 袋の中には、ポンチョのような千鳥格子のかぶりものと、グレイのグラデーションが美しい大振りのセーター。どちらも、すぐに羽織って出かけたいぐらいに素敵です。しかも「どこまでだぶだぶ?」と言いたいほど。

 仕事場でたまたま「だぶだぶ袖」のことを書いた私のブログを読んで、急いで家に戻り2着を届けてくださったのです。「これならきっと着られるだろうと思って」と。

 まだ雪が溶けきらぬ道を仕事場へと大急ぎで自転車を走らせる明美さんの後姿にポカポカと暖められて、明美さんの前で着込んでみせた二着を脱ぐのがもったいなくて、私は今、心もからだもポカポカのポッカポカ。

 そんなところに届いたのが転倒の日にアマゾンに注文していた本です。
 何度も読んだはずなのに、また読みたくなって、ポカポカのポッカポカのだぶだぶ袖三角巾姿の私は、これからしばらく「ノアノア」と一緒にタヒチへと逃避行。
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 14:43| Comment(0) | 不覚の骨折顛末記

転倒不便生活3日目

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 転倒不便生活も3日目となりました。ああ、こんなこともできないんだ!と日々発見の連続です。それでも、一昨日は介助なしでは着られなかったコートに何とか自力で手を通せるようになりましたし、固定された右腕の肘と二の腕の内側、そして唇と歯を使うことを覚えました。たとえば、、、、、

 コーヒーカップを左手に持ったままドアノブを右肘にひっかけてドアを開ける方法とか、瓶を二の腕とからだの間にはさんで固定して左手で蓋をあける方法とか、、、、ハサミで切りたいところを右肘でボール紙の上に押し付けて左手でカッターナイフを使う方法とか、、、、

 それでも昨日、どうしてもできずにあきらめたことがありました。

 病院からの帰り道、恵方巻きのように太くまかれた右腕でも袖を通せる服を買いに行きました。だって昨日の私といったら、何着も取り出してはあきらめたあげく、結局、フレンチスリーブの夏物姿。

 「寒くないの?そんな恰好で」と診察室で言われ、
 「しょうがなかったんです。着られるものがほかに見つからなくて」
とうなだれて、「そうか、なるほど」とお医者様を妙に納得させてしまったぐらい。

 だぶだぶ袖の服を2着見つけて、レジでカードを出しました、いつものように。
そこではたと気が付きました、いけない、サインができないんだ!(笑)

 かくかくしかじか、かなり漫画的な日々となりました。
 このくらいまで書いただけでけっこう疲れます。
 しばらくはショートショートでいくしかなさそうです。

 一休みして、あとでまた書きます。
 だってまだ、手術か長期ギプスかの重大決断のお話しをしていなかったですものねえ。



posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 12:18| Comment(0) | 不覚の骨折顛末記

2012年01月25日

オリーブの木とテオの訃報

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 すぐに手術をしてしばらく入院するか、骨がくっつくまでの間をギプスと一緒に暮らすかという、どちらにしても決して楽ではない選択を目の前に置かれて病院から戻って来たら、私の部屋の前にオリーブの木。

 仕事に出かける前に、私がこの木をこよなく愛していることを知る夫が、どこかで見つけて買ってきてくれたのでしょう。

 何年か前、「オリーブの海(イ サラサ ティス エリエス)」と言う小さな木札が立った小道を通り抜けたことがあります。アポロンの神託で知られたデルフィを下って、海沿いに車を走らせている途中でした。その名の通り、オリーブの木が、寄せ来る波のようにどこまでも連なる「海」でした。地中海の眩しい太陽も届かぬ薄暗い細道は、あまりに幻想的で、ギリシャ映画の巨匠と呼ばれるテオ・アンゲロプロスの、曇り空に覆われた一連の映画を思わせました。

 痛みも忘れてそんなことを思い出していたら、今しがたテオの訃報が届きました。
 何と新作映画の撮影中に交通事故で亡くなったとか。76歳でした。

 彼の作品の多くは、時に退屈ともいえる言葉少ない長編映画でしたが、なんとも言えぬ美しいまでの哀しさに溢れていました。初めて見たのは「旅芸人の記録」。当時住んでいたアテネのアパートの隣にあった「エリゼ」という名の小さな映画館だったと思います。1975年でした。

 私は今、彼の代表作のひとつである「永遠と一日(ミア シオニオティタ ケ ミア メラ)」のサウンドトラックをかけながら追想に耽っています。それにしても、この映画の中で繰り返し流れるテーマ曲の、何と美しく、何と哀しいことでしょう。

 もう一度会いたい人でした。

(ものすごく時間がかりましたが、何とかここまで左手で書けました!)

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1月23日(月): 大切な人に食べてもらいたいチャウダー
  グローバルキッチンはしばらく閉店します。


posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 22:11| Comment(2) | ギリシャライフ

初めてのことだらけ

左手さんがどんなに頑張ってくれても、日常生活の中で、できないことがこんなにたくさんあることに驚きました。突然の事故でしたから、準備もなく、ごく普通のことができないことに直面しても、ではどうしたらよいかの知恵も働きません。

昨日困ったこと。これはまだきっと序の口。

料理ができない。
レストランでお箸が使えない。
朝着たセーターの袖が太巻きギプスを通らず脱げない。
ミラノで思い切って買ったカシミヤなのに切るしかない。
鋏で切ろうと思っても鋏を使えない。
リボン結びができない。
ペンダントができない。
化粧水を手の上に出せない。
クリームの蓋をあけられない。
指輪が外せない。
時計も外せない。
ブラのフックも外せないし、とめられない。
トイレには余裕を持っていかないといけない。

まだまだたくさんあったはずですのに、なにせ字を書くことができません。
メモがとれないのです。

これから病院に行ってきます。

ところで、打った右腕は1時間後にはこんなに膨れ上がり、
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待っている間に重い氷を載せられました。
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何もかも初めてのことだらけ。

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 08:45| Comment(2) | 不覚の骨折顛末記

2012年01月24日

頑張れ、私の左手

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 10時の歯医者さんの予約に間に合わせようと、足早に歩いていたら、凍っていた道で滑って転びました。私のからだの重さを支えようとした右手首に激痛が走りました。整形外科で何枚ものレントゲン写真が撮られ、かなりひどい骨折をしていることがわかりました。明日、紹介状を持って大きな病院に行きますが、そのうち手術をすることになりそうです。

 痛みはなんとか我慢していますが、とにかく不便です。右腕がギプスで固定されていて、全く使えません。これだけ書くにも左手で一苦労。三角巾なんて初めてです。

 しばらくは、ぼちぼちと、悲劇の主人公ではなく漫画のヒロインにでもなったつもりで、日々の不便生活を綴ります。メールのお返事なども滞ることと思いますが、どうぞお許しください。
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 22:59| Comment(4) | 不覚の骨折顛末記

2012年01月23日

ケサパメラの失敗

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 忘れ物名人の私が、出かける前に呟く言葉は「ケサパメラ」。
一時はギリシャ語の「さあ、行こう=パメ」にこじつけて、「ケサパメ=今朝行こう!」だったのですが、いつの間にやら「ラ」が増えました。
絶対忘れてはならないアイテムです。

 ケは携帯電話
 サは財布
 パはパスモ (今はスイカですけれど)
 メはメガネ
 ラはカメラ

 けれども、毎度呟くにも関わらず、非常にしばしば失敗をやらかします。一番多いのは「メ」でしょうか。昨日もそうでした。ちょっとした打ち合わせがあって、電車の中で下準備をするべく書類とメガネケースを取り出したのですが、、、、、

 パチンと開いたケースの中はまさかのもぬけの殻でした(涙)。あとはもう、ひたすらうつむくばかり。

 きちんと中身の入った「メ」をバッグの中に入れて出たところで、出先で性懲りもなくアクシデントを引き起こします。最近一番真っ青になったのは、昨年暮れの事でした。昔の同僚夫妻との忘年会で、あっという間に過ぎてしまった楽しい時間を惜しみながら、さてお勘定という時になって、どこをどう探しても、私の大きな紫色のお財布がないのです。バッグをひっくり返しても、薄暗い居酒屋の床を這いつくばるようにして探しても、どこにもありません。とりあえず、飲み代と、帰りに必要となるかもしれないお金を友に借りて急ぐ家路、頭の中はちょっとしたパニックです。だって、たくさんのカードと運転免許証と健康保険証とありったけの現金、全てが入っていた長四角のものが、手品のように消えてしまったのですから。

 呆然と帰ってみたら、深夜に留守電が点滅しています。

 「落し物のお財布を当方でおあずかりしております。明日の開店時間は9時でございます。ご連絡をお待ちしております。」

 何と、居酒屋に向かう前に寄った薬局からでした。そのまた前に立ち寄ったクリニックでの処方箋に電話番号が書いてあったのでしょう。アメリカの夫にすぐさま事の顛末を電話したら、ただ一言。

 「う〜ん、ありえない。さすが日本だ!」

 すぐに、心配をかけた友に報告のメールを出したら、翌日になって奥様からお返事が届きました。

 「財布がすぐに見つかりよかったですね。きっと、今年の厄落としを 財布がして戻ってきてくれたんですよ。昔は神社からいただいた晦日の大祓いの人形に息を吹きかけて、『今年の厄を払うのよ』とやっていました。」

 なるほどお財布の厄払いトラベル。でも、もし出て来なかったとしても、優しい彼女はきっとこう慰めてくれたんでしょう。
 
 「きっと、来年の厄落としを先立ってやってくれたんですよ。よかったですね。」
 
 それにつけても、手厳しいのはわが娘。元旦早々言われました。暮れのお財布トラベルについては秘密にしておいたはずなのに。
 
 「ママ、今年はもう少し物に注意を払いなさいよ!」
 「ハイ、気を付けます!」
 と、私はまたしてもうつむくばかり。

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1月23日(月): 大切な人に食べてもらいたいチャウダー
posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 12:35| Comment(0) | 暮らしの知恵

2012年01月22日

そんな寒い雨の、私の、たくさん歩いた愛しい土曜日

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 雪は降りやんだものの、冷たい雨の降る土曜日となりました。カナダ人の心理学者の友人は、長年、お天気と心の関係を研究していますけれど、そんな研究結果を詳しく聞いてみたいぐらいに、こんなに寒い雨の日には、気持ちも何だかしぼみます。加えて、浮かない事の原因だって、実際いくつかあります。

 そんな日の過ごし方は、、、、

 朝10時からの1時間番組、レインボータウンFMの「まじかる☆ママ」のゲストに呼ばれて、「元祖ワーキングマザー」として、「現役ワーキングマザー」たちを励ましてきました。「元祖」などというのはもちろん大袈裟ですけれど、行きがかり上そんな表現で紹介されてしまって、2人の現役ワーママと、1人の現役ワーパパのパーソナリティーと一緒におしゃべりをする、面映ゆくも楽しい1時間。これまでずっと考えてきたことを、言葉という形でマイクの前で表現することもできました。またあらためて書かせていただければと思います。

 ちょっと元気になって向かった先は、丸の内の三菱一号館美術館です。ここで17日より、「ルドンとその周辺〜夢見る世紀末」が開催されています。けれども、「黒の画家」とも呼ばれるルドンの絵をこんな日に見るのは、正直なところあまりふさわしいとは言えません。元気になった気分が再びへこみます。ただ、こんな日だからこそ、人も少なく、ゆっくりと見ることができます。

 黒の時代を過ぎて、ようやく色の時代へ入っても、「ハムレット」の中の美しいオフィーリアは、鮮やかな緑色が縁どる絵の中で死に顔ですし、一際眼立つ真紅のマントをはおって棒を振り上げるカインは、裸の弟アベルの息の根を今まさに止めようとしています。バラ色の岩は孤独ですし、春のような柔らかな色彩の中では殺されたオルフェウスが横たわっています。

 ちなみに、第一部「黒のルドン」は68点、第二部「色彩のルドン」は20点が展示されています。次に展示は「ルドンの周辺」と題して、象徴主義の画家たちの作品50点に移ります。聞きなれない名前も多い中で、ムンクやゴーギャンなどの作品も見られます。タヒチを描くゴーギャンの水彩画で、沈み込んだ気分がようやく上向きになって外に出てみれば、まあなんという美しさでしょう。建物も中庭の木々も花も、時折そこを抜けていく人もみな雨に濡れ、これもまた絵を見ているようです。煌々と照る太陽の下で人々の賑わいを見せている時とはまた別の、深々とした佇まいです。そして気づけば、時代を潜り抜けてきた本物の絵が持つオーラを浴びた心も、まるで雨にでも濡れたように潤っています。

 この美術館、もとはと言えば、イギリスの建築家の設計によって明治時代になってまもなく、丸の内の真ん中に立てられた古い建物です。なぜか落ち着く、私の好きなスポットの一つです。

「この建物は老朽化のために1968(昭和43)年に解体されましたが、40年あまりの時を経て、コンドルの原設計に則って同じ地によみがえりました。今回の復元に際しては、明治期の設計図や解体時の実測図の精査に加え、各種文献、写真、保存部材などに関する詳細な調査が実施されました。また、階段部の手すりの石材など、保存されていた部材を一部建物内部に再利用したほか、意匠や部材だけではなく、その製造方法や建築技術まで忠実に再現するなど、さまざまな実験的取り組みが行われています。19世紀末に日本の近代化を象徴した三菱一号館は、2010(平成22)年春、東京・丸の内のアイコン、三菱一号館美術館として生まれ変わりました。」   (三菱一号館美術館HPより)

 遅い昼食には、いつもミラノで飲んでいた「Moretti」ビールと、なつかしいシチリアの「Messina」、続くワインは12月に訪れたトスカーナ州モンテプルチャーノの赤。

 長い間会えなかったギリシャ時代の旧友の作品展は、日本橋高島屋で始まったばかり。丸の内から雨の中を日本橋まで歩くのも、また乙なもの。

 遅い夕食のBGMは、たまたま手に触れたエディット・ピアフ。
 フランス語はわからないけれど、
 Un refrain courait dans la rue
「街には歌が流れていた」
 一日の最後に、リフレインが心地よく響きます。

 別に特別な日ではなかったけれど、なんだかいつまでも覚えていたい、期間限定の東京暮らしの中の、寒い雨の、私の、たくさん歩いた愛しい土曜日。
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1月16日(月):出版感謝会のスペシャルランチ
1月17日(火):夫のおみやげ「シャクシュカ」のレシピ
1月19日(木):まるで暗号「アーミッシュの帆立貝コーン」
1月20日(金):予定外の超特急ディナー@フィッシュログ
1月22日(日)予定:マッカッカのビーツサラダ

posted by 池澤ショーエンバウム直美 at 09:37| Comment(2) | 日記

2012年01月20日

サモア島の消えた12月30日

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 一つだけ外で片付けなければならないことがありますけれど、時間の決まったアポではありません。要するに開いている時間に行けばいいだけの話。その後予定していることだって、何も今日絶対しなくてはいけないことでもありません。

 外を見れば、怠け気分を後押ししてくれるかのように雪が降り続いています。深く積もる気配はないものの、すでに庭の一部はうっすらと覆われています。何年も前の雪の日、通勤途中でスリップして車のフロント部分を大破して以来、雪となるとかなり臆病になってしまいます。「様子を見て、車が出せるようになるまで待ちましょう」と、自分に言い訳をしながら、午前中は、PCもなるべく触らず、ヌクヌクと暖かな部屋にこもって、好きなBFMを小さく流して、コーヒーを飲みながらの読書タイムと決めました。なんという贅沢! なんという幸せ!

 こんな時は、思い切って現実からなるべく遠い世界に遊ぶことです。仕事がらみで読み進めていた2冊の本は見えない所に置きました。
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 そして取り出したのはこの2冊です。こんなお天気の日にはとりわけ、南太平洋のあの風景の中に帰りたくなりますし、行ったこともない古代ギリシャを彷徨いたくもなります。
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 −島は夜空にただ一際黒い塊になって横たわっていた。星がひどく美しかった。聞こえるものといっては絶え間なく砕ける波の音だけだ。

 −それに多分この南海の浪漫的な島々が彼の骨身に浸み込んでしまったのだ。この南海という奴は、時々人を奇怪な魅惑の虜にしてしまう、そして一旦こいつにやられたが最後、蜘蛛の巣にかかった蠅も同然だ。

 −海は濃紺青で、それが日没には、ホーマーの描いたギリシャの海さながらに、葡萄酒の色に変わるのだ。だが礁湖(ラグーン)の中は、藍玉(アクアマリーン)、紫水晶(アメシスト)、翆玉(エメラルド)、それこそ無限の変化を示すのだ。そして落日はたちまちそれらを一面の金色の海にかえて見せた。それにまだ褐色、白、淡紅、真紅、紫、とりどりの珊瑚の色があり、更にその形状に至ってはただ驚くよりほかはない。まるで魔法の庭だ。                                      (モーム「赤毛」より)

 モームが描くサモア島の浪漫の中で、いきなりホーマーの葡萄酒色の海が出てきて、私は無限空間をあっちへこっちへと、ますますたゆたい始めます。ふと正気に返れば、現実世界の外では、花弁のような雪がまだひらひらと舞い落ちています。そして、もう少し、もう少し、外に出るのはやめましょうか、と、またページを開きます。

 ところで、これは現実世界での話。とは言え、まるでファンタジーのように不思議な話。

 ごぞんじだったでしょうか。サモア島がつい先日、日付変更線を移動させてしまったことを。これまで島の西側を通っていた変更線がなんと東側に引き直されてしまいました。この結果、これまで「日付が最も遅く変わる国」だったのが、「早く変わる国」に一転し、結局サモア島から2011年12月30日が滅失してしまいました。12月29日の翌日は31日だったわけです。

 地図読みとメニュー読みが大好きな私は、地図帳の中でもおよそ一番好きなページに引いてしまった日付変更線の赤い線を、どうやって引き直そうかと目下思案中です。
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 雪は降り止まぬものの、積もる気配はなさそうです。そろそろ本も地図帳もパタンと閉じて、重い腰をあげましょうか。

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1月19日(木):まるで暗号「アーミッシュの帆立貝コーン」
1月20日(金):予定外の超特急ディナー@フィッシュログ
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2012年01月19日

移行期のリスク

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(摩訶不思議! 確かに出かける前にアップしたはずのものがされていませんでした。 ということで、だいぶ間が抜けてしまいましたが再度おのせします。今度は大丈夫かな?)

 同じ時間を眠るのにも、リスクの度合いはまちまちです。

 イタリアから戻ってきて以来、何時になろうがどんと構えて、深夜までとことんパッチリ、「きりのいいところでそろそろ眠りましょうか。」という時間に一定数(私の場合は6です。)を足して目覚ましをかけていた生活から一転して、早寝になりました。まず12時前には寝てしまいます。共同生活の恵みにして弊害です(笑)。

 フクロウ族仲間のさつきさんからの昨日のメールは、珍しいことに日付が変わる直前の深夜。さつきさんにとってはまだ宵の口のはずです。ところが、「こんばんは。お世話になります。」で始まる深夜メールの結びの言葉は、「明日は朝から晩まで予定があるので、今夜は早く寝ようと思いま〜す! お先にお休みなさい〜★」
 
 私とくれば、その頃はすでに熟睡中。「お先にお休みなさい〜★」どころか、とっくに休んでいたのです。当然ながらメールを目にしたのは朝のこと。しかも、またしても大失敗の朝でした。冒頭に言った「リスク」というのが実はこれです。

 深夜型時代と同じように、昨夜だってきっかり6を足して目覚まし時計をかけたはずなのに、気づいてみればすでに7時。時計にはたしかに誰かが止めた跡が、、、、「4時に起きれば昼までには余裕で終わるだろう」と思う仕事があってのことですから、失われた3時間に焦ることしきりです。これこそが、フクロウ型からアーリーバード型への移行期につきもののリスクです(笑)。

 とは言え、猛烈に頑張ったら、ほとんど終わっちゃいました。やればできるもんです。こうしてブログを書く時間だってできました。そして相変わらず能天気に、「予定以上にたくさん眠れたんだから、なんてラッキー!」なんて思っています。

 こんな風に、日々、良くも悪くも時間に翻弄されている私のことなど意にも関せず、二階では、予定された時間の中で、百合が一輪ずつ開いています。「しまった、咲きそこなった」もなければ、「いけない、早まった」もなく、悠然と、着々と、、、、

 とうていかなうものではありません。
 
 いけない、急いで出かけなければ。
 今日はちょっと楽しみな対談があります。
 遅れたら大変です。予定の電車に間に合うかしら。。。

 と、また、時間に翻弄され始めた私です。
 行ってまいります!

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1月16日(月):出版感謝会のスペシャルランチ
1月17日(火):夫のおみやげ「シャクシュカ」のレシピ
1月19日(木):まるで暗号「アーミッシュの帆立貝コーン」
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2012年01月18日

「約束されていない明日」を疑いもせず。

 
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「本を読むのが好きです。」などと、私の何倍もの本読み家族の中で言うのもおこがましくて、ずっと黙っていましたけれど、実は好きです。最近ではそれが頓に高じて、鞄の中に読むものが入っていないと落ち着きません。電車に乗れば、待ってました、とばかりに、ごそごそと本や新聞を取り出します。

 それは、おそらく、これからどうあがいても、読みたかった本、読みたい本を読み切ることなどできはしないことがわかっているからでしょう。毎日東京タワーが見える所で暮らしている人が、「どうせいつでも上れるのだから」とさして気にも留めずにいたのが、急に引っ越しをすることになってちょっと慌てているようなものでしょうか。

 最近、親友のジリーが白内障の手術を受けただの、学生時代の仲間たちが「飛蚊症でね。」「僕もだよ。」などと話すの聞いていると、視力の衰えばかりはいやでも認めなければならない私は、いきおい焦ります。

 うちのロフトには、世界文学全集がずらりと並んでいますし、地下の書庫には処分できなかったたくさんの本が眠っています。私の小さな仕事部屋の本棚にだって、いつか読もうと取り寄せた本が、まだまだたくさん積まれています。限られた時間の中で、ついついすぐに役立ちそうな実用書やハウツー物に先を越されて、じっと「いつか」を待っている健気な本たちです。

 私の夢は、いつか心置きなくこれらの本を読みふけること。けれども、いつか、いつかは曲者であることも十分わかっています。だから少々焦っているのです。朝日新聞の昨日の夕刊にだって、こんな詩が載っていたではありませんか。

 たしかにいつも明日はやってくる
 でももしそれがわたしの勘違いで
 今日で全てが終わるのだとしたら
 わたしは今日
 どんなにあなたを愛しているか 伝えたい

 そして わたしたちは 忘れないようにしたい
 若い人にも 年老いた人にも
 明日は誰にも約束されていないのだということを
 愛する人を抱きしめられるのは
 今日が最後になるかもしれないことを

 明日が来るのを待っているなら
 今日でもいいはず
 もし明日が来ないとしたら
 あなたは今日を後悔するだろうから
          (「最期だとわかっていたなら」
            ノーマ・コーネット・マレック作 佐川睦訳)

 とは言いながら、今日も私は、ある方が書いた分厚い原稿の束をひっつかんで鞄に入れ、電車に飛び乗ります。3月に出版される大変面白い、そして実に役に立つハウツー本です。明日の会合までにこれを全部読まなければなりません。

 「眠ったまま待っている本たちよ、もう少し待っていて。」と、「誰にも約束されていない明日」が来ることを疑いもせず。
 
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2012年01月16日

心の中は無限大でも

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 決してきちんと整理されているわけではないけれど、心の中にだいじにしまわれた、たくさんの場面。それは写真のように静止したものだったり、動画だったり、音だったり、匂いだったり、触れた感じだったり、もちろんそれら全てが混ざり合ったものだったり。

 引出や戸棚と違って心の中は無限大。とは言ったって、あまりにギュウギュウでは、おぼろげな形になったり、変形したりして、そのうち忘れてしまうものもある。あるいは、自分でコントロールできなくなった時に、びっくり箱のように何が飛び出してくるかわからない。

 認知症だった母は、年々、記憶が心から去っていって、最後の最後に残ったことは2つになりました。それを何度も何度も繰り返しながら日々を送っていました。

 「8時15分、階段の下ね。」
 「明日、コーラスあるかしら。」

 デイケアに通うことを楽しみにしていた時の、バスがお迎えに来る時間と場所。
 歌うのが大好きだった母が通っていたコーラスの集いのこと。
 どちらも、人が好きで、友だちがたくさんいた母らしい「最後の記憶」でした。

 泉鏡花の「外科室」という短編小説があります。
 心に秘密を持つ美しい貴婦人が、意識が制御できないところでその秘密を口走ることを恐れ、がんとして麻酔を拒み、麻酔なしで胸を切り開く手術を受けるという、壮絶にして耽美的な話です。

 どちらからも思うことは、いくら無限大とは言え、やっぱり心に残すのは、できればいい思いにしたいということ。失った人を嘆き悲しむ思いを、その人との幸せな時間の記憶に変えることができたらということ。辛い思い出は、できれば長期保存、ましてや永久保存はしておきたくないということ。空いたスペースに、これから起きるはずのたくさんの、優しく、ふんわり、ほっこりするものが入って来られるように。

 あらあら、最近「ほっこりスペース」に入ってきたアッシジでの一件と、明治神宮での一件について書くつもりが、またしても前書きが長すぎました(笑)。
 明日にしましょうか。

 今日締切のちょっと面白い仕事がありますのに、「グランマぁ、みちゅけてくれてありがと。すぐ持ってきて。すぐね。かなりゃじゅね。」という小さな少年のために、あとでひとっ走りしなくてはならなくなりました。お気に入りの黄色いミニクレーン車をどこかに忘れて大捜索中だったのが、なんと、ふだんはほとんど人の出入りもない我が家のロフトで発見されたのです(笑)。これまた「ほっこりスペース」に入れなくては、、、、

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1月16日(月)予告:出版感謝会のスペシャルランチ
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2012年01月15日

あふれる優しさを〜「グランマからの手紙」感謝会

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 おはようございます! 久しぶりの5時起きです。
 起きてみたら、外はまだ真っ暗。
 本当は昨日中に済ませたかったことを、まずかたづけました。

 共同生活も初めのうちは、なかなかペースがつかめません。ついつい二人であっちに行ったり、こっちに行ったりしているうちに時間がどんどんと過ぎていきます。昨日の昼間も、大切な家族や友人たちとの嬉しい集いがありました。静かになった夕方、「さあ、落ち着いて机に向かおうか」と思った矢先に、「ナオミーっ! 電気ストーブが壊れた。」の一声で、今度は買い物に(笑)。

 帰ってくればすでに夕食時。ひとりならば「お昼ご飯をたくさん食べてお腹がいっぱいだから、夜は何にもいらない。」で済ませられても、家族がいればそういうわけにもいきません。台所で働いて、ワインを飲みながらあれこれ語り合えば、またしても時間はどんどん流れます。そして気づけば二人とも、とっぷりと疲れていました。ひとりならば「疲れているなんて気のせい、気のせい」とばかりに、カツを入れて仕事部屋に戻ることもできますが、共同生活ではなかなかそうもいきません。

 と言うのが、長くなりましたが、冒頭の5時起きの理由です(笑)。

 昨日、「グランマからの手紙」の「出版感謝会」を主催させていただきました。「記念会」ではありません、「感謝会」です。

 この本の「あとがき」にも経緯を書きましたが、この本は私ひとりの力でできあがったものではありません。プロジェクトメンバーの支えと、家族への愛がなければ、思いはどんなに深くとも、とうてい形にはならなかったものです。ですから、「私たちが発起人になりますし準備もしますから、たくさん皆様をおよびして、1月に都内のホテルで『記念会』をやりましょう!」という嬉しいお申し出をお受けするのではなく、私がお世話になった皆様をお招きして、小さな内輪の「感謝会」をやりたかったのです

 場所は、私の大好きなフレンチレストラン、成城の「アシエット」を選びました。シェフの稚田さんが、3階を貸切にしてくださいました。ここに、仕事で海外にいる長女と、やはり仕事の都合で来られなかったもうひとりのグランパを除く15人が集いました。

 「あとがき」は以前にこのブログで全文を紹介しましたので、今日は触れません。その代わりに、出版社のホームページからちょっと拝借します。

「長年の知己である池澤ショーエンバウム直美さんの『グランマからの手紙』が完成した。
営業が見本を持って 書店をまわったところ、この本はどこの売り場に置けばいいだろうと、
何人もの店員に言われたという。

旅行案内書でも、絵本でもない。料理のレシピ本でもない。単なる家庭書でもない。
書かれている内容は奥が 深いので、やはりエッセイ本かということになったようだ。
書店員の言う通り、この本にはユートピアを求める著者の思いが込められている。

『グランマからの手紙』で祖母が孫へ語っているのは、一人の人間が命の大切さを世界中の人々に訴えている言葉なのだ。この本をつくるのにあたっては、プロジェクトチームをつくって著者を支えていく形をとった。構成をどうするか助言する。各国の料理を紹介するため、実際に池澤宅で料理をつくり、写真に撮っていく。それぞれの章にあった挿し絵を描く。これらのことを6人のメンバーで行なっている。もちろん著者である池澤さんの考えを大事にしながら。(以下略)」

 昨日の「感謝会」には、もちろん「6人のメンバー」が全員揃いました。挿絵の鈴木松子さん、カメラマンの吉川弦太さん、企画の磯崎和子さんと吉川裕子さん、そして「さんこう社」社長の野島善孝さん、そしてもちろん私です。

 加えて、装丁をしてくださったデザイナーの高田素子さん、本文レイアウトをしてくださった松田志津子さん、写真に使ったたくさんのお皿やクロスをお贈りくださり、私が姉のように頼っている石川愛さん。そしてこの家族があるからこそこの本が書けた、という私の家族たち〜この手紙の宛先でもある孫息子ザウと、ザウママ、ザウパパ、キッコさんにヨシミちゃん、と、滑り込みセーフで間に合ったグランパです。

 暖かな、賑やかな、幸せな、そしておいしい時間でした。

 お花をいただきました。百合の花束には数えてみたら大きな蕾が30もついていました。蕾がひとつ、またひとつと開くように、あふれる優しさが、「グランマからの手紙」を通して広がっていくようにと、みんなで願っています。

 どうぞよろしくお願いいたします。
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1月 9日(月):オリーブの木のロマン
1月10日(火):オリーブ物語その2
1月11日(水):時には蕎麦でなくSOBAはいかが?
1月13日(金):お豆たっぷり お野菜たっぷり オリーブオイルたっぷり@地中海ダイエット
1月15日(日):メインはスープ、なら付け合せは?@地中海ダイエット
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2012年01月13日

名前を呼ぶ声という愛

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 ワシントンからのANA直行便が成田に着くのは、毎日きっかり同じ時刻。
 のはずなのに、昨日は30分も遅れ、 
 そのために、参宮橋での人身事故にひっかかって、小田急線のダイヤは予測不能。
 携帯電話を持たない人を、風が吹き抜ける駅の改札口で1時間半も待って、
 その間に、担架ごと救急車で運ばれる人も見たし、
 若い男女の痴話喧嘩にも居合わせた。
 昔の同僚らしき人たちが、「今、こんなことをやってます。」と、名刺交換をした後に、連れだって飲み会に繰り出す後姿だって見送った。

 からだが冷え切って、「そうだ、あそこのカウンターなら改札口が見えるかも」と入ったカフェのカウンター席は、たしかにガラスのすぐ向こうに、入る人も出て来る人も見えるけれど、自動扉のすぐ近くだから、開いたり閉まったりするたびに、冷たい風が入ってきて、コートを脱ぐこともできやしない。

 車を駐車場にとめてフラリと迎えに来ただけだから、本も持ってないし、ノートも手帳も持ってない。もちろんPCなんか持ってるはずもない。よしんばそれらのどれかを持っていたって、窓ガラスから目を離すわけにはいかないのだから、たぶん手持無沙汰は変わらない。

 電車が着いたらしい人群れを注意深く目で追ってはがっかりし、
 駅の事務室には見知らぬ人たちの長蛇の列。
 それならせめても写真でも撮ろうかと思ってもカメラさえない。

 やっと出てきたその人は、あんなに長い時間を待っていたのに、
まるでついさっきまで一緒だったかのように、ふわりと私の「日常」が始まった。

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 光に溢れた「日常」の朝は、二階からガガガガーとコーヒー豆を挽く音が聞こえ、「ナオミッ〜!」「ナオミ?」と私を呼ぶ声がします。一緒に食べる、同じ時間に眠る、という共同生活のルールは、気ままにやっていたのとは全く異質の時間を作ります。「まとめて片付ければいいや」と、ほったらかしの散らかし三昧にすることもできなければ、「面倒くさいからコンビニで食べ物買ってきちゃおう」と手抜きもできなければ、深夜にワイングラスを手元に置きながら、いい感じでブログを書くこともできなくなりました。

 それでも時折やってくるこんな時間は、いったいどうしてこれほどに心地良いのでしょう。

 今年になってから見始めた星占いのサイトの、魚座の週間天気予報には、こんなことが書いてあります。ピタリと核心をついてくるようです。

「肩の力がふわっと抜けて、ちょっとリラックスできる週です。とはいえ、リラックスしたところで『休憩!』となるのではなく、新しいやる気が湧いてくるのが面白いところだと思います。今までは『これもしなきゃ!』『あれもしなきゃ』と若干、追い詰められ気味だったかなと思うのですが、今週から少し時間的に余裕が出てきたところで、『さあ、あれもこれもやりたい!』というふうに、違った意欲が満ちてくるのです。

 また、今週は『愛』もテーマとなっています。
 この『愛』はまったく型にはまっていないので、もしかすると、『愛』ではなく別な呼び名がふさわしいのかもしれません。たとえば『援助』とか『きっかけ』とか『名前を呼ぶ声』とか『時間』とかそんな名前の方がぴんと来るのかもしれませんが、そこには間違いなく、愛情としか呼べないものが潜んでいて、あなたの心のどこかがそれにハープのように共鳴するのだろうと思います。」 
                   (石井ゆかりさん 魚座2012/1/9-1/15の空模様より)

 前半はまさにその通り。面倒くさくてさぼった年末大掃除の代わりに、昨日一日中、モノをどんどん捨ててかたづけまくっていたら、家の中がすっきりしてきました。一歩入るなり、「グランマぁ、すこしはおかたづけしたら?」と、お正月に小さな少年から言われた私の書斎でさえも、同じことを夫に言われたくないがために頑張って片付けたら、歩き回るスペースもできて、いとも快適になりました。調子に乗って、ディフューザーとアロマオイルを買いにひとっ走り。今ではすっかり片付いたカーペットの上に置かれた香炉から、ジャスミンの香りが部屋中に漂っています。ふと、気づけば、「もっともっとやりたい、あっちも片付けたい、こっちも片付けたい」状態(笑)。
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 後半もまさにその通り。助け合い、考えるきっかけを与え合い、名前を呼び合い、共に過ごす時間の中で、「愛情としか呼べないもの」がゆったりと流れ始めています。
 
 お正月の百合の蕾がひとつ、またひとつと開いて、満開になりました。大きな花瓶にいけた新年の枝ものも、まだしばらく持つでしょう。チューリップは昨日やってきた新しい仲間です。

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1月8日(日):ペルージャから運んできたものは?
1月9日(月):オリーブの木のロマン
1月10日(火):オリーブ物語その2
1月11日(水):時には蕎麦でなくSOBAはいかが?
1月13日(金)予告:めちゃ地中海ダイエット
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2012年01月12日

古今東西名前の付け方

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 お正月のしめ飾りも外され、三連休も終わり、だいぶ普通の日常が戻ってきました。降るらしいと脅かされていた雪もまだ降らぬまま、先ほどまで唸り声を立てて吹き荒れていた風もおさまって、静かに夜が更けていきます。

 そろそろ年賀状の行き来も終わりでしょうか。

 母は私とは大違いに几帳面なところのある人で、きちんと家計簿もつければ、きちんと日記も書く人でした。そして自分が誰に何番の葉書で年賀状を出したかをも、きちんと書き留めておく人でした。年が明けてお年玉くじの当たり番号が発表されると、「あ、○○さんにXXが当たったわ。良かった!」と、喜ぶ人でした。と、言ったっておおかたは、一番最後の切手シートでしたけれど。

 大雑把な私はそんな面倒なことはしたこともありません。けれども、返事を欠くことのないように、すでにお出しした方々のお名前は、ポストに入れる前にアイウエオ順に記録をしています。今年は12月の後半から日本にいたものですから、ちょっと頑張って、いつもよりたくさん出しました。

 リストを眺めていて思うのは、実にいろいろな名前があるということです。一昨日のブログにも書いたように、私たちの日本語というのはとても豊かな言葉です。思いっきり好きな名前を自由に子供につけられるというのも、日本人の素晴らしい文化です。生まれた子供の名前を考える時、私たちはみな詩人になります。

 それに引き替え、たとえばギリシャ人。
 人ごみで、「ヤニ!」とか、「ギオルゴ!」とか、「スピロ!」とでも叫べば、たくさんのヤニスと、ギオルゴスと、スピロスが振り返ります。これらはみな男性ですが、女性の場合だって、たくさんのイリニがいて、たくさんのマリアと、たくさんのソフィアがいます。

 生まれた子供が長男ならば、だいたいは父方の祖父の名前を付けますし、長女ならば父方の祖母の名前をつけます。次男ならば母方の祖父、次女ならば母方の祖母の名になりますから、イマジネーションあふれるロマンチックな詩人になることもないのです。そしてその結果、当然ながら一族はたくさんの同じ名前に溢れます。

 ギリシャ風ならば、私は「トシ」ですし、私の長女は「澄子」、次女は「シゲ子」です(笑)。

 アメリカにしても同じようなもので、かろうじてJRはついていますけれど、祖父や父親と全く同じ名前の息子がいたりもします。「ジョージいます?」などと電話口で言えば、「大きい方のジョージ?それとも小さい方?(Big one or small one?)」などと聞かれることもあります。それでも最近は、日本のように詩人になる親も増えてきました。本屋に行けば、「子供の名前の付け方」などという本も見つかります。

 面白半分、孫が生まれる時にアメリカから買ってきた本があります。あまりに面白いその内容については、いずれご紹介したいと思いますが、本に出てくる「2005年人気名前ベスト100」の5位までをあげてみます。ちなみに( )の中は1900年〜1909年のベスト5です。

 男の子 
 第一位:Jacob(John)
 第二位:Michael(William)
 第三位:Joshua(James)
 第四位:Matthew(George)
 第五位:Ethan(Joseph)

 女の子
 第一位:Emily(Mary)
 第二位:Emma(Helen)
 第三位:Madison(Margaret)
 第四位:Abigail(Anna)
 第五位:Olivia(Ruth)
 

 やっぱりまだ随分保守的な感じがします。まだまだ詩人にはなりきっていませんね(笑)。

 ところで、全く関係ありませんけれど、せっかく年賀状宛先リストが手元にあるのですから、しかもアイウエオ順にならんでいるのですから、ちょっと電卓を叩いて遊んでみました。私の今年の年賀状の宛先、苗字ランキングは、

 第一位:ア行  27%
 第二位:カ行  16%
 第三位:サ行  11%
 第四位:タ行  10%
      マ行  10%
 第六位:ナ行   9%
      ハ行   9%
 第八位:ヤ行   5%
 第九位:ワ行   2%
 第十位:ラ行   1%

 名前の方もやってみたら面白そう?かしら、、、、

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2012年01月11日

一緒に行こうか?〜George Harrison Living In The Material World

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 今日の映画は男も女も圧倒的に一人客ばかり。年の頃はと言えば、たぶん私と似たり寄ったりでしょう。若い人たちの華やぎはまるでなく、全席指定の、さしては広くない劇場にポツンポツンと座っています。それだけにいっそう、ある種の連帯感を感じるという不思議さ。「ああ、皆さんもあの時代を通って大人になったんですね」的な。

 それに、いくらあの時代を通ったからと言ったって、予告編に始まって、第一部、休憩、第二部の全部を合わせれば4時間もの長丁場です。よほど酔狂な御仁でなくては、そんなに長い時間、画面に魅入っていたりはしないでしょう。ここでもまた「ああ、皆さんもお好きなんですねえ。」的な静かなる連帯感。

 「George Harrison Living In The Material World」が、ロンドンでプレミア上映されたのが昨年の10月2日。その2日後にはアメリカで公開され、日本では11月19日から12月2日までの期間限定上映のはずでしたが、上映期間が延長になり、今週の金曜日、13日までとなりました。ここで戸惑っていては後悔します。

 映画は、ジョージの生涯の足跡を彼自身の言葉と、彼のたくさんの仲間たちへのインタビューによって構成するドキュメンタリーです。ストーリーらしくするための作為もなければ、説明を施すナレーションもありません。ただ淡々と、「せりふ」ではない言葉を紡いでいきます。それらの言葉を繋げるのが、耳に馴染みある50を超す挿入曲です。ポールはもちろん、エリック・クラプトンも語れば、ボブ・ディランも、ラビ・シャンカールも語ります。オノ・ヨーコさんまで、インタビューに答えています。それらの咀嚼は、我々見る側に完全に委ねられています。感情移入をするも、しないも全くの自由です。

 Sunrise doesn’t last all morning,
 A cloudburst doesn’t last all day
 Sunset doesn’t last all evening,

 夜明けは続かない
 土砂降りも続かない
 夕焼けだって続かない   〈All Things Must Pass〉

 Here comes the sun
 Here comes the sun and I say
 It' s all right

 ほら太陽が顔を出した
 ほら太陽が顔をだした 言っただろ
 もう大丈夫さ       〈Here Comes the Sun〉

 1943年に生まれたジョージは、「晩年は」などと言うにはまだ早すぎる時期に、肺癌で亡くなりました。今からおよそ10年前のことです。58歳でした。スイスの病院で最期を迎えようとしている時に、見舞った友が「娘が脳腫瘍になってボストンに飛ばなければならない。」と言うと、ジョージはもう起き上がれなくなった身体でこう言ったそうです。

「Do you want me to come with you?」
 (一緒に行こうか?)

 新年早々の4時間の贅沢でした。
 「George Harrison Living In The World」は、13日まで、12時半と17時半の一日2回、ビックカメラ上の角川シネマ有楽町で上映されます。

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